“見える化”でムダが見えてくる  新時代の業務改善「HIT.s法」

特別対談 これからの時代のリーダーのあり方 -可視化は部下を育てる- supported by 課長塾

人材を育成する「VSSマネジメント」

中竹 部下を育てるためには、目的や目指すべきところを示してあげることも重要です。

──中竹さんが提唱する「VSSマネジメント」(下図)の「V」に当たる部分ですね。

【期待のVSS】

V(ビジョン)は期待をかけられる側が目指すゴール。期待をかける側とかけられる側ですり合わせをして共有。S(シナリオ)は、期待をかけられる側が困難に陥ったときかける側がどう振る舞うのかをすり合わせておく。S(ストーリー)は、期待のゴールに至るまでの道のり。困難も想定しておく。

中竹 「VSS」は目の前にいる人をドラマの主人公にしたてあげる方法です。Vはビジョンで、ハッピーエンドのエンディング。Sはストーリーで、いいこと、悪いことを含めたエンディングに至るまでの物語。そして、ストーリーをつくり出すのに必要な細かい設定などがSのシナリオです。よくビジネスではストーリーを描くときに、右肩上がりの事業計画を立てます。しかし、僕からするとあり得ない話。ハッピーエンドだけで映画は成り立たない。途中に浮き沈みがあるから面白くなる。人間が筋肉をつけるときにだって、筋繊維の破壊と回復を繰り返します。それと同じで、企業も人も成長には良し悪しの波がある。波があるからこそストーリーが生まれるのです。

──部下を育てるべき管理職は、ビジョンを描くのが苦手そうです。

中竹 ビジョンを描く際に重要なのは、ワクワクできることです。たまに、ビジョンに達成すべき数字を設定することがありますが、それはあくまでゴール。ビジョンはゴールの先にあります。人材育成に「VSS」を活用するなら、育てたい相手とともにスタイルを理解し合った上で、ビジョン自体は本人に描かせるべきです。ビジョンを描くのは難しいように感じますが、これはトレーニングで会得できるものですので。普段、ラグビーのコーチングで僕は選手に、「このシーズンで何を成し遂げたいか」を質問します。そこで「勝ちたい」と答えたら、どう勝ちたいかを具体的に聞く。「圧倒的に勝ちたい」「50-0で勝ちたい」。では勝った後にはどんな光景が待っているか、どんな脚光を浴びているか、と質問を深掘りしていく。すると、ワクワクしてくるでしょう。会議も同じです。「今日の会議のビジョンは何か」と考えるんです。すべての局面においてビジョンを考えると、それが習慣化されます。

──ちなみに、今日の対談のビジョンは。

中竹 そうですね……石橋社長と共感し一生の友になる、飲みに行って仕事を一緒にする、とか。

石橋 いいですね。人材育成でビジョンやストーリーにさかのぼるのは、ビジネスシーンには足りない発想です。現場で人材育成がうまくいかない理由には、会社が人材の育て方をしっかりと教えていないことに加えて、部下を育成すると管理職自身の立場が危うくなると思っていることが挙げられます。だから、プレイングマネージャーと称して、部課長クラスが自分で仕事を抱え込んでしまう。

中竹 スポーツにもそういった傾向はあります。基本的にいい指導方法はライバルチームに抜かれたくないので、共有することはありません。結果として、監督クラスの人材育成が滞って、旧態依然としたコーチングばかりになる。僕は、新たに「フォロワーシップ」という方法を取ることで、成果を出すことができました。今は指導者を育てるコーチングディレクターとしてこのやり方を共有することで、ラグビーに貢献したいと考えています。十分とはいえませんが、コーチ陣には、新しい手法がかなり浸透してきたと感じています。

石橋 変化を受け入れるのは簡単ではありません。「自分は一生懸命やっている」という意識が強いと、変化に対して抵抗勢力になってしまうからです。しかし、仕事を可視化すると、主観的だった「一生懸命」が客観視されるので、ムダな作業に気がつく。そうすれば、変化、改善も受け入れられやすい。クローズドなものをオープンにできるんです。

リーダーに必要な条件

──クローズドなものをオープンにする過程では、上司と部下だけでなく、仲間同士でのコミュニケーションも重要な気がします。

中竹 おっしゃる通りです。監督と選手の双方向コミュニケーションでは限界があると思っています。そこで重要になるのは、選手同士がコミュニケーションを取る多方向コミュニケーション。監督がやるべきことは、選手たちで互いに意見が出し合える環境づくりや、萎縮せずに何度でも発言ができるような機会を作ってあげること、そしてそのために徹底的に準備を行うことです。

石橋 対話は物事を可視化するひとつの方法です。スポーツはプレーが目に見えるから、必然的に対話も生まれやすいでしょう。しかし、属人的になりがちなホワイトカラーの仕事は端から業務内容が見えない。見えないから対話も生まれない。だからこそ、HIT.s法のような可視化システムが必要になるのです。

──HIT.s法の可視化を使えば、ムダな業務を洗い出すことができます。石橋社長は常々、仕事の6割は誰でもできる単純作業だとおっしゃっていますね。

石橋 そうです。残りの4割が、戦略を練ったり判断を下したりする重要な業務なんですね。管理職は6割の仕事を上手に配分しながら、重要な業務に着手するべきです。それには自分が仕事を抱えていてはダメ。これが、マネジメントの本質です。

──しっかりとした判断を下せるのは、いいリーダーの条件ですね。中竹さんが考えるいいリーダーとはどのような人でしょうか。

中竹 よく「組織はリーダーによって変わる」と言いますが、僕は「リーダーが変われば組織は変わる」と思っています。日本のリーダーは、できない部分を部下に見せない。しかし、本当はできない部分を部下にさらけ出しながら、できるようになる過程を見せるべきだと思うんです。部下にフォローしてもらってもいい。上司が学ぶ姿を見れば、部下も学び成長するはず。そうやって、部下がどれだけ成長するかが、いい上司の基準になるのではないでしょうか。

石橋 私も部下を育てるには、まず自分が学ぶことだと考えます。教えることは学ぶこと。学ぶことは教えられること。日本の課長クラスの管理職はみな優秀です。しかし、現場でプレイングマネージャーになってしまっており、その優秀さが発揮されず、部下の育成もできていません。部下を育てながら、うまく仕事を配分して、管理職がやるべき仕事をやる。そうすることで、本来の意味での管理職を生み出さなければいけません。

──最後に、今日の対談の感想を聞かせていただけますか。

中竹 HIT.s法の可視化にとても興味がわきました。最近のラグビーでは、選手の走行距離やタックル数などの情報を全部把握しています。この情報をHIT.s法に当てはめて可視化すれば、練習の組み立てやポジションごとの役割分担などに応用でき、チーム作りに使えそうな気がします。

石橋 HIT.s法はさまざまなケース、職場に対応できるので、効率的なトレーニングソフトの開発も可能ですよ。私は、中竹さんの「リーダー自らが学ぶ」という人材育成が参考になりました。ビジネスでは、その逆のことが起きていて、学ぶ姿を部下に見せません。本来、強いチームには、自分が学ぶ姿を見せるリーダーがいて、部下の話からも知識を吸収しています。そうすることで、初めてチーム全体に対して目配りができ、それぞれのスタイルを見極めることができる。今、日本の管理職に足りないのは目配りなのではないでしょうか。

──中竹さんは、多方向のコミュニケーションで部下との関係を密にして目配りを行う。一方、石橋さんはHIT.s法による可視化で部下の業務内容や業務量を把握して目配りを行う。いずれも、しっかりと部下に目配りができ、それぞれのスタイルを把握することで、人材育成につながるような気がします。処方は違えども、考え方には共通する部分があるのですね。今日は、お忙しい中、ありがとうございました。

HIT.s法は「カウンセル活動」

一般的な指導方法:ヒアリング。市販ツールを使って、聞き取り調査により業務改善確認を行い、改善を示唆。改善業務(マニュアルは手作業で作成)。定着方法なし。
					HIT.s法:カウンセル。HIT.s法のツールを使って、マンツーマンで指導をこおない、各人が業務の確認・改善を実施。業務改善だけでなく、マニュアル化・人事育成・内部統制など幅広く活用。自分で改善を探しだす力が育つため、継続的に活動可能。

一般的に「コンサル」とは、ヒアリング方式で行う業務改善。一方システム科学のHIT.s法は、マンツーマンで実践、確認・修正の推進サイクルを展開する「カウンセル」。活動終了後も改善を見つけ出す能力が身につくため、継続的に業務改善していく力をつけることができる。

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協力

株式会社 システム科学
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