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スイス取材で見えてきた ビジネスウォッチ選びの傾向と対策

バーゼルワールド2016の会場。
今年も世界中から多くの時計関係者が集まった。今、高級時計市場は波乱含みだ。
欧米や中国、中東などで売れ行きが落ち込む一方、成熟市場の日本に注目が集まっている。
それもあってか、2016年の新作はミドルレンジの価格帯のラインナップが充実、
質も向上している。今年、買うべき一本が見つかるはずだ。

ビジネスウォッチの最新トレンド

腕時計業界で進む「価格破壊」

リシュモングループを中心にした高級時計の見本市S.I.H.H.と、10万人以上の来場者数を誇る
バーゼルワールドが今年も開催された。そこで浮かび上がった2016年の時計の傾向について、
時計ジャーナリストの広田雅将氏と篠田哲生氏に語り合ってもらった。キーワードは「価格破壊」だ。

Photo: Toshiaki Miyamoto Text: Akiko Inamo

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―― 時計ジャーナリストの広田雅将氏と篠田哲生氏に、1月にスイスで開催されたS.I.H.H.と3月のバーゼルワールドを総括していただきながら、今年の腕時計の傾向をうかがいます。目玉となるトピックスは何でしたか?
篠田 タグ・ホイヤーが発表した、複雑機構の代名詞、トゥールビヨンの新作が大きな注目を集めていましたね。トゥールビヨンは、これまで最も安いものでも800万円くらいでしたが、それが200万円を切ったわけですから、驚きです。
広田 今は工作機械が進歩し、昔のように手作業でなくてもかなり質のいいものが安く作れるようになった。それが価格に反映され始めたと考えられます。それはケースとか文字盤についても言えると思う。ここ数年、ハイエンドの高級時計では外装、つまり文字盤やケースの質感を高めることで差別化を図る動きがありましたが、ここへきてそれが急速な勢いでミドルレンジまで落ちてきたと感じますね。それを象徴しているのが、タグ・ホイヤーのトゥールビヨンだと思います。
篠田 僕も同感。今年の新作は、質感はいいのに価格は少し抑えられたものが充実していましたよね。今まで価格改定で同じモデルがどんどん切り上がっていくのが当たり前だったのに、それがついに下がるようになった。
広田 その背景には、市場の変化があると思います。これまで爆発的に売れていた、グレーター・チャイナ(中国、香港、台湾など中華圏)での販売数が急激に失速している。

篠田 香港なんて、前年比で30%以上も落ちていますよね。シンガポールも同じような状況と聞きました。
広田 そこで次の一手として出てきたのが、成熟市場を深掘りするという動きです。成熟市場では顧客の目が肥えていますから、そこでも買ってもらえる質を保った手ごろな価格帯の時計の開発に、各メーカーが真面目に取り組むようになった。
篠田 時計のような嗜好品は、景気変動の影響を受けやすい。資源国の中東諸国、ロシア、アメリカでの販売数も軒並み下がっています。つまり、資源バブルが終焉を迎えたということ。数千万円以上の超高額時計を購入していたのは、こうした国々の富裕層でしたが、そこが落ち込んだというわけです。その意味でも、中間層に訴求するような時計が増えてくる素地が整っている。
広田 だからこそ、成熟市場の代表格である日本の重要度が高まっていると思います。大きく伸びはしないけど、底割れすることはなく、堅調。昨年、ゼニスが一番売れたのも日本ですから。
篠田 銀座のブティックでよく売れたそうですね。しかも、必ずしもインバウンド需要というわけではない。
広田 こうした世界の市場の状況と相対的な日本市場の地位の上昇で、日本人が買いやすい中間価格帯のモデルがたくさん生まれているのだと思います。今こそ時計の「買い時」といえるでしょうね。

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