時計専業以外のブランドが台頭

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―― 昨年はApple Watchが発売され、タグ・ホイヤー、フレデリック・コンスタントがスマートウォッチ分野に参入しました。この分野における今の情勢はどうですか?
広田 昨年は予想以上に売れず、今のところメーカーもアメリカ、日本、韓国に局地化しています。ただ、今年もいくつかの欧州ブランドが新作を発表しました。例えば、ブライトリングの「コネクテッド・クロノグラフ」。
篠田 あれはブライトリングらしい、プロツールとしての提案ですよね。スマートフォンと連動させることで、時計の機能や操作性を高めることに焦点を合わせている。あと、サムスンのGear S2という機械を内蔵したドゥ グリソゴノの新作。グリソゴノでは一番安くて、186万円です。もちろんスマートウォッチとしては高いけれど、ブランドのラインナップでは低価格帯に入る時点で、「遊びですよ」という主張が見えます。スマートウォッチの登場に対して、「俺たちならこうするぜ」という欧州勢の意思をすごく感じますね。
広田 普通の時計がスマートウォッチと何が違うかといえば、結局、物理的な針と文字盤があるということ。時計の強みは、本来そこなんです。すると必然的に、時計メーカーは文字盤と針にお金をかけ、質感を上げるようになる。今後はさらにその傾向が強まるだろうと思います。
―― ここ数年、時計専業以外のブランドが発表する時計のクオリティが、顕著に高まっていると感じます。

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サムスン Gear S2
by ドゥ グリソゴノ

サムスンのバッテリーを内蔵し、外装をドゥ グリソゴノが手掛けたスマートウォッチ。サムスン Gear S2 バッテリー、18PYG・SSケース、径41㎜、186万8400円

篠田 例えば今回、シャネルが初のメンズウォッチとして発表した「ムッシュー ドゥ シャネル」は、シースルーバックで歯車の輪列を見せることを前提に設計された自社製ムーブメント。しかも複雑機構の一つ、レトログラードを搭載しています。数字のフォントも個性的。そこまで開発するところは、さすがシャネル。これは、エルメス然り、ルイ・ヴィトン然りです。
広田 ブルガリやティファニーも、時計で成功していますよね。あと新しいCEOとクリエイティブ・ディレクターが就任したグッチも、価格帯を上げることに成功したら、今後面白くなると僕は思っています。特に人工石を文字盤に用いたレディース「ル マルシェ デ メルヴェイユ」の新作には、変化の兆しを感じました。
篠田 確かにあのモデルはよかったな。
広田 一昔前まで、時計においては自社製ムーブメントに重きが置かれる空気だったから、時計専業メーカーが強かった。そこで時計専業以外のブランドも、それぞれ懸命に自社製ムーブメントを開発しました。でも今は、機械よりもむしろ全体のパッケージングが重視される時代。
篠田 そうなるとライフスタイルをトータルで扱い、独自の世界観を見せられる時計専業以外のブランドのほうに強みがありますよね。しかも、その強みを極めようと思ったときに、自社製ムーブメントを持っていることは大きい。あと少しだけ針を下に付けたい、とデザイナーが言ったとしても、機械の制約を受けることなく、美意識を貫けるので。
広田 今では自社製ムーブメントの開発を全面に押し出すのではなく、何かを表現するために、ムーブメントまで自分たちで作るようになった、という見え方になっていると思います。

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