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デザイン思考の先にあるもの

田中一雄

GKデザイン機構代表取締役社長/JIDA理事長

vol.2

DESIGN THINKING

企業経営のための
デザイン

デザイン思考による“気づき”
が新しい製品を生み出す源泉

 今年、私は社外のグラフィックデザイナーとプランナーという3社のチームで、北陸にある機械加工メーカーのデザイン導入の案件を担当しました。機械の性能は世界トップクラスなのですが、顧客からは「性能のよさと価格の安さ」だけを求められてきたため、デザインについて考えるという発想がありませんでした。「デザインなんて、見てくれだけの人が何をしてくれるの?」という状態なんですね。しかし、私たちの目線で現場を見ると、機械の作業性、動線、安全面など、さまざまな点で改善の余地がありました。たとえば「汚れにくく設備の維持しやすい構造」にすることも、当然デザインです。最初は冷ややかだった経営陣も、それまで当たり前に受け入れていたことに、じつは作業性が落ちていたり、安全性が欠けていたりすることに気づくと、「そんなことまで考えてくれるデザインならば受け入れます」と、態度を大きく変えてくれました。

 デザインとは仮説提示力と問題解決力であり、その前提となるのが観察力なのです。一般の人が気づかないことに気づくことが、私たちのような“生活者のプロ”の使命でもあるわけですが、まさにデザイン思考はこうした“気づき”を生むための仕組みですから、これを活用しない手はありません。

 最近はB to Bの企業がブランディングと競争力獲得のために、デザインを導入する事例がずいぶん増えてきました。優れたデザインは性能の証しであり、企業の信頼を生むということに、従来はデザインが入っていなかったB to B企業も、遅ればせながら気づいたわけです。もちろん、それは単に見た目だけの問題ではありません。そこに問題解決の仕組みやイノベーションにつながる技術が入っていることで、その組み合わせのなかから新しい製品が生まれ、それが社員の自信や誇りとなり、さらに高い品質を生み出す原動力にもなっていくわけです。

 これまで日本企業は、生産や販売という下流領域で強さを発揮してきました。しかし、このあたりで一度上流領域まで戻って、デザイン思考の手法を活用して「新しい発見」をし、イノベーションを誘発していくことが大切なのではないでしょうか。

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デザインが「見てくれ」だけではないのは西新宿の「サインリング」も同じ。信号、照明、サイン、車両感知などさまざまな機能をひとつの象徴的な真円に内蔵させたことで、交差点としての景観とともに、格子状の街路構造による現在地のわかりにくさを解消する機能を持つ。

単なる新しい「機械」では
未来を描くことはできない

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たとえばプラントを24時間365日支え続ける YOKOGAWAの総合生産制御システムCENTUM。
大規模基幹製品の将来的課題を見据えたその設計は、 システムデザイン開発の新たな「ありかた・ありよう」を提示した、と評価され機械工業デザイン賞/経済産業大臣賞を受賞した。

YOKOGAWAがデザインに未来への想いを込めたのは、 ユーザーのため。そして持続可能な未来の実現のため。
その根底にある意志、それが “Co-innovating tomorrow”。