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イノベーションが生まれる場

紺野登

多摩大学大学院・教授/
KIRO(知識イノベーション研究所)株式会社代表

vol.5

INNOVATION

イノベーション経営
という考え方

論理的なロジックを超えた
ビッグピクチャーを描く力

 最近いろいろなシンポジウムなどで、「デザインレッド・マネジメント」とか「デザインレッド・イノベーション」という言葉がよく出てくるようになりました。「デザインレッド(design led)」とはデザインが主導する経営やイノベーションという意味であり、これを実践した企業モデルこそ、私が2008年に出版した『知識デザイン企業』で描いた“アートカンパニー”です。アートカンパニーとは、知識社会において「知識のデザイン」ができる企業のこと。現在シリコンバレーのベンチャー企業の経営者の多くがデザイナーかアーティストということからも、企業がいかにデザインに注目しているかがわかります。シリコンバレーの多くの企業がデザイン会社を買い、その余波が大企業にも及んでいるため、いまアメリカではデザイナーが売り切れ状態です。

 では、なぜこれほどデザインが大事だと考えられているのか。それは、論理分析的あるいは戦略分析的な手法によるロジックでビジネスに対応することが複雑な環境下では役に立たなくなってきてしまったからです。ビジネスの世界にデザインやアートが入り込んでいるというのは大きなトレンドであり、もはや逆戻りすることはないでしょう。複雑性を増している社会では、たくさん仮説をつくれる企業、たくさんのアイデアを持つ企業が強いのは明らかであり、デザインやアートでいちばん大切な「ビッグピクチャー」を描ける力は、論理分析からは出てきません。0から1、0から100といった“ないものから何かをつくる”ためには、イマジネーションの力も含めてデザインの能力がとても重要になっているのです。

 近年、「デザイン思考」のワークショップに呼ばれることが多いのですが、デザイン思考という手法のプロセスを追っていけば、なんとなくイノベーションが起きるという誤解があります。しかし、組織自体がデザイン思考の実践を支えていけるような態勢になっていなければ、イノベーションは起きません。この態勢は「クリエイティブ・ルーティン」といわれ、勤務時間内で分析的な仕事をするのではなく、日常のなかにデザイン思考的な態度や行動が埋め込まれていて、現場レベルでつねに創造革新を起こすことを考えられる場がつくられている必要があります。企業にそういうカルチャーがあれば、たとえデザイナーがいなくてもイノベーションは起こせるし、カルチャーがなければデザイン部門があってもイノベーションは起こせないということです。

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撮影協力:日建設計NAD(オフィス)

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デザイン思考の本質は知識創造プロセスである。バイアスを捨てて直観的に対象から知識を得るための「観察・洞察」、対話やブレインストーミングなどを通してアイデアに変える「アイディエーション」、そこから得られたアイデアやコンセプトを素早くカタチにする「プロトタイピング」、実際の現場に取り入れるときに核となる「ストーリーテリング」。デザイン思考はこれら4つのプロセスのサイクルによって行われる。

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従来型のイノベーションは、本業のコア事業とは別に発生した新規事業のことを示すことが多かった。一方、イノベーション経営は既存事業もイノベーションの対象。「クリエイティブ・ルーティン」の態勢然り、全社的な体質改善に向けた取り組みが必要となる。

“ともに”が起こす
イノベーション

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不確実性を前提とした経営が求められる現代、 イノベーションの共創こそが最適な明日をひらく。

これまでにない技術や知の組み合わせによって ユーザーとともに課題解決の手段を考えること。
そして、ユーザー自身も気づかなかった課題を ともに発掘し、顕在化させ、変化の先を見通すこと。

新たな価値を創造するため、 “ユーザーとともに”イノベーションを起こしていく。
それがYOKOGAWAの“Co-innovating tomorrow”