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イノベーションが生まれる場

vol.6

INNOVATION

コラボレーション
の重要性

紺野登

多摩大学大学院・教授/
KIRO(知識イノベーション研究所)株式会社代表

知識・技術・アイデアを
コラボレーションする

 伝統的な企業モデルというのはクローズドなものです。この背景には社員が技術を持ち出さないようにする、社内で全工程を総括することで効率性を高めるといった理由があったわけですが、企業のイノベーションがますますオープンで参画型になっている状況下では、こうした企業モデルは壊れつつある。その典型的な例が、R&D(研究開発)でしょう。

 R&Dは基本的にクローズドな企業内でのファンクションですから、そこをオープンにして外部から新しい知識や知恵をもらってしまうと、R&Dの存在意義がなくなってしまうかもしれません。しかし、イノベーションはR&D部門だけで起こすわけではないし、単独企業の機能だけで起こせるものでもありません。イノベーションのためにはどんな知識や技術やアイデアが必要で、それらをどうコラボレーションさせられるかがポイントとなるのです。結果として、このコラボレーションのやり方をうまくプロジェクトマネジメントできたところが、イノベーションを起こせるわけですが、そのためにも目的を共有することがますます重要になってきます。

 日本でもオープン・イノベーションがブーム化していますが、かつてのオープン・イノベーションは弱い部分を補完する、自社のビジネスモデルでは使えないものをどこかに渡すといった1対1の話が多かった。ところが、近年の「オープン・イノベーション2.0」では、社会課題解決のために政府、自治体、コミュニティ、市民、企業、大学、研究機関などが境界線(バウンダリー)を超えてコラボレーションし、新たな関係性をつくっていくための“場”を持つことで、新しいビジネスモデルをつくっていくのが基本になっています。そのためにも共通の目的を設定する必要があります。実際にこれまで成功したビッグプロジェクトを見ても目的のマネジメントが上手に行われていて、失敗するプロジェクトは目的がはっきりしていないことが多いのです。

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従来、R&Dとはクローズドな関係のなかで供給側(サプライ・サイド)目線からイノベーションを生み出すためのもの。対して、D&Rとは、社会貢献をベースとした需要側(ディマンド・サイド)目線でイノベーションを生み出すアプローチを示す。

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企業間における1対1の関係で弱点を相互に補完し合うオープン・イノベーションに対して、オープン・イノベーション2.0では、政府・自治体/大学/市民・ユーザーなどが一丸となったエコシステムの創出である。新しいビジネスモデルを生み出すために、社会課題を社会起点で考え解決するため、無限のリソースから目的を設けることが重要となる。

大企業でイノベーションは
起こらならないのか

「長年続いてきた大企業からはイノベーションが起こらない」という定説がありますが、確かにイノベーションを起こせない大企業も少なからずあるのは事実です。しかし、大企業といえどもイノベーションを起こさなければ持続できず、いまやイノベーションは“起こさざるをえないもの”になっています。これからの大企業は本業だけでなく、日々の経営の中核として新しい知識創造の取り組みを行っていかなければ、経営を持続できません。ただ、だからといって社長が一方的にイノベーションを起こせと指示したところで、既存のコーポレートシステムのままでは状況は何も変わりません。その点、スタートアップ企業の人たちは死にもの狂いでイノベーションを起こそうとしているわけです。

 また、いまだに一部では、日本企業にはイノベーションよりも「カイゼン(改善)」が向いているという声もあります。確かにカイゼンも一種のイノベーションですが、イノベーションというのは試行錯誤して新しいものを創造することですから、目的をはっきりさせる、場をつくる、次世代を担うリーダーを据えるといった社内整備が必要です。それを私たちは組織内の「エコシステム」と呼んでいます。つまり、大企業もイノベーションを起こすためには多大なる努力が必要であり、仕組みをきちんとした実装を、トップダウンでやらなければなりません。

 私が代表理事を務めるJIN(Japan Innovation Network)では、大企業・中堅企業のイノベーションを支援するアクセラレーター(加速支援者)として、企業変革は「2階建て経営」を目指すべきだと説いてきました。これはつまり、本業というこれまで維持してきた固い基盤の1階は壊さずに、将来新たなキャッシュを生み出す2階を上乗せするということです。本業のリソースを次のステップに使わなければ、大企業がイノベーションをする意味はありません。

 まずはイノベーションを起こし続ける企業を100社生み出すことを目指して活動を続けています。最終的な目的は日本をイノベーションが起こり続ける「イノベーション国家」に変革すること。みなさんの活動にもぜひ期待したいですね。

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撮影協力:日建設計NAD(オフィス)

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フューチャーセンターやイノベーションセンターの開設、リヴィング・ラボの実践を通じたオープン・イノベーションの活発化は、北欧から始まりヨーロッパでひろがっている。その背景には、EUなど地域を超えた協業によってヨーロッパの平和を保とうとしてきたという歴史がある(一般社団法人Future Center Alliance Japan資料より)。

YOKOGAWAがはじめる
共創の戦略

計測・制御・情報の高い技術に基づくソリューションで、
あらゆる分野に携わってきたYOKOGAWAだからできること。
それは、培ってきたユーザーとの関係にフォーカスすることで、
企業間の壁を越えたサプライチェーンの
情報やモノの流れを効率化・最適化する、新たな価値の創造。

その目的は、世界人口の増加にともない
人々の暮らしに不可欠な水や食料、エネルギーの需要に対して
安定的で、安全な供給を行うという、国際社会全体の課題解決だ。

未来の世代のために、YOKOGAWAができること。
“Co-innovating tomorrow”それがYOKOGAWAの共創の戦略。

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