APPサステナビリティフォーラム 自然林の伐採ゼロを含む「森林保護方針(FCP)」発表から5年 ~APPの歩み | 日本人が知らないインドネシアの魅力

エリム・スリタバ氏インタビュー2

泉:自然林の伐採ゼロを決定された経緯を教えてください。

スリタバ:私たちが自然林伐採ゼロを実施する決定は、環境に対する懸念からだけではなく、当社の事業の持続可能性を確保するためです。現在のデジタル時代の中で、お客様やステークホルダーの方々は環境や気候変動問題に対する関心がより一層高まっていますので、私たちの紙製品は森林破壊に関わっていないということを確信させたかったのです。また、私たちの原料は植林木なので、工場で使用される原料が持続可能に供給されるように、周辺の環境を考慮しながら植林地を管理することが重要であると理解しています。

泉:FCPの進捗状況は?

スリタバ:順調に進展しています。自然林の保護については、自然林の伐採ゼロが続けられています。私たちはまた周辺地域の保護、保全の支援に取り組んでおり、これはベランターラ基金が活動を行っています。

インドネシアには泥炭地が多いのですが、現状を正しく理解するために、最新のLiDAR(レーダー画像)技術を駆使して当社が操業している地域の泥炭地マップや地形、分布のデータをまとめています。この地図をもとに、泥炭地での火災を防ぐために、泥炭地と当社の植林地との境界に5,000以上のダムを建設しています。

地域社会とのつながりも重要です。これまでは土地に絡んだ紛争が起きがちでしたが、私たちは紛争解決に注力してきており、紛争の約43%は解決に向かっています。APPは総合森林農業システム(IFFS)と呼ばれるアグロフォレストリー計画を立ち上げ、サプライチェーン周辺の村落で社会活動を展開しています。このプログラムにAPPは2020年までに1,000万ドルを投入しますが、今年の10月時点で、146の村落で同プログラムが実行されています。

泉:APPは、インドネシアと中国に140万ヘクタール、東京都の面積の約6倍という広大な植林地を所有しています。これだけの植林地を持つとコストが跳ね上がるのではと推察しますが、同時に競争力のある価格をどう維持しているのですか。

スリタバ:北欧や北米などでは、木が育つのに60年以上かかると言われています。一方、インドネシアのアカシアとユーカリは6年以内に育ちます。6年ごとのローテーションで“効率がよく”木が育つこともあり、コスト競争力を維持できるのです。植林地を6つのローテーションに分け、一つのローテーションでAPPのパルプ工場で使用する原料をすべて賄えています。

泉:APPの森林保護の取り組みについて、ユーザー企業からの反応はいかがですか。

スリタバ:お客様から良い評価をいただいています。FCPを発表する以前は、APPの木材調達について懸念をお持ちのお客様も一部ですがいらっしゃいました。FCPを発表してからは、当社の取り組みを評価いただき多くのお客様は再び取引を開始されています。

泉:環境への取り組みは、APP全体にとっても重要ということですね。今後の取り組みを教えてください。

スリタバ:ジャカルタ本社の環境チームには60名の人員が配置されており、各システムの強化・改善に取り組んでいます。まもなく2020年も近づいてきていますが、私たちは2030年に向けたロードマップの検討も開始しています。2018年には、新たなロードマップを発表したいと思っています。これには、SDGs(持続可能な開発目標)に関わるような案件を多く取り入れていくことになるでしょう。

泉:最後に、読者へのメッセージをお願いします。

スリタバ:APPが今後も成長していくために、森林・環境保全の活動は継続していきます。日本のステークホルダーの皆様に当社の取り組みをご理解いただきたく、改善すべき点があれば是非フィードバックをいただきたいです。その声を基に、APPの活動をさらに改善・展開させていきたいと思います。

5年間のAPPの取り組みは本物

APPサステナビリティフォーラムに来賓として列席した、東京大学名誉教授 山本良一氏に話を聞いた。山本氏は、エコプロダクツや環境経営分野の第一人者でもある。

東京大学
名誉教授
山本良一 氏

山本:最後の質疑応答で、APP が一度は認証を取り消されたFSCとの再提携の進捗状況について、スリタバ氏が答える場面がありました。その何も隠さない率直な回答に、感心しました。この回答と今日の報告を聞いて、APPのこの5年間の努力、サステナブル企業に変身しようとする努力は、本物であったと痛感しました。特に自然林伐採ゼロへの取り組みは英断で、世界的にも大きなインパクトがあったと思います。

熱帯林を伐採した製品をこれまで大量に輸入してきた日本が、今になって途上国に厳しい条件を突きつけるのは、フェアとは言えません。インドネシアに限らず、真摯に努力する途上国の企業の製品を購入することで、途上国の発展を後押しすることができるし、そうすべきと思います。その意味で、日本でフェアトレードを取り入れている自治体は極めて少ない。こうした状況でSDGsにどう取り組むのか、日本社会全体で考えるべき時にきていると思います。

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