インドネシアという国が抱える森林問題 | 日本人が知らないインドネシアの魅力

インドネシアと聞くと何を思い浮かべるだろうか?まずはアジアの楽園、バリ島。昨年の日本人訪問数は23万人を超え、年々増加している。経済であれば、成長著しい東南アジアの中でもインフラ開発が盛んな国。そして森林が国土の60%を占める豊かな国というところだろうか。

インドネシアを端的に表すと、赤道直下の熱帯気候で、1万4500もの島からなる群島国家。人口は約2億6000万人で世界第4位となる。さらに日本の平均年齢46.2歳(2016)に対し、27.8歳と生産年齢が非常に多く、今後の経済成長が最も期待されるASEAN(東南アジア諸国連合)を代表する国である。

また、インドネシアには世界三大熱帯雨林に数えられる、多様性に富んだ広大な森林がある。しかし、20世紀、世界の急速な発展の中で膨大な森林を伐採によって失ってきた歴史がある。

また、大規模な山火事による煙害を幾度も引き起こし、近隣諸国を合わせると数百億米ドルの経済的損失があったといわれている。

「ストップ自然林伐採」を掲げた製紙会社

世界最大の生産能力を誇る製紙会社、アジア・パルプ・アンド・ペーパー・グループ(以下APP)は、製紙会社という特性上、これまで紙の材料となる木材を利用してきた。その多くは日本を含む諸外国の需要に応え、世界中に運ばれて行った。しかし、20世紀後半、世界中で地球温暖化が叫ばれるようになると、森林減少の矛先はこうした現地企業に向けられるようになった。

2014年 FCP一周年記念イベントにてNGOのパネリストと討議を行う

APPは試行錯誤の末、2013年に自然林伐採ゼロを含む「森林保護方針(FCP)」を発表した。製紙加工に使用される木材の100%を植林木で賄う生産基盤を確立したのだ。

インドネシアの森林は大部分が国有林であり、各企業は国家や州政府から森林の使用権を得る。これをコンセッションと呼ぶが、厳密な森林保護を行う際、他のコンセッションとの協働や地域住民の協力が必須だ。

そこで、APPはこれまで自社を糾弾してきた環境NGOを含む、林産業に関わる多くのステークホルダーに協力を要請することになる。2014年、FCP1周年を記念するイベントにおいて、さまざまなステークホルダーから協力を約束されている。

2014年、APPはインドネシアにおける景観レベルでの森林保護および再生を掲げた。なぜならAPPは政府、NGOや地域コミュニティを含む様々なステークホルダーとの協働が必要であると考えていたからである。

「インドネシアの中で、合計10の地域を高い保護価値のあるエリアとして最重要地域に定めています。」(APP サステナビリティ&ステークホルダー・エンゲージメント担当役員 エリム・スリタバ 氏)。さらに、「景観レベルの森林保護プログラムの管理および資金提供を支援するプラットフォームとして『ベランターラ基金』を設立しました。この『ベランターラ基金』が主要ステークホルダーや地域コミュニティと連携し、環境保全取り組みを行っています。APPはこのプログラムに年間1000万ドルを投資しています」と述べている。

APP サステナビリティ&ステークホルダー・エンゲージメント
担当役員
エリム・スリタバ 氏

APPは、森林を保護することだけではなく、火災が起きることを防ぐためにも、地域コミュニティの役割が重要であると理解している。ゆえに2015年、パリで開催されたCOP21にてIFFS(総合森林農業システム)の推進を発表した。これは、焼き畑による森林火災の防止を目指したもので、貧困により焼き畑を行う地域コミュニティに対し、代替的な生計手段の開発と経済発展の支援を目的にしている。またこのプログラムは、違法な森林伐採、違法な侵略、土地紛争および森林火災を軽減する一助になると期待されている。

IFFS は2020年までにAPPのコンセッション周辺の500の村で実施される予定であり、現在は96の村で実施している。APPステークホルダー・エンゲージメント担当部長 ネグラサリ・マルティニ 氏によると、代替的な生計手段はその地域のスキルと能力そして市況によって評価されている。さらに、村のまとめ役が各地域をサポートするために配置され、村人のスキルを向上するためにトレーニングを行っているという。

APPステークホルダー・エンゲージメント
担当部長
ネグラサリ・マルティニ 氏

代替的な生計手段には、園芸・家禽・農業・稲作業・漁業および果樹園業が含まれる。「リアウ州の農民の1人が果物と野菜を栽培するためにIFFSのプログラムを利用することを決めました。彼は、今日では0.5ヘクタールの野菜畑から収穫した野菜で、月に1500万ルピー(約1,150ドル)の収入を得ており、彼の畑で同じ地域の村民を4~9人雇用することが可能となりました」とマルティニ 氏はいう。

IFFS(総合森林農業システム)にてアグロフォレストリーの訓練を受ける地域住民

こうしたAPPの自然保護活動は、世界中で評価されている。日本からも、「植林の神」と称される植物生態学の世界的権威、横浜大学の宮脇名誉教授が2014年にAPPの植林地を訪れ、スマトラ島の自生樹であるフタバガキ1万本を継続的に植樹することを提案した。

APPはこの提案を受け入れ、2015年に「第1回1万本植樹」を実施。継続して今年、第3回となる1万本植樹が開催された。植樹が行われたのは、APPが管理するコンセッション内のリアウ州クルムタン。国際熱帯木材機関(ITTO)、一般社団法人 日本環境ビジネス推進機構(JAEB)の他、日本から16名の植樹ボランティアが参加した。

2013年スマトラ島を訪れた宮脇名誉教授

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