TOP INTERVIEW 20周年を迎えたAPPジャパン | 日本人が知らないインドネシアの魅力

コピー用紙で大きなシェアを占めるアジア最大級の製紙会社、APP(アジア・パルプ・アンド・ペーパー)グループ。自然林を伐採せず、植林で得た木材で紙生産を行って自然環境保全にも挑戦するなど、資源循環型経営の手腕にも注目が集まっている。その日本法人であるAPPジャパンの日暮格(ひぐらし かく)社長に、これまでの活動や経営方針、今後のビジョンについて聞いた(聞き手は日経ビジネス 企画編集センター長の泉恵理子)。

コピー用紙で高シェアを獲得
新たなニーズの掘り起こしも

泉:コピー用紙で高いシェアを占めるなど、APPジャパンの日本での存在感が増しています。

日暮:おかげさまで今、日本で使われているコピー用紙の4~5枚に1枚は当社の製品となっています。シェアでいえば20~25%というところです。1997年に日本に進出してから20年を経て、確かな地歩を築いてきたと自負しています。

泉:外資系企業であるAPPジャパンが日本市場でプレゼンスを獲得するには、大変なご苦労があったと思います。成功の要因は何だったのでしょうか。

日暮:最初の10年がカギだったと思います。当社の生産拠点の中国やインドネシアは当時、世界的に見て労働力が比較的安価で、価格競争力でアドバンテージがありました。

とはいえ、ただ安ければいいというものではありません。日本市場では、紙製品に要求される品質水準はとても高く、多様です。そうしたニーズを生産現場にフィードバックし、工場で切磋琢磨して製品をブラッシュアップしていきました。製造業ではごく当たり前のことですが、こうした基本的な取り組みを積み上げた結果が、今日のAPPジャパンを形作っていると思います。

泉:APPジャパンのタン会長も、日本経済新聞のコラム「Nipponビジネス戦記」でそのご苦労について語られていました。雑誌用の紙にまつわるお話が、特に印象的でしたね。

日暮:従来、日本で使われる紙の色は、真っ白というよりは、オフホワイトや少し黄味がかった紙が好んで使われてきました。これを白い紙に替えてはどうかと、出版社に提案したんです。そうすれば、写真や文字がくっきりと紙に映えて、紙面に高級感が出るのではないかと。この提案をご理解いただき、ファッション誌を中心に当社の紙を利用していただけるようになったのです。

古代エジプトのパピルスをはじめ、紙には歴史があります。地域や国によって、好まれる紙も変わる。そうした文化的、歴史的背景をくみ取りつつ、新しい商品・サービスを提案していったことが徐々に実を結んだのでしょう。

高品質を維持しつつ
コスト競争力も落とさない

泉:日暮社長がAPPジャパンに入社されたのは、2010年ですね。

日暮:はい。APPジャパンの認知度がアップし始めた時期でした。日本市場での足場をさらに強固なものにするためには、サービス面を拡充し、物流ネットワークの構築・拡充を進めていく段階でした。そんなとき、物流業界でキャリアを積んできた私にお声掛けいただきました。

泉:APPジャパンのどこに魅力を感じられたのでしょうか。

日暮:情報媒体としてだけでなく、モノを運ぶときの容器としての紙の役割、その将来性に引かれました。ネット通販が爆発的な勢いで伸びる中、紙箱など梱包資材としての紙の需要は増す一方です。「デジタル化の波を受けて紙の需要は先細りになる。製紙業界は斜陽産業だ」という声がありますが、成長余地は想像以上に大きい。日本の市場規模も決して小さいものではなく、1人当たりの紙の使用量は、世界で8番目に多いのです。

もう一つ、日本市場で見逃せないのは、紙に対するリテラシーが高いことです。用途に合わせた紙の在り方を細やかに吟味する点は、他に類を見ないといえる。そうした日本の知見をどんどん取り込み、新しい商品やサービスを提案することで、市場を創造・拡大していく。―― そうしたAPPジャパンの手法は、とても魅力でした。この会社にはしっかりとしたビジョンがある。そう感じましたね。

泉:その後、事業環境が変わっていくのですね。

日暮:先にお話ししたように、当社の生産拠点の中国やインドネシアは当時、世界的に見て労働力が比較的安価で、価格競争力でアドバンテージがありました。しかしそのアドバンテージが次第に小さくなっていくという変化に直面しました。

原因の一つは、為替変動です。1米ドル80円前後だった2012年に比べ、今は円安が進んでいます。こうした事態に対応するため、生産性を高める取り組みを続けています。例えば生産現場では人員配置を見直したりして、生産効率を高める努力を続けている。大規模な組織改革も行った。最高の品質と、最適なコスト。これを追求する製品配置、生産配置を実現し、コスト競争力を維持しています。

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