世界中の国と国との間の移動の時間は短くなり、人の行き来も増えて、経済的にも相互依存が高まっている。内向きの政治を行う国が増えても、この流れは変えられない。多文化環境の中に身を置き、外国人学生との相互理解を深めることは、子供の人生にとって一生の財産になる。APUに子供達を送り出した6組の親子の取材を通し、自分の選択に確信を持つことができた。

何かを一緒に成し遂げることは、君たちの未来を明るくする。

APUを知ったのは、高校3年の春頃です。高校2年の時に約1年間ニュージーランドに留学していたので、その経験を無駄にしないように英語を頑張りたいなと思っていました。進学するにあたって日本国内で海外留学するのと同じような環境を得られる大学がないかと両親に相談したら、APUという学校があるけどどうか、と教えてもらったんです。

APUの魅力はやはり全国の大学の中でも唯一、国際生と国内生の割合が半々だということです。ワークショップ形式の授業が多いのですが、そこでは必ず外国人と一緒にグループを組んで1つのものを作りあげるという作業をやります。宗教も文化も、育ってきた背景も全然違う人たちと同じ目標に向かって何かを一緒に成し遂げるというのは、これからの人生を生きて行くうえでものすごく勉強になる。君たちの未来を明るくできる。と、担当の先生はおっしゃるんですが、本当にその通りだと思います。

APUに入ってつくづく感じたのは、自分から行動を起こさないとダメだということです。今はSTUDY FOR TWOという、使わなくなった教科書を無料で集めて再販売して、そこで出た利益を勉強がしたくてもできないような環境にいるラオスやバングラデシュの子供達に送って教育支援をするサークルに入っています。その活動がすごく楽しいんです。全国に支部があって、他の大学の人たちとも交流しています。他大学の活動を参考にしながら、APUの支部をどう運営していけば良いかを仲間と一緒に議論したりする時間が、とても充実しています。次のセメスターからは国際学生をサポートする団体にも参加します。初めて日本に来て分からないことだらけの人たちの不安を、和らげてあげたいんです。

将来就きたい仕事はまだ決まっていません。APUにはアジア太平洋学部と国際経営学部があります。私はアジア太平洋学部なんですが、マネジメントの勉強もして自分の強みにしていきたいです。海外のインターンシップなどにも参加できればと思っています。

理解不足からくる恐れを克服すれば、世界はもっと良くなる。

大学進学を考える時期になり、留学の経験を生かし、英語の力を伸ばせるところに行きたいという話を娘から聞かされた時に、一番に頭に浮かんだのがAPUでした。前学長のモンテ・カセムさんの奥様のジュリア・カセムさんは、文化・言語・年齢・身体能力の違いを超えて、できるだけ幅広い人々に使いやすいデザインを生み出すことを目指す、インクルーシブデザイン研究の第一人者です。私がデザイン雑誌の編集の仕事をやっていた関係で、ジュリアさんとは10数年前から接点があり、APUの話も伺っていました。

入学してようやく1年ですが、娘はAPUに入って一回り大きく成長してくれたような気がします。もともとハンディキャップを持った友達に自然に寄り添えるような優しい性格の子ですが、勉強も一生懸命やっている傍ら、発展途上国の子供たちの教育支援のサークルに入ったり、海外の大学から一時的にAPUに留学する学生のサポートを行う、「APUバディ」という学生スタッフの活動をしたり、人のために汗をかくことを自ら進んで実践しているのを見て、とても頼もしく思っています。

今の子供たちを取り巻く環境は、私たちが子供だった頃と随分変わっています。私たちが若いころとは違って安い運賃を売り物にする航空会社などもたくさんでき、海外に出かけるのはとても身近なこととなりました。例えば新幹線と在来線を乗り継いて中国地方や東北地方の小さな町に出かけるのと、羽田から飛行機で韓国や中国に出かけるのを比較すれば、時間的には海外に出かける方がずっと早く到着できます。ヨーロッパやアメリカに出かけるのも、直航便なら十数時間で済みます。

このように時間という物差しで測ってみれば、海外と日本はとても近くなっています。人の行き来も昔とは比較にならないぐらい増えています。この20年ほどで急速に普及したICT技術の恩恵で、地球の裏側にいる人とも時間差なしに意思の疎通ができるようになり、個人が発信した情報を世界中の人々が共有するということも起こっています。

その一方でここ数年の世界各国の動きを見ていると、そういう実態があるにもかかわらず、まるで反対の内向きの方向に進んでいる国々が多くなっています。様々な複雑な要因が絡み合ってそういう状況が生まれていますが、相手の文化や宗教、歴史的な背景に対しての無知や理解不足からくる、一種の恐れのようなものも大きな要因のひとつでしょう。

けれども、いくら国境を閉ざそうとしてみても、世界中の国の間の時間的な距離が短くなり、人の行き来が増えるという流れは変えることはできないでしょう。経済的にも互いにすでに大きく依存しており、それを後戻りさせることは不可能です。

そうであるならば、若いうちにできるだけ多くの国々の人と身近に接し、それぞれの文化や習慣の違いを日々の暮らしの中で実感し、理解を深め、一生の友を得ることは、子供たちの今後の人生にとって、とても貴重な財産になります。

そういう経験を積んだ人材が社会の第一線で活躍するようになれば、国と国との関係を良くすることにも繋がり、罪のない一般市民が大勢巻き添えになるような紛争が少しでも減るかもしれません。日本企業の海外展開にとっても貴重な戦力となるはずです。

私は多文化環境の中で様々な人と触れ合い、文化や宗教の違いを日々の生活の中で体験することで、どんな人とも前向きな関係を築くことができ、世界中どこに行っても生きていける力を身につけてほしいと思い、娘にAPUを薦めました。今回取材を通してお会いした親御さんたちも、ほぼ同じような考えでお子さんたちをAPUに託していらっしゃったと思います。

APUに進学した子供たちが、自分たちが想像していた以上にしっかりし、大きく育ってくれたと目を細めて語ってくださる皆さんの言葉を取材中にお聞きしながら、自分の選択は間違っていなかったと改めて確信することができました。

混ぜる教育

APU開学までの経緯から、多文化環境で実践する独自カリキュラムの内容、企業から見たAPUなど、ユニークなAPUの魅力をあますことなく収録した一冊。巻末には、早くからAPUの「混ぜる教育」に注目してきた、糸井重里氏による解説も。さらに、電子書籍も好評発売中。

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