2016年度「女性が輝く先進企業表彰」で、内閣府特命担当大臣(男女共同参画)表彰を受賞。全国的にも人材不足が深刻化している介護業界において、「介護業界を変えていこう!」をスローガンに、革新的な取組を実行している。今回は、そのユニークな取組とそれを可能にするためのノウハウについて聞いた。
定期的な個人面談(トーキング)を実施。家庭の問題などが仕事に影響していないかを確認し、一人ひとりの事情に応じた柔軟な働き方を検討している
――介護業界は離職率が高く、人材確保が大変だといわれていますが、どのようにして乗り越えられたのでしょうか?
福祉や介護関連の業界は人材を集めるのが本当に困難で、いっときは事業の継続が難しいのではといった危機感が当社にもありました。しかも地方の介護事業所ということで、少子高齢化が進むにつれて減っていく労働者を、他産業も含む多くの事業所同士で取り合いになってしまうこともありました。そこで「人材確保対策室」というプロジェクトチームを設置して、どうすればスタッフが定着するのか、魅力的で充実した職場をつくれるのか、を考えました。
――人材確保など様々な取組を実行されていますが、特に女性活躍推進に注力すると決めた理由は何でしょうか?
当社では、現在、全体の約6割超を女性スタッフが占めているため、女性の就業継続は人材の確保には欠かせない重要課題です。しかし、子育てや介護、看護など家庭の事情で現場を離れていく女性職員が何人もいたため、女性活躍推進を加速させようと決断しました。仕事と家庭を両立できるように、役職者と職員が面談を重ね勤務時間や日数を考慮するなど、職員の事情に応じた柔軟な働き方の導入を推進しました。離職率が高く、人材の確保が困難といわれる介護の現場でも、働き方を工夫することで十分に働きやすい環境があると感じてもらうことができ、離職率も低下しました。
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「制度のバックアップで休暇を確保」
施設長 岡田 重美さん
これまでは妊娠や介護という理由では休暇が取りづらい、辞めるしかないという雰囲気でした。しかし、これは誰もが直面する課題だと強調し説明することで、職員たちの認識が変わっていき、みんなで支え合う意識が醸成されました。現在、育児休暇を取って復帰する職員はほぼ100%。余裕を持って人員を確保することで、急なスタッフの欠勤や早退にも対応できる体制がつくられ、誰もが安心して休暇を取得できるようになりました。 ![]() |
腰を痛める原因につながる人力による介助は、原則禁止。電動リフトなどの最新の介護機器の導入によって、腰痛を訴える人が激減した
――独自の工夫による様々なアイデアを実践されていますが、具体的にはどのようなものですか?
3K職場として不人気な介護事業所でも、工夫次第で十分に魅力的な職場になることが実証できました。慢性的な人材不足に悩む介護業界では珍しく、現在就職待ちの人員がいます。具体的な取組が各種専門誌で取り上げられたり、書籍化されるなど注目され、今では人材確保対策の講演依頼も増加しています。
![]() 2015年度には、イクボス宣言を実施。男性職員の育児休暇取得を推奨し、男性の育児・家事・共働きについて説明する場もつくっている。また、法人オリジナル冊子「ワークライフバランスの栞(しおり)」を全スタッフに配布し、ノー残業・有給休暇・産前産後休業・育児休業・介護休暇などの取得を強力に推進。育児休暇中のスタッフには定期的に連絡をとり、復帰時には職場復帰研修も実施する |
家庭事情に合わせた働き方を構築
――こうした取組を実践した結果、社内の雰囲気や空気に変化はありましたか? |