個人情報などの機密情報が記載された膨大な書類を扱う金融機関にとって、不要となった紙の廃棄処理は想像以上に神経を使う大きな負担となっている。こうした紙類を最終処理するための切り札として、エプソンの乾式オフィス製紙機『PaperLab(ペーパーラボ) A-8000』を導入したのが、損害保険ジャパン日本興亜の松本法人支社だ。地域への貢献にもひと役買っているというその使い方とは、どのようなものなのか。同支社の大野昌彦支社長に、日経BP環境経営フォーラムの斎藤事務局長が話を聞いた。

「PaperLab(ペーパーラボ)」とは?

エプソン独自の新開発技術「ドライファイバーテクノロジー」の3つの技術「繊維化」「結合」「成形」によって、使用済みの紙から新たな紙を生み出す世界初※1の乾式オフィス製紙機。使用済みのコピー用紙を原料として、文書情報は完全に抹消したうえで新たな紙を生産することができる。一般的な製紙方法で必要とされている大量の水を使わないため給排水工事が不要なので、オフィスのバックヤードなどに設置可能。2016年12月に販売を開始以来、自治体を中心に導入が進んでいる。

※1:2016年11月時点、乾式のオフィス製紙機において世界初(エプソン調べ)

同製品は「日本イノベーター大賞2016」(主催:日経BP社)の大賞を受賞。環境負荷低減という社会的課題の解決と、閲読性など紙の良さをサステナブルに生かせる仕組みが評価された。

日本イノベーター大賞2016

主催:日経BP社

企業概要損害保険ジャパン日本興亜株式会社

SOMPOホールディングスの中核会社である損害保険ジャパン日本興亜は、グループの経営理念である「お客さまの安心・安全・健康に資する最高品質のサービスの提供」の実現に向け、幅広い領域にチャレンジしている。地球環境問題や地域貢献、健康福祉についても、グループ会社を含めたバリューチェーン全体で、早い時期から積極的な取り組みを実践している。

『PaperLab(ペーパーラボ)』の導入でコストも手間も効率化が進んだ

斎藤文書などの最終処理を社内で完結できるということで、『PaperLab(ペーパーラボ)』の導入をお決めになったそうですね。

大野社内で使う大量の不要になった紙は全て廃棄するわけですが、金融機関である弊社が扱う紙は、個人情報や企業情報などの機密情報を含んだものが大半です。一部は社内でシュレッダーにかけ、あとは外部業者に依頼して溶解に回すなど注意深く処理していますが、どうしても一定の時間とコストがかかります。ところが、『PaperLab(ペーパーラボ)』があれば、使い終わった紙の廃棄処理と新たな紙の購入というサイクルがこの機械の中で循環するイメージなので、同時に情報セキュリティーも向上する。これは画期的なことだと思いました。

日経BP 環境経営フォーラム事務局長 斎藤 正一/損害保険ジャパン日本興亜株式会社 松本法人支社 支社長 大野 昌彦氏

斎藤実際に導入されてみて、管理の手間やコスト面での変化などはいかがですか?

大野まだ100%全てを『PaperLab(ペーパーラボ)』での処理に回しているわけではないのですが、紙の廃棄コストは確実に減少しています。廃棄までの一定期間、紙を保管する手間や、それを保管場所に運ぶ労力なども効率化できています。

斎藤紙の集め方や管理担当者など、『PaperLab(ペーパーラボ)』の運用フローについて教えてください。

大野機密情報が載った紙は社員がそれぞれ分別して、『PaperLab(ペーパーラボ)』の担当者が手づくりした箱に入れるというフローで行っています。運用を担当する社員でも、再生作業において身体への負担も少ないので、全く問題なくこなしています。

『PaperLab(ペーパーラボ)』の運用を担当している猪又竜さんが手づくりした、再生に回す紙を回収する箱(左)。再生する紙はきれいにそろえて挿入する

『PaperLab(ペーパーラボ)』の運用を担当している猪又竜さんが手づくりした、再生に回す紙を回収する箱(左)。再生する紙はきれいにそろえて挿入する

用途に応じていくつかの色に分けて紙が再生されると、それを保管するのも猪又さんの大切な仕事だ。紙は社内の資料用としてだけでなく、お客様への提案資料にも使われている

用途に応じていくつかの色に分けて紙が再生されると、それを保管するのも猪又さんの大切な仕事だ。紙は社内の資料用としてだけでなく、お客様への提案資料にも使われている

斎藤今回の導入によって、社員の方に意識の変化などはありましたか?

大野まず紙という貴重な資源を大事にする意識が生まれたのかなと思います。やはり再生に回す紙だと知っていると、回収する箱に入れるときもみんな整えて入れるようになりました。小さな変化ですが、環境を考えることにつながっていくのではないかと期待しています。

斎藤外部からの反響などはいかがですか?

大野地元紙で記事にしていただいたこともあって、実際に機械を見たいというお客様が何社か見学にいらっしゃいました。

再生した紙で作ったスケッチブックを長野県立こども病院に寄付

斎藤新たに再生した紙は、どのような用途で使っていますか?

大野まず名刺用の紙として使っています。『PaperLab(ペーパーラボ)』で作れる和紙のような風合いの紙で仕上げたので、名刺交換の際にそれに気づいたお客様とは、そこから会話が始まることもあります。新たに再生した紙のストックもだいぶ整いつつあるので、社内の打ち合わせ資料や、外部のお客様に向けた提案書などにも普通に使っています。

斎藤様々な用途で実際にお使いになっているわけですね。

大野ちょっと変わった使い方としては、『PaperLab(ペーパーラボ)』で作った紙をスケッチブックにして、地域貢献の一環として長野県立こども病院に300冊寄付させていただきました。

『PaperLab(ペーパーラボ)』で再生した紙は、同社がお客様に渡す名刺や、ノベルティのメモ帳に活用。自社内で再生した紙だと分かると話も弾むという

『PaperLab(ペーパーラボ)』で再生した紙は、同社がお客様に渡す名刺や、ノベルティのメモ帳に活用。自社内で再生した紙だと分かると話も弾むという

長野県立こども病院に300冊寄付したスケッチブック。中には同社がスポンサーになっている、サッカーJ2の松本山雅FCのキャラクターを使った塗り絵などもある

長野県立こども病院に300冊寄付したスケッチブック。中には同社がスポンサーになっている、サッカーJ2の松本山雅FCのキャラクターを使った塗り絵などもある

斎藤それはどういう経緯で?

大野弊社と長野県が地方創生に関する連携協定を締結していることと、『PaperLab(ペーパーラボ)』の運用担当社員が以前からこども病院で治療を行ってきたという経緯もあって、こども病院を選定させていただきました。

斎藤御社はグループとしてCSRの取り組みにも先進的に向き合っていらっしゃるわけですが、長野県との地方創生の連携協定も、そうした流れの一環だったのでしょうか?

大野そのとおりです。弊社は全国区で業務を展開させていただいているわけですが、お客様とのつながりはその地域ごとに強めていかなければなりません。私たち松本法人支社も地域に貢献する観点からいろいろな取り組みを行っていますが、今回の寄付はその一つという位置づけです。

斎藤お子さんたちの反応はいかがでしたか?

大野こども病院は重篤な病気のお子さんが長期で入院されているので、少しでも入院生活の潤いになればと考えてお渡ししました。病院の方のお話では、お子さんだけでなく付き添いのご家族にも喜んでいただけたと伺いました。

斎藤単にものをあげるのではなく、『PaperLab(ペーパーラボ)』で新たに再生した紙で作った文具というところにも、目に見えない価値がある気がします。

大野確かにせっかくお子さんにプレゼントするわけですから、それが環境にも配慮されたものであることが望ましいという思いはありました。長野県はエプソンの地元でもありますから、その会社の最新技術から生まれた紙だというのもよかったですね。

『PaperLab(ペーパーラボ)』担当 猪又竜さん

『PaperLab(ペーパーラボ)』担当の猪又竜さんに聞く

支社長に『PaperLab(ペーパーラボ)』で作った紙の活用について相談を受けた際、私がお世話になっているこども病院にスケッチブックを贈りたいとお話しさせていただきました。入院は基本的にヒマが一番の敵ですから(笑)。自分の心臓の絵を描けるようになるのは、自分の病気を理解するためのセルフマネジメントの一環として推奨されているので、そういう点でも役立つと思います。

『PaperLab(ペーパーラボ)』をきっかけに地域の人とつながる
松本法人支社に赴任して4年目の大野支社長

松本法人支社に赴任して4年目の大野支社長

刻々と変化する環境問題の取材経験も豊富な斎藤事務局長

刻々と変化する環境問題の取材経験も豊富な斎藤事務局長

斎藤環境への配慮はこれからも変わらない重要なテーマですが、最近はESG投資やESG経営のように、ESG(企業や投資家が持続可能な社会の形成のために配慮すべき環境・社会・ガバナンスの3つの要素)が企業価値に結びついていく流れがあります。今のお話はE(環境)とS(社会)がうまく連携した事例なのかなと感じますが、そのあたりはいかがでしょう?

大野一連のESGの流れの中でいろいろとやっていこうという意識は、もちろんあります。私たちがこの地域で事業を行わせていただくには、地域の皆さんとのつながりを大事にしなければなりません。環境や地域への貢献が、そのきっかけとなってくれたらこれほどうれしいことはありませんね。

斎藤御社内で『PaperLab(ペーパーラボ)』を導入したのは、まだ松本法人支社だけと伺っていますが、今後、導入を横展開していくための先進的な事例になるのではありませんか?

大野そうなればいいですね。ここでしっかりと『PaperLab(ペーパーラボ)』の効果を検証して、外部にも発信できれば、普及や浸透へのいい流れを作っていけると思います。とはいえ、まずは地域の皆さんの役に立ち、喜んでいただけるようなことに活用していきたいと思います。

斎藤『PaperLab(ペーパーラボ)』は2015年に国連で採択されたSDGs(エスディージーズ=持続可能な開発目標)の考え方にも合致したものだと思うので、CSRでは長年の蓄積がある損害保険ジャパン日本興亜さんの、今後の取り組みに期待したいと思います。

取材を終えて

CSR活動の先進企業として損害保険ジャパン日本興亜は有名です。松本法人支社の長野県立こども病院の事例は、本社の活動をESG(環境・社会・ガバナンス)の取り組みに発展させていると感心しました。インタビューをしながら、「スケッチブックを広げながら笑顔をみせる」入院中のお子さんたちの顔が浮かびました。環境に配慮した再生紙を生み出す「PaperLab」は、アイデア次第でS(社会)の取り組みを後押しする製品にもなるようです。

(斎藤正一)

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