「無音再生を考慮」「結論を先に」「画角を工夫」がモバイル動画のコツ

これまで説明したように、今後、動画広告の主戦場は、テレビと並んでスマホやタブレットなどのモバイル端末となる。

ただし、自宅のリビングで視聴するテレビと、個々人のスキマ時間に主に利用されるモバイル端末とでは、動画広告の見られ方が根本的に異なる。人々は、テレビを見ているときは基本的に受身であり、いわゆるプッシュ型の視聴を行っているのに対し、モバイル端末でインターネットのアクセスしているときは、基本的に自らコンテンツを選ぶプル型の視聴を行っているからだ。

その違いを念頭に置くと、当然、動画広告の作り方もテレビ用とモバイル端末用では異なってくる。

「モバイル端末に最適な動画広告を作る上では、テレビコマーシャルとは異なる、3つのルールがあります」とフェイスブック ジャパンのCreative ShopのCreative Strategistである田中 徹氏は力説する。

そのルールとは、「音声がなくても内容がわかるようにつくること」「結論を先に見せること」「画角を検討すること」だ。

1つ目のルール、「音声がなくても内容がわかるようにつくること」とは?
スマホで動画を見ているとき、9割以上のユーザーが音を消しているという調査結果がある。つまり、従来のテレビコマーシャルの武器だった音楽やナレーションを駆使できない。このため字幕を活用するなどの工夫が必要となる。

2つ目のルール、「結論を先に見せること」とは?
テレビは典型的なプッシュ型メディア。視聴者は受け身で見ているため、多少長いコマーシャルが流れていても「ながら視聴」してくれる。けれどもインターネットはプル型メディア。視聴者は自ら選択してコンテンツを見ているため、まだるっこしいコンテンツはすぐにスキップしてしまう。
「従来の30秒のテレビコマーシャルでは、物語の設定があり、事件が起き、解決策が提示され、商品のカットが最後に大写し、という作り方ができましたが、当社の調査によると、インターネットのユーザーは10秒以上動画を見てくれないことが多い。このため、動画広告は最初に結論やヤマを見せる必要がありますし、ブランド名や商品パッケージもすぐに見せる必要があります」(田中氏)

そして、3つ目のルール、「画角を検討すること」とは?
テレビコマーシャルの場合、テレビの画角は16対9の横長長方形とフォーマットが決まっている。けれども、ネットの動画広告の場合、フォーマットを縦長や正方形するができる。逆に言えば、従来の横長16対9のフォーマットにとらわれない創造性が広告クリエイターに求められる。

以上3点は、ゼロからモバイル向けの動画広告を作成するときはもちろん、テレビコマーシャルのコンテンツをベースにモバイル向けの動画広告を編集する際にも、必ず念頭に置いておくべきルールだ。

ちなみに、1つめのルール「無音声」というのは、表現上の足かせになるが、この足かせが逆に功を奏する点がある。映像と字幕だけで企業の商品やサービスやブランドイメージを表現している動画広告を作成できれば、その字幕を翻訳するだけで世界中のさまざまな国や地域でマーケティングが可能となる。

チャップリンが全盛期だった初期の映画は、動きと字幕だけで人々を笑わせ、感動させた。スマホ時代の動画広告は、ある意味で無音声映画の進化系のような形となるかもしれない。