01 快適走行の新機軸を打ち出したリアルタイム更新地図&ナビ
01 快適走行の新機軸を打ち出したリアルタイム更新地図&ナビ
Waze(ウェイズ) CEO Gai Berkovich
オフィスを案内するCEOのGai Berkovich氏

オフィスを案内するCEOのGai Berkovich氏

グーグルの約940億円買収で話題のアプリ開発会社に潜入
グーグルの約940億円買収で話題のアプリ開発会社に潜入

ドライバーであるユーザーの位置情報、投稿情報などのクラウドソースから地図を作成。ターンバイターンのナビゲーション機能とユーザーのリアルタイムな投稿を融合させたSNS的な交通情報アプリが「Waze(ウェイズ)」だ。モダンな意匠の高層ビルが立ち並ぶテルアビブの商業地区でも目を引く45階建てのエレクトラタワーにウェイズの本社オフィスがある。2007年創業のスタートアップで、翌年から1000万ドル単位の資金調達を重ねて着実な成長を遂げ、2013年に9億6600万ドルでグーグルに買収されたことで一躍脚光を浴びた。買収に当たってはグーグルに加え、アップル、フェイスブックも名乗りを上げ、いわゆる“ビッグ3”による争奪戦となったというから、近年最も成功したスタートアップの一つと言えるだろう。グーグルがこのエレクトラタワーにイスラエルオフィスを置いていることから傘下のウェイズもここに本社を構え、世界21カ所に展開している。

ウェイズのオフィスは26階。ミーティングルームには様々なアーティストの名前が付けられており、その一つの“レノン”に通された。大きな窓からはテルアビブ市内を一望でき、イスラエル国防軍の本拠地を間近に見ることもできる。テーブルの上には山のようなフルーツと様々なドリンクが用意されている。「どうぞ」とトレーいっぱいに届けられたのはパンと焼き菓子。ミーティングというより、ちょっとしたパーティー気分だ。

「温かい飲み物は共有のキッチンに大抵そろっているからご自由に」と、ウェイズのオリジナルTシャツ姿で迎えてくれたのはCEOのGai Berkovich氏。この自然体のおもてなしが心地いい。同氏はウェイズを“Wikipedia of Drivers”と表現する。使われている地図は、ユーザーの動きを10メートルごとおよび1秒ごとにトラッキングしたデータから作成する。そのため通常1つの国に1億ドル以上かかるといわれる地図作成費を各段に抑えることができる。

ウェイズとグーグルが入居するエレクトラタワー

ウェイズとグーグルが入居するエレクトラタワー

タップ1つで多彩なリアルタイム投稿が可能
タップ1つで多彩なリアルタイム投稿が可能

随時アップロードされる膨大なユーザーデータに基づいた正確なナビゲーション機能に加え、ユーザーを引きつけているのがユニークな投稿機能だ。タップ1つで事故や工事、渋滞、交通規制などの情報をリアルタイムに投稿でき、他のユーザーはその新鮮かつ実際的な情報に基づいて最適なルート選択ができる。ガソリン価格や飲食店の情報なども投稿・閲覧でき、このレストラン情報などの広告がウェイズの収入源となっている。ウェイズの各機能はユーザーの地域コミュニティーへの貢献意識で成り立っており、現在、ウェイズは47言語に対応し、世界中に広がっている。

現在、開発に最も力を入れているのが「Carpool」機能だ。ユーザー同士のクルマ移動のニーズをマッチングし、ライドシェアを成立させる。乗車料金のやりとりには一切干渉せず、ユーザー同士に任せる点が特徴的だ。また、使っていないクルマを他のユーザーに貸し出すことも可能で、走行車両と駐車車両の削減による渋滞の緩和、CO₂削減などが期待できるという。「Carpool」はコミュニティー内でクルマ移動を融通しあう画期的な仕組みと言えそうだ。

ウェイズのオフィスからはテルアビブの中心部を一望

ウェイズのオフィスからはテルアビブの中心部を一望

02 自動運転のカギとなる“眼”の開発拠点
02 自動運転のカギとなる“眼”の開発拠点
Mobileye(モービルアイ) Position0000000 Jason Bloom
エルサレムにある研究開発センターにてJason Bloom氏と

エルサレムにある研究開発センターにてJason Bloom氏と

一気に大企業の仲間入りを果たしたスタートアップの雄
一気に大企業の仲間入りを果たしたスタートアップの雄

テルアビブ大学出身のAmnon Shashua教授により1999年に創立。自動車産業が自動運転へとパラダイムシフトする今、自動車の“眼”となる単眼カメラによる画像認識技術を武器に一気に世界的企業の仲間入りを果たしたMobileye(モービルアイ)。ソフトウエアと単眼カメラだけで車両の周辺環境を検知する視覚システムを開発し、衝突事故防止・軽減を実現するADAS(先進運転支援システム)のコア技術を担う。2017年、インテルによって153億ドルで買収された。クライアントはBMW、GM、ボルボ、日産などの自動車メーカー26社。

本社はオランダ・アムステルダムに登記されているが、実際の本社機能はイスラエルにある開発研究センターが担っている。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の3つの宗教の聖地になっているエルサレムの旧市街のほど近く、IT企業が数多く拠点を構えるハイテクパークに立つひと際大きなビルが、モービルアイの頭脳が結集する本丸、研究開発センターだ。ここで働く従業員はエンジニア450人を含む約700人だけというから、相当ゆとりのある職場環境だ。

エンジニアのJason Bloom氏は取材のアポイントメントを30分早めてほしいという急な願いにも快く応じて、ミーティングではモービルアイの沿革から現在の取り組み、中期ビジョンまでを語ってくれた。同社のミッションはADASで交通事故を減らすことだと話す。現在、世界では交通事故で毎年124万人が死亡し、重傷者は2000万~5000万人にのぼる。人的損害と物的損害を合わせた経済的損害はGDPの1~3%に相当するという。日本だけでも毎年数兆円が失われている計算になる。交通事故の93%が運転者の不注意や居眠りなど人に起因するものだが、アクサ生命保険の調査によると、そのほとんどは事故発生の2秒前に運転者に警告できれば防ぐことができたとされている。

モービルアイのコア技術を解説するBloom氏

モービルアイのコア技術を解説するBloom氏

衝突回避機能から新たなデジタルインフラ構築へ
衝突回避機能から新たなデジタルインフラ構築へ

モービルアイの画像認識プロセッサーチップ「EyeQ」は、クルマの周囲に付けられた8つのカメラから得られる画像情報をリアルタイムで解析し、必要な警報の発信やクルマの制御を行う。前方衝突警報、歩行者・自転車衝突警報、車線逸脱警報、車間距離警報、制限速度認識、ヘッドライト制御など、自動運転に不可欠な事故回避の要素を網羅し、その精度はステアリングの手放しが可能な自動運転レベル3を実現する域に達している。また、フロントウインドウに後付けしたカメラの映像を解析し、事故を未然に防ぐための警告を発するアフターマーケット製品もリリースし、運送やバス会社などの法人を中心に採用が進んでいる。

さらに、現在力を入れているのが、死角の多いバスなどの大型車両に特化した衝突防止システム「Shield+」だ。このシステムは衝突防止のための警告を発するだけでなく、データの蓄積によって事故の危険性が高いホットスポットを洗い出し、道路インフラの改善を目的とした自治体へのフィードバックを見据えている。

そして、もう一つの興味深い技術がREM(ロード・エクスペリエンス・マネジメント)だ。これは同社のカメラベースのADASシステムから得られる車線、道路境界、信号、交通標識、障害物などをマッピングするもので、データ収集の進展によって新しいデジタルインフラを構築していくことができる。

最後にBloom氏は、自動運転の見通しについて2021年に完全自動運転のレベル5をBMWから市場投入すると明言した。実現を疑問視する見方もある高い目標だが、いちエンジニアである彼からは自信のほどがうかがえた。

ミッションは交通事故の低減だと話す

ミッションは交通事故の低減だと話す

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主催:イスラエル大使館 経済/協力:日経BP総研
主催:イスラエル大使館 経済/協力:日経BP総研

お問い合わせ先:イスラエル大使館 経済部
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