03 スマホのフル充電「5分」の壁を破れ
03 スマホのフル充電「5分」の壁を破れ
StoreDot(ストアドット)COO Erez Lorber
開発やマーケティングなどを統括するErez Lorber氏と

開発やマーケティングなどを統括するErez Lorber氏と

アルツハイマーの研究成果をフラッシュバッテリーへ応用
アルツハイマーの研究成果をフラッシュバッテリーへ応用

テルアビブから北へ7kmに位置するビーチリゾート、ヘルツェリア。実は日本企業とも関係の深い注目企業、StoreDot(ストアドット)はここに拠点を構えている。アルツハイマーの研究で解明した分子化合物のメカニズムをベースにしてスマホ用およびEV(電気自動車)用フラッシュバッテリー、液晶ディスプレイの開発を行う2012年創業のスタートアップだ。

COOのErez Lorber氏の解説によると、ストアドットは非常に大胆な成長を遂げていることが分かる。テルアビブ大学のEhud Gazit教授を中心とした研究チームが生成に成功したナノ結晶を利用して、液晶ディスプレイ用のフィルム「MolecuLED」を開発したのが始まりだ。メタルフリーの有機素材のみで鮮やかな色表現を実現。紙のように薄く柔軟性があり、エネルギー効率に優れているうえ、コストは現在4Kや8K液晶に採用されている量子ドットフィルムの5分1以下というから驚く。

サムスンベンチャー投資から得た600万ドルによって開発速度を加速させるが、同社はナノ結晶の技術を生かしてバッテリーの急速充電の研究開発にかじを切る。「スマホユーザーのニーズを考えた場合に、充電時間の長さが最も大きな課題であり、バッテリーの進化がより重要だと判断した」と、その理由は明快だ。

高性能なディスプレイやバッテリーを開発

高性能なディスプレイやバッテリーを開発

自由な研究開発から発生するブレークスルー
自由な研究開発から発生するブレークスルー

スマホ充電用の新型フラッシュバッテリーはたった5分で100%充電を可能にしている。同レベルの充電時間を達成している競合もあるが、同社のフラッシュバッテリーは原材料に独自開発した不燃性化合物を使用し、発熱しない構造を実現。充電の高速性に加えて、安全性を確保している点を強みとしている。企業名は秘密ながら日本と中国で既に量産に入っていることを明かしてくれた。

資金調達は第2ラウンドで4200万ドル、第3ラウンドで1800万ドルを獲得し、さらに開発速度を上げながら、EV用バッテリーにも幅を広げている。三菱ふそうとはEVのトラック・バスの開発で既に協業しており、三菱ふそうの戦略的提携パートナーであるダイムラーから2017年9月に5000万ドルの出資を受けた。

ストアドットのバッテリー開発は、充電の高速化に特化している。Lorber氏はその理由をこう話す。「充電高速化は巨大なパラダイムシフトを生みます。これから自動車はEVになり、共同利用が進んでいくでしょう。飛行機のようにできるだけ駐機時間を短くして飛び続けるほうが経済性が高く、カスタマーの利便性も高まります。EVも5分で充電できれば、より長い時間道路で活躍し、より多くのカスタマーのニーズに応えられます」。

撮影しないことを条件に研究施設も見学できた。80人のエンジニアは世界最高の教育水準といわれるテクニオン・イスラエル工科大学、マサチューセッツ工科大学など世界最高レベルの大学出身者を厳選。30人がPh.D、30人がマスターの取得者だ。研究開発で重視しているのは“自由”。バラエティー豊かなバックグラウンドを持つエンジニアたちが自由な発想で取り組み、交流することでブレークスルーを起こす。とにかくスピードを重視して個々のエンジニアに裁量を与え、一般的に8~12カ月かかるプロトタイプ製作を週単位で成し遂げているという。優秀な人材の囲い込みと大胆な活用術に、ストアドットの強さの秘密を見た。

拠点はヘルツェリアの街なかにある

拠点はヘルツェリアの街なかにある

BREAKTIME
BREAKTIME
日本×イスラエル キーパーソンに会う1
イスラエル企業は日本と組みたがっている。なぜなら日本企業は長期的な成長を重視するから
Vertex Ventures バーテックス・ベンチャーズ General Partner David Heller氏

今回訪ねたウェイズへの初期投資を行ったイスラエルの大手ベンチャーキャピタル、バーテックス・ベンチャーズでゼネラルパートナーを務めるDavid Heller氏とランチを共にすることができた。同氏は高校時代に日本の明治史の研究に取り組み、旧文部省の奨学生として京都大学で学んだ日本通だ。この5年は中国勢の進出が拡大しているが、イスラエル企業の多くはできれば日本企業とコラボレーションを望んでいると話す。

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「日本は“カイゼン”に象徴されるように、長期的な成長を重視して物事に取り組みます。約束をきちんと守る点も素晴らしい。ただし、決済に時間がかかりすぎるのが欠点。スピードの遅さはリスクであることを理解すべきです」

多忙を極める同氏に日本企業のためになぜそれほど熱心に活動しているのかとたずねると、「ハートの問題。若い時に日本で学ばせてくれた恩返しをしたいんです」と笑った。

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04 日本では知られざる、世界ナンバーワン公共交通情報アプリ
04 日本では知られざる、世界ナンバーワン公共交通情報アプリ
Moovit(ムービット)Founder, CEO Nir Erez
創業者でCEOのNir Erez氏と

創業者でCEOのNir Erez氏と

降りる駅をリアルタイムに通知
降りる駅をリアルタイムに通知

Moovit(ムービット)は同名の公共交通の乗換案内アプリを展開する2012年創業のスタートアップで、既に世界に9000万人のユーザーを獲得している。日本にも同様のアプリやサービスはあるが、ムービットの優れている点はリアルタイムに情報提供してもらえることだ。例えば、降りるべき駅が近づくとアラートで知らせてくれるから、海外の知らない街を歩く際に重宝する。通勤などのいつものルートに渋滞や遅延が発生している場合に最適な道順を提案してもらえる機能もある。79カ国、1500以上の都市で展開しており、43言語に対応。2016年グーグルの最優秀ローカルアプリに選ばれた。これまでにBMW、ノキア、セコイア・キャピタルなどから8400万ドルを調達している。残念ながら日本の都市にはまだ展開していない。

遊び心にあふれたオフィス

遊び心にあふれたオフィス

世界中に20万人いる献身的なボランティア
世界中に20万人いる献身的なボランティア

ムービットは各都市の政府が提供する公共交通機関の情報、そして運輸会社が提供する情報を利用し、さらにユーザーコミュニティーのライブ情報を組み合わせることで、極めて実際的な情報提供に成功している。ユーザーから得られるビッグデータは政府や運輸会社にとっても魅力的なデータだ。2016年にリオデジャネイロで行われた国際競技大会ではリオデジャネイロ市に無料で情報提供を行い、円滑な運営をサポートした。2020年に東京で行われる同大会でも貢献したいと言うが、話は簡単ではなさそうだ。一つの問題は東京都からの情報提供が進まないこと。もう一つの問題は日本の住所表示は特殊であるため、現行のプラットホームで展開しにくいことが挙げられる。

オフィスには膨大な“Mooviter”の写真が掲示されている

オフィスには膨大な“Mooviter”の写真が掲示されている

BREAKTIME
BREAKTIME
エルサレム旧市街を歩く
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の3つの宗教の信者、35億人の聖地

過密なアポイントメントの合間を縫って、エルサレムの旧市街を散策した。約1km四方の旧市街はユダヤ教徒地区、キリスト教徒地区、ムスリム地区、アルメニア人地区の4区画に分けられている。ユダヤ教徒にとっては神殿の丘と嘆きの壁が、キリスト教徒にとっては聖墳墓教会が、イスラム教徒にとっては岩のドームなどがと、それぞれの宗教にとって歴史的に重要な遺跡があり、世界中から3宗教の巡礼者が訪れる。「35億人の聖地」と呼ばれるのもそのためだ。イスラエル人の国民性を理解するためには、この旧市街に象徴される複雑な歴史と文化の背景に目を向ける必要がある。

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05 ダイヤモンドは仮想通貨で輝きを増す
05 ダイヤモンドは仮想通貨で輝きを増す
TechFinancials Group CEO Asaf Lahav - CEDEX(セデックス) CEO Saar Levi / Co-Founder Ronan Priewer
左からCEDEXのCEO Saar Levi氏、TechFinancials Group CEO Asaf Lahav氏、CEDEX共同設立者Ronen Priewer氏

左からCEDEXのCEO Saar Levi氏、TechFinancials Group CEO Asaf Lahav氏、CEDEX共同設立者Ronen Priewer氏

ブロックチェーン技術を利用したダイヤ取引所
ブロックチェーン技術を利用したダイヤ取引所

CEDEX(セデックス)ではCEOのSaar Levi氏、共同設立者のRonen Priewer氏、大株主であるTechFinancials GroupのCEO Asaf Lahav氏が迎えてくれた。Priewer氏は「イスラエル人のおなかが出ているのはブレカスのせいです。どうぞ召し上がってください」と流ちょうな日本語でイスラエル伝統のパイを勧めてくれた。彼は2年間の日本滞在歴があるという。

同社はロンドンAIM市場に上場しているTechFinancialsと提携し、ブロックチェーンの技術を利用した世界初のダイヤモンド取引所CEDEXのプラットホームを開発。2018年1月に独自コインを販売して資金調達するICO(Initial Coin Offering)を実施予定だ。

Lahav氏はダイヤ市場の透明化が必要だと話す

Lahav氏はダイヤ市場の透明化が必要だと話す

ダイヤを金のような投資の対象に
ダイヤを金のような投資の対象に

目的は伝統的なダイヤモンド市場と金融市場とのギャップを埋め、オープンなダイヤモンド取引市場を創出することだ。ダイヤモンド市場では年間約8700億ドルの取引があるが、このうち宝飾・産業用が99%を占め、投資はわずか1%だ。金の宝飾・産業用20%、投資80%と比較すると、ダイヤモンドが金融といかに乖離(かいり)しているかが分かる。その原因となっているのが、ダイヤモンド市場に存在する3つの障害、透明性の欠如、流動性の欠如、代替性の欠如だ。CEDEX(Certified Blockchain Based Diamond Exchange)はブロックチェーンを利用してこれらの障害を取り除く。

フィンテックの専門家であるLahav氏はCEDEXの仕組みを解説する。

「独自の機械学習アルゴリズム“DEX”が個々のダイヤモンドの宝石合成、ダイヤモンド市場の動向、世界的な在庫分析を行い、適正な市場価格を表示します。ダイヤモンド価値が透明化され、投資家やバイヤー、売り手は機密扱いとなり、仮想通貨CEDEXコインを利用することで誰でもダイヤモンドを売買したり、ダイヤモンドに投資できるようになります」

リーマン・ブラザーズやバークレイズキャピタル証券などで金融畑を歩んできたLevi氏はロードマップについて話す。

「2018年にCEDEXのプラットホームを日本や香港など東アジアでローンチします。2019年には投資信託や空売り、レバレッジなどサービスを増やすとともに、対象エリアを広げていく予定です」

ダイヤモンドにとって日本は特別な国だとPriewer氏は話す。

「日本は卓越した加工技術によってダイヤモンド市場に品質という革命をもたらしました。そして再び日本からCEDEXでダイヤモンド市場に革命を起こしたいと考えています」

まずは1月にスタートするICOに注目したい。

ダイヤ市場そのものの進化を望むと3氏

ダイヤ市場そのものの進化を望むと3氏

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主催:イスラエル大使館 経済/協力:日経BP総研
主催:イスラエル大使館 経済/協力:日経BP総研

お問い合わせ先:イスラエル大使館 経済部
Israeljapaneconomy@israeltrade.gov.il