06 驚異の成功率を誇るイスラエル屈指のVC
06 驚異の成功率を誇るイスラエル屈指のVC
Jerusalem Venture Partners(エルサレム ベンチャー パートナーズ) Partner Yonatan Machado
開発やマーケティングなどを統括するErez Lorber氏と

本社オフィスのテラスにてYonatan Machado氏と

政府公認のインキュベーター機能を内包
政府公認のインキュベーター機能を内包

Jerusalem Venture Partners (JVP)はソフトウエア、半導体、サイバーセキュリティー、ストレージなどの分野のスタートアップへの投資に特化したVC(ベンチャーキャピタル)。エルサレムのほか、イスラエル南部の都市ベエルシェバにある研究開発特区サイバースパーク、ニューヨーク、パリに拠点を構える。

エルサレムにある本社社屋は1937年に建てられた元造幣局の印刷所をリノベーションしたもの。この建物を中心に有力な他のVCやスタートアップメディア企業が集結する「JVP Media Quarter」を構築。多くの若い企業が緩やかな協力関係を結びながら、かつて紙幣を印刷していた地で、金を生み出そうと躍起になっている。

JVPはこれまでに120社を立ち上げ、32社をイグジットさせた。この高い成功率の背景について、同社パートナーであるYonatan Machado氏は、アーリーステージ企業のインキュベーターが果たす役割が大きいと話す。インキュベーターは免許制で、対象企業1社につきインキュベーターが10万ドル、政府が60万ドルを出資する。JVPのインキュベーター「サイバーラボ」は学界、多国籍企業、軍のエリートコンピューター部門出身の専門家を集めたチームで、主にサイバーセキュリティーやビッグデータ、ストレージなどに焦点を当てて将来性のある技術やシード、スタートアップを発見し、育成する。

有力なVCなどが集まる拠点JPV Medeia Quarterを構築

有力なVCなどが集まる拠点JPV Medeia Quarterを構築

シードステージから大企業への過程で一貫した投資
シードステージから大企業への過程で一貫した投資

「平均的には例年4、5社をピックアップして当初の出資金70万ドルにさらに当社が80万ドルを加えて2~3年育成し、そのうち3、4社に300万~900万ドルを投資。さらに1~2年後にそのうち1、2社が1000万~3000万ドルの資金を得るイメージです。初期は手間がかかる上に利益が出ないためリスクが大きいものの、一定時期まできちんと育てると大きなリターンが見込めます。当社は多くのファンドで初期段階から大企業のレベルになっても投資を続け、収穫の最大値化に努めています」

JVPが手がけたCyberArk(サイバーアーク)はその好例だ。立ち上げから10年後、投資家たちはサイバーアークを売却したがったが、JVPはまだ成長が見込めると判断し、ゴールドマンサックスと2000万ドルずつ出して同社を買い取って投資を続けた。その後、スノーデンの告発やソニー・ピクチャーズへのサイバー攻撃などが発生したことでサイバーセキュリティー強化の機運が高まるとともに企業価値は爆発的に増加。2014年のIPOによりばく大な利益を上げることができた。イスラエルのスタートアップ企業にとって、成長の全段階に寄り添う頼もしい存在だと言える。

JVPの投資モデルについて解説するMachado氏

JVPの投資モデルについて解説するMachado氏

BREAKTIME
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日本×イスラエル キーパーソンに会う2
イスラエルは何事もスピーディーだが粘り強さがない。日本はその逆。だからイスラエルと日本がうまく協業すれば最強になる
YASUKAWA EUROPE TECHNOROGY President & CEO Arik Dan氏

イスラエルでの最後の夜、安川電機のイスラエル現地法人、YASUKAWA EUROPE TECHNOLOGYの代表、Arik Dan氏がディナーの時間を作ってくれた。同氏はイスラエル国防軍の精鋭部隊8200部隊出身で、名門テクニオン大学で航空宇宙工学を修め、慶應大学ビジネススクールでMBAを取得。外交官などを経て、18年前に現職となった。事業は研究開発、ヨーロッパ市場への販売、投資、半導体生産の4つ。イスラエル企業と日本企業の違いを冷静に見ている。

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「イスラエル企業は何事もスピーディーに進めるが粘り強さがなく我慢ができない。一方、日本企業はスピードはないが粘り強く着実な成果を上げる。日本企業はエンジニアにもっと裁量を与えることでスピードは克服できます。イスラエル企業と日本企業が補完し合えば理想的な会社になるのです」

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07 あなたも次世代の有名企業の役員に
07 あなたも次世代の有名企業の役員に
OurCrowd(アワクラウド) President, CIO Andy Kaye
社長兼CIOのAndy Kaye氏と

社長兼CIOのAndy Kaye氏と

クラウドファンディングとVCを融合
クラウドファンディングとVCを融合

JVPの隣のビルに入居しているOurCrowd(アワクラウド)は、クラウドファンディングとVC(ベンチャーキャピタル)を融合させ、有望なスタートアップへの個人投資を集める手法を確立した会社。世界8都市に拠点を構え、112カ国・約2万人の投資家コミュニティーを形成している。元々アワクラウド自体もスタートアップとして起業。これまで7200の企業を吟味し、120のファンドを展開。4億5000万ドルを集め、15社をイグジットまで持っていった。投資対象の企業は医療、サイバーセキュリティー、自動車、フィンテックなど幅広い領域にわたり、70%がイスラエルの企業、30%がイスラエル以外の外国企業となっている。

個人投資家はアワクラウドのWebサイトで投資対象の企業のポートフォリオを確認することができる。アワクラウドは個人投資家の信用調査を行い、数百万ドルの自由に使える資金があるかなどを確認したうえで、スタートアップなら1万ドル、ファンドなら5万ドルの最低金額で投資を受け付ける。アワクラウドは2%のマネジメント料と20%の成功報酬を取るが、アワクラウド自身も必ず5%の投資を行い、対象企業の成長を後押しする。

また、戦略的パートナーとして多数の多国籍企業をサポートしており、ホンダやデンソーといった日本企業ともつながりが深い。

古い建物を見事に活用した美しいオフィス

古い建物を見事に活用した美しいオフィス

スタートアップと個人投資家をつなぐ
スタートアップと個人投資家をつなぐ

社長兼CIOのAndy Kaye氏はクラウドファンディングとVCが融合する利点は大きく2つあると解説する。

「第1にスタートアップと世界の投資家をつなげられる点。例えば日本の市場に興味があるスタートアップを日本にいる個人投資家に紹介することで、双方にビジネスチャンスをもたらすことができます。第2にスタートアップと多国籍企業をつなげられる点。好条件のバイアウトや提携の機会を創出することができます」

クラウドファンディングのハイブリッド型VCは他にもいくつか存在するが、デュー・デリジェンスと投資管理を高度に両立させているのは現状でアワクラウドだけだとKaye氏は自負する。あなたもアワクラウドを利用したスタートアップへの投資で、未来の有名企業の役員になれるかもしれない。

国際的な投資銀行で豊富な経験を持つKaye氏

国際的な投資銀行で豊富な経験を持つKaye氏

BREAKTIME
07 あなたも次世代の有名企業の役員に
日本×イスラエルのネットワークを体感する
日本企業の拠点は3年で3倍にイスラエルで広がる親日の輪

日本イスラエル商工会議所が主催するイブニング・レセプションがテルアビブのレクサス・ギャラリーで開かれた。日本とイスラエルを橋渡しする在イスラエルの様々な企業、視察に訪れている日本企業の開発部門の方らが多数集い、情報交換を行うことができた。2014年の安倍首相とネタニヤフ首相の相互訪問以降、日本とイスラエルの関係は急激に深まっているという。イスラエルにある日本企業の拠点数は3年前の約20から3倍の約60に急増。イスラエルから日本への観光客も3倍に増え、和食レストランもブームのように続々とオープンしている。6000人のユダヤ難民の命を救った杉原千畝のおかげで元々親日家の多いイスラエルだが、この数年は特に親日感情の広がりを感じるという声も多く聞かれた。日本とイスラエルは9000kmもの距離を感じさせない親密で良好な関係を築きつつある。

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08 スタートアップ6000社をネットワーク
08 スタートアップ6000社をネットワーク
sosa(ソーサ) Director of Marketing Gali Bloch Liran
マーケティングディレクターのGali Bloch Liran氏と

マーケティングディレクターのGali Bloch Liran氏と

「イスラエル発、世界へ」を実現する最先端ワークスペースが
「イスラエル発、世界へ」を実現する最先端ワークスペースが

イスラエルにはスタートアップを支援するコミュニティーが数多く存在する。なかでも最大規模を誇るのがイスラエル国内の大手VC(ベンチャーキャピタル)などにより2013年に設立され、テルアビブとニューヨークに拠点を構えるsosa(ソーサ)だ。テルアビブのオフィスは殺風景な倉庫風の建物。しかし中に一歩足を踏み入れれば、誰もが驚くはずだ。およそ1200m²のフロアはミッドセンチュリーのインテリアでまとめられたスタイリッシュな空間。まるでデザイナーズホテルのラウンジのようだ。ここでは様々なバックグラウンドを持つ人が、お気に入りの席で仕事をしている。

ソーサのネットワークには約6000のスタートアップが存在する。約150の投資家、VC、マイクロVC、コーポレートVC、サービスプロバイダがソーサに会員登録しており、50以上の多国籍企業がソーサとパートナー契約を結んでいる。そのリストにはIBMやGM、PayPalなどと一緒に伊藤忠やヤフージャパンといった日本企業の名も見つけることができた。

多種多様な業種業態のスタートアップがSOSAと密接につながっている

多種多様な業種業態のスタートアップがsosaと密接につながっている

スタートアップとVC、多国籍企業をつなぐ
スタートアップとVC、多国籍企業をつなぐ

「ソーサはスタートアップに対し法務、金融サービス、人材採用など必要な業務を円滑に行うためのサポートをするほか、彼らを投資家やVC、多国籍企業らとつなぎます」マーケティングディレクターのGali Bloch Liran氏は“一つずつ”と強調する。

「ソーサはスタートアップそれぞれが持つ技術やアイデアの可能性を見極め、ベストな相性と思われる投資家、そして多国籍企業に一つずつマッチングしていきます。イスラエルならではのエコシステムを最大限活用し、効率的でより強固なコネクションづくりに努めています」

イノベーションを望む様々なステークホルダーが日常的にコンタクトできる場がある意味は大きい。ネットワークが広がり、コラボレーションから思いがけない化学反応も起こり得る。オーストラリア政府関連の団体も会員として個室スペースに入居している。海外との経済的な結びつきを強化するために世界5カ所に開く窓口の1つとして、ソーサのこのユニークな環境が選ばれた形だ。

ソーサでは年間200を超えるスタートアップ支援のためのイベントや会合も開かれている。先端産業の“芽”を生み出す装置として、ソーサは最も進んでいる例の一つといえるだろう。

オフィスは誰もがうらやむ快適な環境

オフィスは誰もがうらやむ快適な環境

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蟹瀬'S EYE 蟹瀬'S EYE
蟹瀬'S EYE
蟹瀬'S EYE

イスラエルと聞くと日本では危険な「紛争地域」あるいは「3大宗教の聖地」というイメージが強い。しかし実際に足を踏み入れてみるとそこには世界の最先端を行くIT先進国があった。

成田空港からモスクワ経由で17時間余り。イスラエル第2の都市テルアビブで出会ったのは、気さくで話し出したら止まらない若き起業家たちと彼らを支えるベンチャーキャピタリストの面々。誰もが自信に満ちあふれている。それもそのはず、彼らのようなイスラエル発のベンチャーが遠く離れた私たちの生活を知らず知らずのうちに便利に変えているからだ。例えば、オフィスや自宅で使うパソコンの心臓部であるインテルプロセッサーの8割以上はイスラエルで設計・製造されている。ハイテク監視システムや自動運転、さらにはEV(電気自動車)の基幹技術でもイスラエルが世界をリード。日本でもすっかりおなじみになったドローンももともとはイスラエルで開発された偵察機の呼び名だ。米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏がイスラエルを投資拠点として絶賛しているのもうなずける。

今やその旺盛なベンチャー精神はテルアビブだけでなく伝統的大都市エルサレムにまで本拠地が広がっている。政府も積極的に後押ししている。取材中にもネタニヤフ首相が主催するクリーンエネルギーとスマートモビリティーに関する大イベントが開催され、30カ国以上から集まった起業家や投資家が熱心に意見交換をしていた。

そんなイスラエルの熱い起業家精神は一体どこから生まれてくるのか。取材先の誰もが異口同音に指摘したのは「失敗を恐れない教育」そして「スピード」だった。学校教育では自主自立の精神に基づいて徹底した議論と知的好奇心が育まれ、常に失敗を恐れないポジティブ思考に重点が置かれているという。「なぜ失敗したのかを考え、さらに上を目指すのです」そう語ったのはストアドットCOOのエレズ・ローバー氏。だがそれだけでは米国のシリコンバレーと大差がない。

実はイスラエルのIT産業急成長の背景には隠れた2つの要因がある。移民の存在と国軍の超エリート教育だ。

1948年の建国時のイスラエルの人口はわずか60万人。それが現在は868万人に急増している。欧州やロシアからのユダヤ人移民の大量流入によるもので、彼らが優秀な人材と社会の多様性をもたらしているのだ。

軍のITエリート教育も際立っている。インターネットの普及によって戦場がサイバー空間に広がっているからだ。イスラエルでは18歳になると男女を問わず兵役義務(男子3年、女子1年半)がある。エリートの選抜は16歳から既に始まっており、何段階もの厳しいテストを合格した者だけがサイバー諜報部門のトップ集団「8200部隊」に配属されるのだ。「タルピオット」と呼ばれる最先端軍事技術の研究・開発を担うスーパーエリート育成プログラムもある。そんな超エリートの若者たちが除隊後に次々とITベンチャーを立ち上げるのだから、世界の注目を集めるのは当然だろう。

エリート部隊経験者でなくても起業して成功している例も数多い。イスラエル人(25歳から64歳)の49.9%の最終学歴が大学というハイレベルな人材の蓄積があるからだろう。

現地で会った企業トップの中にも8200部隊やタルピオットの経験者が複数含まれていた。しかもこの最強ネットワークは今や世界に広がっている。帰国後、対談したイスラエルの某サイバーセキュリティー企業トップも5年間8200部隊に所属していたと話してくれた。

では彼らの目に日本企業はどのように映っているのだろうか。日本の法律事務所で5年間働いたことがあるバーテックス・ベンチャーズ社ゼネラルパートナーのデビッド・ヘラー氏は「総じて失敗を恐れて慎重であるためスピード感が不足している」と分析する。ただ拙速は禁物。イスラエルでは毎年大量のベンチャー企業が生まれているので、投資や提携先の将来性をしっかりと見極めることが必要だ。

日本のビジネスマンや投資家はまずイスラエルの現状を自らの目で確かめることから始めてみてはどうか。そう実感しながら、昼下がりのテルアビブを後にした。

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ADVANCED INDUSTRIES 2017 | SEMINAR REVIEW  - 中東のシリコンバレー、イスラエル進出への第一歩 - 日経ビジネスオンラインSpecial
主催:イスラエル大使館 経済/協力:日経BP総研
主催:イスラエル大使館 経済/協力:日経BP総研

お問い合わせ先:イスラエル大使館 経済部
Israeljapaneconomy@israeltrade.gov.il