アスリートに聞く Vol.1

二子山親方(元・大関雅山) 大相撲

ケガと闘いながら現役にこだわった土俵人生

日本相撲協会健康保険組合が力士の健康を強力にサポート
問題は力士の病気に対する関心の低さ

——相撲協会は独自で健康保険組合を持っていますが、メリットは感じますか?

 日本相撲協会健康保険組合で年に2回、健康診断をしてもらっていますし、国技館の中には相撲診療所もありますので、非常に心強いことです。当たり前のように思っている力士も多いかもしれませんが、アスリートの中では恵まれた環境だと思います。

 しかし問題は、力士の病気に対する関心が低いことです。そのため、健康診断の結果が悪くても、そのままにしてさらに悪化するといったケースが多いのです。それぞれの病気に対する意識を変えていく必要があると感じています。

 また、現役の力士だけでなく、引退後に親方となった人間にとっても、健康保険組合の手厚いサポートを受けられることは、健康で安定した生活を送る上で非常にありがたいですね。

——競技の性質からも病気の予防は難しいのでしょうか?

 どの部屋も栄養のバランスを考えて食事面には気を配っているのですが、若い衆の部屋を覗くと、枕元には清涼飲料水やジュースの大きなペットボトルと、スナック菓子などの袋があるという光景を目にします。身体を大きくするために食べる必要もありますし、お腹も空くのだと思いますが、そういうのを見ると、これは病気になってもおかしくないなと思ってしまいます。

 早朝から何も食べずに稽古して、朝昼を兼ねた食事を一気にとるので、吸収率がとてもよく、さらにその後は昼寝をするので、どんどん身体が大きくなるわけです。健康によいという生活ではありませんが、それでも、一生懸命に稽古して、健康にも気をつけている力士の中には、全く病気にはならずに出世できている人間も少なくはありません。ただ食べて飲んでいればいいということではないはずです。私は相撲を始めた中学時代の師匠に、「ジュース類は飲むな」と教わってから、一切飲んでいません。

水戸出身の力士を育てること
そして病気の予防にも意識を向けさせる指導を

——今は、どのような毎日を過ごされているのですか?

 基本的には稽古場に行って、稽古を指導して、帰るという生活です。稽古後の食事を部屋でとることはなく、その後は減量のためのウォーキングを日課としています。1日7000〜8000歩のウォーキングと普段の生活の中でのプラス5000歩で、大体1日に1万2000〜1万3000歩は歩いています。夜はお酒も飲みますし肉でも何でも好きなものを食べますが、ごはんや麺類、パンなどの炭水化物は控えるように心がけています。

——引退時は体重190キロくらいだったかと記憶していますが。

 今は140キロくらいまで落ちました。50キロ落としましたね。力士時代の食生活とは逆で、吸収率を考えて、ウォーキングの後は少なくとも2時間くらいは何も食べないようにしています。

——引退後の体調管理にもやはり意思の強さが出ますね。

 私は一度決めたらなかなか変えませんね。もちろん、お酒を飲んだ翌日など、今日はウォーキングに行きたくないと思うこともありますよ(笑)。でも準備をして一歩踏み出せば何とかできる。その一歩が大事なのだと思いますね。

——最後に今後の抱負をお聞かせいただけますか?

 今、私の出身である水戸出身の力士がいませんので、是非とも水戸出身の力士を誕生させるのが夢です。

 また、力士にケガは付き物ですが、いくら力士であっても病気はある程度は予防できると思いますので、2食の食事による栄養面でのサポートと同時に、ジュース類や間食に関しても、摂取するものの質や時間を指導していきたいと思っています。また、半年に1度、健康診断を受けられるという恵まれた環境を活かして、数値にも目を通して、本人に意識を持たせると同時に、改善できるものは徹底的に改善させるということまでやっていければ理想的ですね。

二子山親方(元・大関雅山)

1977年7月28日生まれ。茨城県水戸市出身。1998年、当時の武蔵川部屋(現・藤島部屋)に入門。同年7月場所に幕下付け出しで初土俵を踏む。2場所連続幕下優勝で同年11月場所に十両に昇進。初土俵から4場所連続優勝という記録を作り、99年3月場所に新入幕。2000年5月場所後に大関に昇進。その後、ケガに悩まされながらも現役にこだわり続けたが、13年3月場所後に引退。