アスリートに聞く Vol.6

伊藤 正樹 選手 トランポリン

宙を舞う楽しさを、美しい演技で魅せる

 空中高く舞い上がり、美しい演技を次々と繰り出すトランポリン。ビル3階に相当する高さまで跳ねる男・伊藤正樹選手は、圧倒的な「跳躍力」と精巧な「演技力」でこれまでに全日本トランポリン競技選手権で5度の優勝を果たし、日本トランポリン界を牽引する存在として期待されている。静かな口調ながら、「目標はオリンピックでの金メダル」と力強く言い切る伊藤選手に、トランポリンの魅力や競技にかける思い、トレーニングや体調管理などについて聞いた。

史上最年少の8歳で全日本選手権に出場

——わずか8歳でオリンピック強化指定選手に選ばれましたが、当時はどんな気持ちでしたか。

 小学3年生で全日本選手権に最年少選手として出場したのですが、順位は50位くらいで、いつかは上位に入りたいというのが当時の目標でした。オリンピックに対してもそれほど現実感はなく、意識していなかったと思います。ただ、同年代のオリンピック強化指定選手はいなかったので、どうしても周囲からは注目されます。小学生の出場する大会では勝って当然と見られていたため重圧は感じていましたが、同時に同年代の選手には負けたくないという思いも強くありました。

——いつごろからオリンピックを意識するようになったのですか。

 トランポリンがオリンピックの正式種目になった2000年のシドニーで、初めてトップ選手の演技を見て、世界のレベルの高さを知りました。このころから世界で戦える選手になりたいという意識が強くなり、それまで漠然としたものでしかなかったオリンピックに自分も出場したいと思うようになりました。

高く跳ぶために必要なのは、
瞬時のタイミングを捉える研ぎ澄まされた感覚

——そもそもトランポリンを始められたきっかけは何だったのでしょうか。

 2歳のころ、姉が通っていたトランポリン教室について行って跳ばせてもらったのがきっかけです。ほかに水泳や体操も習ったのですが、その中で一番面白かったトランポリンを続けることにしました。トランポリンで空中に浮く感覚は、日常生活では味わえないものですし、高く跳んだり、技を覚えることが楽しくて仕方なかったのを覚えています。競技としてのトランポリンはとてもハードな上、結果を出すためには厳しい練習と努力が必要になりますが、その楽しさは現在も変わりませんね。

——伊藤選手の跳躍力は世界一ともいわれますが、高く跳ぶ秘訣を教えてください。

 トランポリンで高く跳ぶためには、着地からコンマ何秒かの間に、反発するバネの力を上手く利用するところがポイントです。選手が弾むトランポリンの布部分をベッドと呼ぶのですが、そのベッドが跳ね返ってくる瞬間に上手く乗ることができる選手ほど、高く跳ぶことができます。垂直跳びが得意でもトランポリンで高く跳べるとは限りません。パワーではなく、瞬時のタイミングを捉える研ぎ澄まされた感覚が大切なんです。筋力トレーニングでもパワー系のものは行わず、腹筋や背筋といった体幹を鍛えるようにしています。

——空中姿勢の美しさも高く評価されています。何か特別なイメージトレーニングをしているのでしょうか。

 幼いときに七田式というイメージを豊かにすることを学ぶ教室に通っていて、そこで身につけたイメージ力が今も役立っているように思います。トランポリンは高さに加えて、空中で体をひねったり、回転させたりして技の難易度や美しさを競います。頭の中で空中姿勢を想像してイメージを膨らませ、それと合うように演技をするので、成功するイメージが上手く思い描けなければ、よい演技はできません。ひねりが得意な人もいれば、回転が得意な人もいて、選手それぞれ思い描くイメージは異なるので、演技も異なったものになります。そこが感覚競技といわれるトランポリンの面白さでもあります。僕は本番前だけでなく練習中から常に成功する姿を繰り返しイメージするように心がけています。

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