コラム Vol.1

データで見るニッポンの医療費①

少子高齢化による人口構成の歪みで
国民皆保険は危機的状況

現役世代の医療費は年間約13万円、
80〜89歳は年間約100万円

 バブルの崩壊以降、国民所得も伸びなくなった。2011年度の医療費の総額(国民医療費)は38兆5850億円、前年度の37兆4202億円に比べ1兆1648億円、3.1%の増加。国民所得に対する比率は、2009年度に初めて10%を超え、2010年度は10.62%、2011年度は11.13%に上昇した。

 「年齢階級別1人当たり医療費(2011年度)」(図3)で、現役世代のボリュームゾーンである団塊ジュニア世代(40〜44歳)に着目すると、彼ら自身の医療費は年間13.2万円程度であるのに対して、その親である団塊世代(65〜69歳)は年間45.4万円が必要。さらに、団塊ジュニアの祖父母世代(80〜89歳)は年間100万円近くを必要とする。社会コストは階級別単価に階級別人口をかけた総和なので、多額の医療費を必要とする高齢者の比率が増えるほど、社会コストは雪だるま式に膨らみ、現役世代に雪崩のごとくのしかかってくる。

わが国の平均寿命は世界トップクラスであり、社会コストもそれに応じて大規模となる。世界に誇る長寿社会を支えてきたのが「国民皆保険制度」だが、今後も安心して良質な医療を受けられるようにするには、この制度を維持できる安定した財源確保と、「皆保険」の名にふさわしい透明性を備えた財源運用が必要不可欠である。

 財源確保の手段の一つとして挙げられるのが、本人負担率の引き上げである。これまで政府は、たびたび医療保険制度を見直してきた。かつて「若人」の負担率は国民健康保険(国保)以外の被用者保険(被用者本人)では1割だったが、2003年4月からは国保も被用者保険も全て3割に統一されている(図4)。「老人」も2001年1月に定額制から定率に変わったが、70〜74歳の窓口負担の割合についても、今年3月まで特例措置で1割とされるなど、老人への優遇が目立っていた。今後は、誰がどこまで負担するのか、公平性や持続可能性の観点から本人負担を考える必要があるだろう。

医療給付費も20年前の約2倍
2025年度には約53兆円まで増えると推計

 医療給付費(公的医療保険から医療機関や保険薬局などに支払う医療費)の増加も著しい。図5は年金、医療、福祉などの社会保障給付費の推移を表したものだが、20年前と比べると年金も医療も給付費は2倍近く増大している。1人当たりの医療給付費もこれに呼応して増えているが、1人当たりの医療費は年代による格差が極めて大きく、全世代が等しく恩恵を受けているわけではない。しかも、政府は2011年度に約34兆円だった医療給付費が、2025年度には約53兆円まで増えると推計している。

こうした状況を踏まえ、政府は社会保障の安定財源確保に向けた「社会保障・税一体改革」をスタートさせたが、改革の内容次第では現役世代の更なる負担増を招く可能性がある。既に、企業や業界単位で加盟する健康保険組合(健保組合)の負担は大きく膨らんでいる。前期高齢者納付金や後期高齢者支援金という形で、高齢者の医療費を拠出しているからだ。

 どのように高齢者世代・現役世代を通じた公平なルールで保険料・税を集めるか——。持続可能な「国民皆保険制度」にするための新たな仕組み作りが、今求められている。

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