コラム Vol.2

データで見るニッポンの医療費②

良質な医療を持続するために
欠かせない国民一人ひとりの意識改革

「セルフメディケーション」で生活習慣病を防ぐ

 今後も生活習慣病が増加し、さらに高齢期における介護や生活支援などの多様なニーズが増大していく中では、公的保険制度のみの対応では限界が生じる可能性が高い。そこで重要と考えられるのが、個人や保険者が積極的に健康増進・予防を図る「セルフメディケーション」の推進である。この「セルフメディケーション」推進のための環境整備にもつながるとして、経済産業省は官民一体の「次世代ヘルスケア産業協議会」を発足し、2013年末から検討を重ねている。公的保険内の医療・介護サービスの持続可能性を確保するとともに、公的保険外の予防・健康管理サービス産業を活性化させることにより、国民の健康・予防ニーズを満たしつつ、経済成長につなげていくのが狙いだ。

 2014年6月に発表された同協議会の中間とりまとめによれば、公的保険外サービスを活用した予防・健康管理に大胆にシフトさせることにより、慢性期医療(生活習慣病関連)にかかる医療費を約9.8兆円削減可能としている。この試みが成功すれば、「国民の健康増進」「医療費削減」「新産業の創出」の一石三鳥が実現することになる。

更なる医療費の削減に向け、
かかりつけ医やジェネリック医薬品の活用も欠かせない

 さらに考慮すべき課題は、医療機関の適切な使い分けである。日本では、特に高度医療が必要でない場合でも、大学病院等の専門医療機関への受診が多い。このような不釣り合いな医療は、患者と医師の双方にとって不幸を招く。なぜなら病院側は受け入れた以上、期待される医療サービスを提供するし、患者自身は不必要な検査や過剰な治療を受けることにもなり兼ねず、結果として医療費負担の増加につながる可能性がある。加えて、本当にその検査や治療が必要な患者が後回しになってしまう懸念も否定できない。こうした弊害があるがゆえに、欧米の一部では、ホームドクターの紹介状がないと大学病院等を受診できない制度になっている。

 症状に応じて、適切な医療機関を選ぶことが医療費の軽減にも結び付く。例えば、ちょっとした風邪や体調不良などは、まず近くの診療所やかかりつけ医に相談することが望ましい。かかりつけ医が入院や手術が必要と判断すれば、地域の中核病院を紹介する。特殊な検査や治療が必要な場合は、大学病院を紹介するといったシステムがきちんと運用されれば、無駄な検査も減少する。それぞれの医療機関が役割ごとに力を発揮し、補完し合うことでリソースを適正に活用できる。必要以上に検査機器を揃えたり、設備投資をしなくともよくなれば、コスト削減になり、医療費の抑制にもつながっていく。

 日本医師会総合政策研究機構が実施した調査では、「病気や健康度を総合的に診療してくれる身近なかかりつけの医師がいますか」という質問に対し、「いる」と回答した国民は54.3%にとどまっている。また、年齢が下がるほどかかりつけ医がいる割合が低くなる傾向が見られた(図4)。現役世代は特に意識して、かかりつけ医を持つことが必要だ。

医療費抑制のためには、ジェネリック医薬品の普及も課題の一つとなっている。ジェネリック医薬品は、先発医薬品(新薬)の特許期間が過ぎた後に、安価に製造・販売できる後発医薬品のこと。成分や効果などが新薬と同等でありながら、薬価を低く抑えられることから、日本でも注目されているが、欧米諸外国と比べると普及率は依然として低い。ジェネリック医薬品の使用率(数量シェア)を見た場合、アメリカは90%以上、ドイツは80%以上、イギリスは70%以上、フランスとスペインも60%以上を達成している。

 一方、厚生労働省によれば、わが国におけるジェネリック医薬品の数量シェアは2012年度末で44.8%(推計値)にとどまっている。このため、厚生労働省は2013年4月、ジェネリック医薬品の使用促進に向けた新たな目標となるロードマップを発表し、2013年度から2017年度末までの5年間に数量シェアで「60%以上」を目指すとしている。

 生活習慣病を予防するためのセルフメディケーションをはじめ、症状に応じた適切な医療機関の選択やジェネリック医薬品の活用など、あらゆるフェーズで見直しを図ることが、国民の健康増進や国民医療費の削減につながっていく。医療制度改革は他人事ではない。私たち国民一人ひとりが、この問題を自分のものとして向き合っていくことが何よりも重要だ。

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