コラム Vol.5

日本総研・西沢和彦氏が語る 「社会保障・税の一体改革」の深層②

現役世代に過重な負担を強いる
「前期高齢者医療」の問題点

 現在、政府が進める医療保険制度改革で、論議の中心となっているのが「後期高齢者医療制度」である。一方、65〜74歳が対象の「前期高齢者医療」が話題に上ることは少ない。

 しかし、「前期高齢者医療」の仕組みも大きな問題を抱えている。現役世代が負担する前期高齢者納付金が年々上昇し、健保組合などの被用者保険の財政状況を大きく圧迫しているからだ。シリーズ第2回の今回は、「前期高齢者医療」のどこに問題があるのか、日本総合研究所調査部上席主任研究員の西沢和彦氏に聞いた。

著しく上昇している前期高齢者納付金額

日本総合研究所調査部上席主任研究員
西沢和彦氏

 高齢化に伴う医療費の増大が見込まれる中で、75歳以上の高齢者等を対象とした後期高齢者医療制度が2008年4月から施行された。併せて、保険者間で65〜74歳の高齢者が偏在することによる医療費負担の不均衡を調整するため、各保険者の加入者数に応じた財政調整の仕組みが導入されている。

 わが国は、国民健康保険(国保)と被用者保険(健保組合、協会けんぽなど)の2本立てで国民皆保険を実現しているが、相対的に所得が高く医療費の低い現役世代は被用者保険に多く加入する一方、退職して所得が下がり医療費が高い高齢期になると国保に加入するという構造的な課題がある。高齢者医療を社会全体で支える観点から、後期高齢者医療制度と前期高齢者にかかる財政調整がスタートしたわけだ。

 このうち後期高齢者医療制度については各保険者の負担割合が論議の的となっているが、前期高齢者にかかる負担割合の問題は、あまり論議されていない。しかし、前期高齢者医療に関する財政調整についてもその仕組みを根本的に見直すべきだろう。高齢者の増加に伴い、健保組合などが負担する前期高齢者納付金が、その財政状況を圧迫する要因の一つとなっていることに加え、団塊の世代が前期高齢者に続々と移行しているため(図1)、更なる納付金の増加が見込まれるからである。前期高齢者納付金が健保組合などに与えた影響は、後期高齢者医療に対する支援金と同等、もしくはそれ以上のものだったといえる。

前期高齢者医療における財政調整では、前期高齢者加入率が全国平均加入率(2014年度予算案ベースでは14.34%)を上回る保険者については交付金が支給され、下回る保険者については納付金を納める仕組みとなっている(図2)。健保組合や協会けんぽなどの前期高齢者加入率は低く、国保のそれは高いわけだから、この財政調整は現役世代から高齢者世代への「所得移転」とみなすことができる。

この財政調整がスタートして以来、健保組合をはじめとする被用者保険の前期高齢者納付金額は、著しく上昇しており(図3)、後期高齢者支援金とともに健保組合の財政状況を悪化させている。

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