コラム Vol.6

日本総研・西沢和彦氏が語る 「社会保障・税の一体改革」の深層③

後期高齢者支援金における
「全面総報酬割」導入案の背景と問題点

 健保組合などの被用者保険は、「前期高齢者医療」に対する納付金に加え、「後期高齢者医療制度」に対する支援金の拠出によっても財政的な圧迫を受けている。当初、各保険者が負担する後期高齢者支援金は、加入者数に応じて算定することになっていたが、現在、この支援金の新たな負担方法が検討されている。それが、加入者の所得に応じて算定する「総報酬割」の全面導入である。これにより、総じて健保組合や共済組合などは一層重い負担が求められることになる。一方、「全面総報酬割」の導入で浮いた国費は、赤字に陥っている国民健康保険(国保)の財政再建に充当する案が浮上している。

 シリーズ第3回となる今回は、後期高齢者支援金における「全面総報酬割」導入案の背景と問題点について、日本総合研究所調査部上席主任研究員の西沢和彦氏に聞いた。

「全面総報酬割」導入案で何を論点とすべきか

日本総合研究所調査部上席主任研究員
西沢和彦氏

 後期高齢者医療制度が実施される以前、75歳以上の高齢者は被用者保険(健保組合、協会けんぽなど)や国保など、各医療保険制度に加入していた。しかし、急速な高齢化の進行により高齢者医療費の増大が見込まれる中、「高齢者医療費の安定確保」「高齢者と現役世代の負担割合の明確化」「高齢者に対する医療・介護サービスの質の維持・向上」を図る目的で、75歳以上を対象とした独立の制度として、後期高齢者医療制度が創設された。

 後期高齢者医療制度の財源は、患者負担分のほか、現役世代からの後期高齢者支援金(4割)、公費(5割)、高齢者の保険料で構成されている。現役世代からの支援金は、当初、各保険者の加入者数に応じた負担、つまり「加入者割」で算定されていた。しかし2010年度からは、3分の1を加入者の所得に応じた「総報酬割」とし、3分の2を「加入者割」とする負担方法が導入されている。そして、政府が設置した高齢者医療制度改革会議(2009〜2010年)や社会保障制度改革国民会議(2012〜2013年、以下、国民会議)の中で、支援金に「全面総報酬割」を導入する提案がなされ、2013年に成立した社会保障改革プログラム法の柱の一つにもなっている。

 「全面総報酬割」への変更について、私は必ずしも反対ではない。例えば「加入者割」の場合、仮に加入者1人当たりの支援金を年間10万円とすると、年収1000万円の人であれば1%に過ぎないが、年収200万円の人なら5%を占める。それを「全面総報酬割」に変更し、その割合を仮に5%とすると、年収1000万円の人なら5万円、年収200万円の人は1万円となって、税でいう垂直的公平性に適う。

 こうした「全面総報酬割」を導入した場合、健保組合は約1400億円、共済組合は約900億円、現行より負担が増えると推計されている。逆に協会けんぽの負担は約2300億円減少する(表1)。協会けんぽの負担が減った分、協会けんぽに国が投入している国庫補助(国費)を削減し、それを国保の赤字とされる部分に充当しようというのが、現在、政府の中にある考えだ。

この「全面総報酬割」導入案で何が検討されるべきだろうか——。もちろん、これによって国保の赤字穴埋めが可能かどうかではない。論点とすべきは、健保組合などの負担増で国保の赤字を埋めることに合理性があるのか、そして国民皆保険制度を恒久的に維持していく上で妥当な方法であるかどうかである。

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