スペシャルレポート Vol.6

病気は「治す」から「防ぐ」時代

健診・人間ドックを上手に活かす

男性は「胃」「大腸」「前立腺」
女性は「乳房」「胃」「大腸」の検査を

 いざ、人間ドックを受けるとなると、オプションが多く何を選べばよいか迷うところだ。個人で負担する場合は費用との兼ね合いもあるので、費用対効果を考慮して検査項目を選定したい。

 国立がん研究センターがん対策情報センターによれば、死亡率が高いがんの部位は、男性では肺、胃、大腸、女性では大腸、肺、胃の順に多い。一方で、人間ドックで発見されたがんは、男性で胃、大腸、前立腺、女性で乳房、胃、大腸の順になっている(図2)。つまり、かかりやすいがんと見つけやすいがんにはズレがあるということだ。がんの検索では、まずは発見しやすいものを選ぶのがいいだろう。

「男性で年々発見される症例が増えている胃がんについては、内視鏡検査が望ましいが、まずは胃のX線検査でも構わない。ただし、胃がんの原因となるヘリコバクターピロリ菌の抗体検査が陽性の人や、過去のバリウム検査で何らかの指摘を受けたことがある人は、内視鏡検査を受けた方がいい。内視鏡検査が苦手という人は、X線検査と内視鏡検査を隔年で受けるという手もある」(伊藤氏)。

 日本人間ドック学会の2013年「人間ドックの現況」を見ると、胃がんの発見率は50歳代以上で急激に高くなる(図3)。胃がんは早期に発見できれば、体への負担が少ない内視鏡による手術を選ぶことができ、治癒も可能なことから、50歳以降はできるだけ内視鏡検査を受けるのがいいだろう。

 また、大腸がんは食事の欧米化、高齢化に伴い増えている。大腸がん検査では、便中の出血の有無を調べる「便潜血反応」が簡便な検査法として普及しているが、痔などの出血でも反応してしまうという課題がある。そのため、より正確に検査するなら、内視鏡検査が適している。「肛門から内視鏡を挿入する下部消化管内視鏡検査を敬遠する人は多い。最近では、体外からCTで撮影した画像をデジタル処理することで、大腸の仮想内視鏡画像を得られる大腸CT検査も出てきている。下部消化管内視鏡検査が苦手な人や、腸に狭窄や癒着があって内視鏡検査を受けづらい人はこうした検査を選ぶといい」と伊藤氏はアドバイスする。

 男性にとって重要なのが、加齢とともに増加する前立腺がんの検査だ。「前立腺がん検索では、前立腺がんの腫瘍マーカーを血液検査で測定するのに加え、腹部超音波検査で前立腺や周囲の臓器の状態を確認することが大切だ。腫瘍マーカーが低いだけでは前立腺がんでないと言い切れないからだ」と伊藤氏。加えて、「がんに関する腫瘍マーカーの多くは、ある程度がんが進行してから出てくるもので、早期がんの発見というよりは治療後の進行の度合いを把握するためのものと考えるべきだろう」と話す。

 女性で重要なのが、乳がん検査だ。図2で示したように、人間ドックでの乳がんの発見数は増加の一途をたどっている。漏れなく検査するには、「乳房触診」「乳房X線検査(マンモグラフィー)」「乳房超音波検査」の3種類を行うことが大切だ。「マンモグラフィーでは、乳がんの初期症状の一つである組織の小さな石灰化を見ることができる一方、乳腺が発達していると、しこりが検出しにくいことがある。超音波検査では、乳腺の状態や腫瘍の有無などを見ることができるが、マンモグラフィーで分かるような小さな石灰化は判別できない。それぞれの検査のメリット、デメリットを補完するためにも、これらの検査を合わせて行うことが求められる」(福井氏)。

 オプションとして加えるかどうかを悩む人が多いのが脳ドックだろう。脳ドックでは、磁気と電磁波で人体を輪切りの状態で撮影するMRIと、そのデータを元に血管の様子を見るMRAを使い、脳の血管の動脈硬化や、動脈瘤の有無などを検査する。動脈硬化の状態を知ることで、脳梗塞や動脈瘤の破裂といった重篤な状態を回避するための一助になると考えられている。しかし、脳ドックの効果については、専門家の中でも意見が分かれるところだ。福井氏は、「ごく小さな脳動脈瘤を発見した場合、将来破裂するかどうかが分からない動脈瘤の手術をするかどうかを思い悩む可能性がある」と脳ドックの課題を指摘する。一方、伊藤氏は「小さな動脈瘤が見つかった場合、すぐに手術する必要はない。血圧を下げる、血中脂質を低下させる食事に変えるなど、検査結果を生活習慣の改善につなげることができるので脳ドックを受けた方がよいのではないか。"爆弾"を抱えているからこそ、真剣に生活習慣の改善に取り組めるようになる」と脳ドックの意義を説明する。

 人間ドックを行う施設は多数あるが、施設を選ぶポイントは何か。「人間ドックで一番大事なのは、結果をどのように説明してもらい、その後の生活に活かせるようできるかだ。そのため、結果説明の際に漫然と数値や結果だけを話すのではなく、以前のデータを踏まえてどうなっているのか、その結果がもたらす意義、次に具体的に何をすればよいのかを示してくれる施設が望ましい」と福井氏。

 また日本人間ドック学会では、健診の質の確保や地域や職場との関係などを第三者評価して認証を与える制度がある。その「健診施設機能評価」認定を受けている施設であれば、質が担保できていると考えられる。認定施設については、日本人間ドック学会のホームページに認定施設一覧が掲載されている(http://www.ningen-dock.jp/list/func.php)ので、それを参考にするのもいいだろう。

 保健事業の一環として健保組合を中心に積極的に実施されている健診や人間ドックは、個々人の健康寿命の延伸のみならず、長期的に見て医療費削減につながる大きな可能性を秘めており、高齢化に伴い医療費の更なる増大が見込まれるわが国では、特に推進していくことが望まれている。

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