Mixed Realityから始まる産業革命

「AR匠RESIDENCE」の記者発表会をオンラインで開催長谷工リフォームのマンション点検の実務にMixed Realityを本格導入へ

2020年7月6日、「AR匠RESIDENCE」の記者発表会が行われた。Mixed Reality(MR、複合現実)が、いよいよマンションの点検業務に本格的に導入される。人手不足や熟練技術者の減少を克服する新たな仕組みとして期待されるほか、将来的には、蓄積されたデータの活用や他業界への展開などが見込まれ、業界内外から注目を集めている。発表会は、新型コロナウイルスの影響を勘案し、日本マイクロソフトのテレビ会議システム「 Microsoft Teams 」による完全オンライン形式での開催となった。

新たな記者発表会のスタイルに挑戦

当日の登壇者は3名。長谷工コーポレーションから取締役常務執行役員の楢岡祥之氏、アウトソーシングテクノロジーから代表取締役社長の茂手木雅樹氏、そして、日本マイクロソフトからは執行役員常務クラウド&ソリューション事業本部長兼ワークスタイル改革推進担当役員の手島主税氏だ。記者発表会はテレビ会議システム「 Microsoft Teams 」を用いてオンラインで行われた。遠隔地にいる3人の登壇者を、3台のコラボレーションデバイス「 Surface Hub 2S 」が等身大にスタジオで映し出し、通常の記者発表会に近い臨場感を演出。メディア関係者は、自宅など遠隔地から発表会に参加した。通常の記者発表会と同様、プレゼンテーションがデバイスの画面上で展開され、質疑応答も Microsoft Teams のチャット機能を使って実現。収集した質疑を司会者が登壇者に振ることで成立した。コロナ禍でも安全、快適に実施できる新たな発表会のスタイルを提案した。

記者発表会はテレビ会議システム「 Microsoft Teams 」による完全オンライン形式で実施された

長谷工リフォームのマンション点検現場に7月から本格導入

株式会社長谷工コーポレーション
取締役常務執行役員
楢岡 祥之 氏

記者発表会の冒頭、まず楢岡氏が分譲マンションの現状について解説した。「品質水準への要求が高まっている半面、現場での仕事量は増え、確かな技術を持つ熟練技術者の高齢化や減少が進んでいます。AR匠RESIDENCEは、高まりつつある現場の負担を軽減するために開発されました。MRを活用することで、技術者の生産性が飛躍的に向上すると考えています」(楢岡氏)。

AR匠とはMR(Mixed Reality)技術の活用で、現場作業の生産性向上、デジタル化を実現するDX(デジタルトランスフォーメーション)プラットフォームだ。統合プラットフォーム「AR匠MASTER」に、「AR匠RESIDENCE」を組み合わせることで、建設・不動産業界における打診検査への活用が実現できるほか、新規MR開発、「AR匠MASTER」をベースとしたカスタマイズも可能となる。

今回発表されたAR匠RESIDENCEは、AR匠MASTERにアドオン導入できるもので、建設・不動産業界での「外壁検査」に最適な建物点検・報告ソリューションとして活用できる。これまで2名で行っていた外壁点検業務を1名で行うことが可能となり、さらに報告書作成が自動化されることで生産性向上が期待される。

AR匠RESIDENCEは、今年7月から長谷工リフォームが行っているマンションの大規模修繕に向けた事前のマンション点検の現場に順次投入される。技術者から寄せられるフィードバックをもとに、操作感の改善や機能強化などに努めていくという。

大型マンションの2割以上へ普及を目指す

株式会社アウトソーシングテクノロジー
代表取締役社長
茂手木 雅樹 氏

MRがもたらす効果は多々あるが、その核心は大きく2つに集約されると楢岡氏は語る。位置情報の活用と、遠隔コミュニケーションだ。遠隔地にいる技術者が同じ3Dモデルを共有し、詳細かつ濃密なやり取りが可能になる。
近年、優れたノウハウを持つ熟練技術者が減少し、個々の現場に派遣することが難しくなった。そこで、例えば、経験の浅い技術者を現地に派遣して検査業務を進め、それを熟練技術者が遠隔地からフォローしたり、現場の要請に基づいて指示やアドバイスを出すような活用法が考えられる。

このような仕組みが確立されれば、熟練技術者のノウハウを多数の現場に展開できるとともに、若い技術者は作業しながら熟練者の技術を学べるようになる。実務の効率化と人材育成の2つの観点から、有意義な施策となろう。
また、AR匠RESIDENCEが普及するにつれ、マンションの外壁検査に関するさまざまなデータが蓄積されていく。将来的には、こうしたデータを検査業務の効率化に生かすとともに、マンション建設全般の価値向上にもつなげていきたいと語った。

一方、茂手木氏は、別の視点からMRの付加価値を訴える。「優れた技術者の知識やノウハウを、デバイスやツールのアルゴリズムに反映させることで、経験の浅い技術者でも熟練者と同等の作業が可能になります。AR匠RESIDENCEとは、まさにその機能を備えたシステムであり、人手不足を解消する仕組みとして大いに期待しています」(茂手木氏)
今後、MRを用いたイノベーションを、建設業界だけでなく、製造、医薬、通信、ヘルスケアなどを含む7つの業界に広げていきたいという。すでに道路インフラの劣化検査に応用する実証実験などを進め、上々の成果を得ている。

参加した記者からAR匠RESIDENCEの売上目標を問われ、茂手木氏は「10階建て以上、100戸規模の大型マンションを前提に、日本には6.5万棟ほどの大型マンションがあると想定しています。まずはその2割以上の点検作業にAR匠RESIDENCEを導入したい」と語った。

コロナで2年分のデジタル革新が進行

日本マイクロソフト株式会社
執行役員 常務
クラウド&ソリューション事業本部長
手島 主税 氏

日本マイクロソフトの手島氏からは、AR匠RESIDENCEで使用されるデバイス「 HoloLens 2 」の特徴と可能性について語られた。
HoloLens 2 は、MRを体験するためのヘッドマウント・ディスプレイだ。デバイスの中にCPU、電源、基本ソフト、通信機能のすべてを内蔵し、コンピューターと接続せずに単体で使用できる。MRを体験しながら自由に移動したり、ケーブルなどを気にせず両手で作業できるのが特徴だ。軽量かつスタイリッシュで、長時間装着しても疲れにくい。
「新型コロナウイルスの影響で、MR関連の問い合わせが以前の3倍以上に跳ね上がりました。この2カ月間で、一気に2年分のデジタル革新が進んだように感じます」(手島氏)。

MRへのニーズはますます拡大することが予想される。場所や距離の条件を飛び越え、人と人がつながる新しいワークスタイルが広がっていく。コロナ禍における非接触社会においては、なおさら HoloLens 2 への期待も高まるであろう。
こうした取り組みが普及すればさまざまなデータが集まるようになる。そのデータを多角的に分析することで新たな知見が生み出され、業務の革新も進む。このサイクルを、日本マイクロソフトは「デジタルフィードバックループ」と呼んだ。
このデジタルフィードバックループをさまざまな業界や企業で創出してもらうため、日本マイクロソフトは今後も支援を強化していくと語り、オンライン記者発表会を締めくくった。

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「AR匠RESIDENCE」の記者発表会をオンラインで開催 長谷工リフォームのマンション点検の実務にMixed Realityを本格導入へ
■ 新たな記者発表会のスタイルに挑戦
■ 長谷工リフォームのマンション点検現場に7月から本格導入
■ 大型マンションの2割以上へ普及を目指す
■ コロナで2年分のデジタル革新が進行

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