リアルな世界にデジタル・グラフィックをオーバーレイできる、Mixed Reality (複合現実)の具現化に成功した Microsoft HoloLens 。さまざまなビジネスの場で活用されることが期待できる同製品について、企業はどう見ているのか? 日経BPコンサルティングでは、このデバイスに対する期待や活用用途についてのオンラインアンケート調査を実施。アンケートの回答から見えてくる企業の期待と課題は何か?
本アンケート調査は2017年4月に実施。従業員3000人以上の企業における課長クラス以上の298人の回答を分析した。回答者のうち約半数が製造業に勤務している。中でも1万人以上の大企業からの回答が主となった。また、回答者の地位や役職については、部長クラス・役員クラスの回答も3割以上見受けられた。彼らはどのようなテクノロジに興味を持っているのだろうか?
グラフは、アンケート結果の上位5項目を抜粋したもの。「 AR・MR・VR 」は、AI と IoT に次ぐ関心の高さが示された。また、「 AR・MR・VR 」に高い関心を見せた業種は、「個人向けサービス業(旅行・娯楽・医療など)」「建設・不動産」「事業所向けサービス業(SIerなど)」という結果になった。「 AR・MR・VR 」の分野に様々な業界から注目が集まっていることが伺える。次に、その分野で認知している製品について聞いてみた。
様々な AR・MR・VR 関連のデバイスについて認知度を調査したところ、回答者の約4割が Microsoft HoloLens を知っているという結果になった。日本での発売が2017年初頭だったことをふまえても、高い認知度だ。なお、40.9%という数値は全回答中で第2位となる。第1位は著名なゲーム機器の VR システムだった。
では、Microsoft HoloLens そのものについては、どの程度理解が進んでいるのだろう? 認知されている点として、最も声が多かったのは「新しい利用用途を開拓する可能性がある」点。ビジネス用途における Microsoft HoloLens への企業の高い期待が伺える結果となった。また、単独動作するデバイスであることも認知されている。具体的な利用用途についても、特に建築関係や医療関係での活用に関心が多く寄せられた。また、遠隔地とのコラボレーションの用途においても期待が高まっている。
一方、デバイスに対する疑問や懸念も聞いてみることにした。その結果として、Microsoft HoloLens を「どう見えるのか?」「どう使うのか?」「どう使われているのか?」の順で回答が多かった。Microsoft HoloLens は現在品川のマイクロソフト本社で体験ができるが、今後はより広範な場所で、簡便に見え方・操作方法の体験ができることが望まれていると言える。また、「他社製品との差異」についても関心が高く、既存市場の中で唯一 Mixed Reality を具現化している、 Microsoft HoloLens のポテンシャルの高さに興味を持っていることが目立つ結果となった。
Microsoft HoloLens のポテンシャルはどの分野で活かせるのか? 分野別の活用可能性を聞いた設問では「イベント・アミューズメントパークでのエンタテイメント」が64.4ポイントを獲得し、トップ回答となったが、その他の回答も大きなポイントを集めた。医療分野や各種のトレーニングや研修、そして博物館など展示施設での利用の他に、建築・設計分野においても有効活用できるのでは? という期待が大きいことがわかる。Microsoft HoloLens は、あらゆるビジネスシーンでの活用が期待されているデバイスと言える。
次に、「実際に自社で導入するにはどうするか」という具体的フェーズに踏み込んでみる。
Microsoft HoloLens を導入する場合の形式について回答を募ったところ、「必要なアプリケーションがインストールされた状態」と「業務に沿った設定がアプリケーション側で完了している状態」の声が目立った。企業の期待としては"アプリケーション開発は極力省力化し、このデバイスを用いたビジネスそのものに注力したい"意向が伺える。とにかく導入次第すぐに活用し、ビジネスの幅を広げたいと考えているようだ。そのためには、アプリケーション開発のプロセスの効率化や、アプリケーション開発の支援体制が望まれるところだ。
そのアプリケーションの開発方法については、多くの企業で「発注実績があるパートナーに依頼する」という声が集まった。現状、発売直後ということもあり、やや様子を見てからアプリケーション開発に乗り出そうという慎重な考えを垣間みることができるだろう。一方、「わからない」という意見も多く、アプリケーション開発において、何らかのガイドラインの提示や、容易なアプローチ手法が求められていると言える。
最後に、導入する際にクリアしなければならない課題について。Microsoft HoloLens を導入する際の障壁として、企業が最も注視しているのは「本体の価格」となった。他の製品よりも圧倒的に高額である点は明らかで、費用対効果をまずは見極めた上で判断したいという慎重な姿勢が見られる。そして価格についで意見が多く上がったのが「投資対効果の明確化」である。自社の事業戦略の中でどう位置付けていくのかという議論や、先行事例における導入効果の情報収集が必要となるだろう。前述のアプリケーション開発の工数にも関連するところだが、ビジネス革新における先行投資として、取り組みの意義やゴールを明確化し、社内のコンセンサスを得ることが必須と言えそうだ。