DIGITAL INNOVATORS

日本から世界を席巻するデジタルイノベーターを

2014年、最高経営責任者にサティア・ナデラが就任以来、マイクロソフトのイノベーション(変革)が止まらない。クラウドファースト、オープン化などの戦略転換が行われる中、ビジネスパートナーの役割を重視するビジネススタイルへとシフトし、日本マイクロソフトにおいても2017年7月より、クラウド利用を前提に新しいビジネスモデルを展開するスタートアップ企業の支援に積極的に取り組んできた。「ビジネスパートナーとして、日本から世界を席巻するデジタルイノベーターを誕生させたい」と日本マイクロソフト クラウド事業開発室 室長 草川耕一氏は意気込む。デジタルトランスフォーメーションが拓く新たな世界の夜明けは近い。次代を担うプレーヤーたちはすでに動き始めている。

■ スタートアップ企業のビジネスを伸ばす事業計画を立案しコミットする

―なぜ、マイクロソフトがスタートアップ企業の支援を行うのでしょうか? その意図をお聞かせください。
草川2014年、マイクロソフトの最高経営責任者にサティア・ナデラが就任してから、マイクロソフトは大胆な変革にさらに加速がかかっています。サティアが CEO 就任後、最初に行ったのが、「 ICT 業界で重きを置かれているのはイノベーションができる会社かどうか」というマイクロソフトのアイデンティティを示したことでした。そのアイデンティティを実現するために量子コンピュータ、MR( Mixed Reality、複合現実)、AI など次のイノベーションに積極的に投資し具現化することに力を注いでいます。またクラウドファースト時代にマイクロソフトを発展させるために、Windows で閉じた世界から抜け出し、オープン化に向けて大きく舵を切りました。
従来のマイクロソフトのビジネスは、オフィス製品をはじめ社内でお使いいただくことに主眼を置いていました。Microsoft Azure のビジネスは、コスト削減や運用負荷の軽減を目指す社内システムのクラウド化だけでなく、近年ではデジタル時代の新たなビジネスモデルを展開するプラットフォームとしてのニーズが急速に高まっています。
Microsoft Azure を使って新しいサービスを開発し事業化するお客様に対しては、製品販売の視点ではなく、ビジネスパートナーとしての視点が求められます。どれだけ製品が売れたかといった規模の観点よりも、お客様とともに成長するLTV( Life Time Value、顧客生涯価値)がマイクロソフトにとっても重要となります。お客様のビジネスを伸ばすことが、マイクロソフトが発展する推進力となるのです。また、先進的な技術やサービスを提供するスタートアップ企業様に Microsoft Azure をご利用いただくことは、イノベーションを牽引する我々のブランドイメージ向上にもつながります。

日本マイクロソフト株式会社
コーポレート営業統括本部
クラウド事業開発室
室長草川 耕一 氏

―現在の支援活動において、どのような企業を対象にしたいと考えていますか?
草川2017年7月からスタートアップ企業様の支援活動を開始し、現在、支援対象として特定しているのが1,000社前後、そのうち100社に対し様々な支援を行っています。イノベーションの観点から、社会課題を解決する新しいビジネスモデルや最先端のテクノロジーを有している企業に対し高い関心を持っています。
具体的にはそのサービスを使うユーザーの数、ユーザーあたりのコンピュータの消費量、データ量そしてそのビジネスの成長性などが支援対象を考える際のポイントとなります。“デジタル時代を制する企業になりえるかどうか”が着目点です。そうした観点では、データの利活用に主眼を置いているビジネスは、これから伸びると考えています。
スタートアップ企業の支援と申し上げていますが、中小企業のデジタルトランスフォーメーションや、デジタル技術を活用したビジネス展開を支援することがテーマです。結果的にスタートアップ企業を支援するケースが多いというだけです。クラウドファーストの時代は大企業だけでなく、中小企業も最新技術やコンピューティングパワーを使ってイノベーションを起こすことができるという視点が大事です。そのことを訴求する上でもスタートアップ企業との連携には意義があります。これまでにない新しいビジネスへのチャレンジをお手伝いしたいというのが、支援活動の主旨です。
―これまでの支援活動に関して、具体的な内容をお聞かせください。
草川BtoB のスタートアップ企業では、急速に成長して踊り場に来たときに、次のビジネスを展開するためのチャネルづくりに苦労するケースがとても多いです。踊り場からのステップアップを支援するために、日本マイクロソフトが長年のビジネスで培った1万社を超えるパートナーをご紹介することも可能です。時間も労力もかかるパートナー探しにマイクロソフトの協力を得られるというのは大きなメリットとなるでしょう。
またマイクロソフトの製品をご利用いただいているお客様とスタートアップ企業をマッチングさせる取り組みも行っています。さらにマイクロソフトの営業がスタートアップ企業の製品やサービスを販売した時のインセンティブも社内で整えられています。この制度は日本だけでなくアメリカなどの海外進出の際にもお役に立ちます。
マイクロソフト製品との連携も可能です。例えば、チャットベースでチームの作業効率を高める Microsoft 365の「 Microsoft Teams 」と、複数のスタートアップ企業のサービスとの連携がすでに進められています。お客様のビジネスを伸ばすために、マイクロソフトの経営資源を上手く組み合わせて支援活動に取り組んでいます。

日本マイクロソフトでは営業からマーケティング、そしてクラウドプラットフォーム提供にいたるまで様々な形でスタートアップ企業を支援。

そのほかマーケティング、広告、PR、イベント出展、共催セミナーの開催などセールス支援も行っています。ただ、こういう支援体制があるというだけでなく、Microsoft Azure をご利用いただくことによる運用コストの削減や、支援活動がもたらす売上の増大などの事業計画の立案にもご協力させていただいています。お客様とご相談しながら決定した支援活動の結果についてはしっかりとコミットします。またプロトタイプを一緒につくるなど、技術支援を手厚く行うことも支援活動の一環です。

■ Microsoft Azure 上で稼働する仮想マシンの40%以上が Linux

―Microsoft Azure を利用しているスタートアップ企業はどのような点を評価していますか?
スタートアップ企業にとってスピードは、新たな市場を創り他社の追随を許さない圧倒的なポジションを確立する上で欠かせません。例えば、毎月10%の成長を見込みながら年間で300%の成長を実現するための成長曲線を描いて、それを実現していくのがスタートアップ企業です。その目標を知った上で社内のエンジニアも危機感を持って動いています。
数年前は、仮想マシンの追加に数十分かかっていました。今は、Microsoft Azure を利用することでアクセス数の増加に合わせて自動的にコンピューターリソースを増強できます。運用の担当者を必要とせず、無限のコンピューターリソースを利用できるという点は、スタートアップ企業のみなさんから高い評価をいただいています。
“機会損失を防ぐために予め余分なリソースを当てる必要もなく、常にリソースの最適化を実現できることでコストの抑制が図れた”“Microsoft Azure を使うことが、お客様のその先のユーザーの信用につながっている”“専門的かつ高度な AI を開発しやすいプラットフォームの利用により、開発工数を削減し劇的なスピードアップを実現できた”など、スピードやコストの面で様々な効果に関するフィードバックが寄せられています。マイクロソフトとしては、最先端テクノロジーの事例をつくるといった観点からも、スタートアップ企業とのパートナーシップはフィットしています。

日本マイクロソフト株式会社
コーポレート営業統括本部
クラウド事業開発室
ビジネスデベロップメントマネージャー
原 浩二 氏

―スタートアップ企業の多くが OSS( Open Source Software )を使っています。その点で Microsoft Azure をどう評価されていますか?
一言で言えば、非常に驚かれています。「マイクロソフトがオープン化戦略に舵を切ったといっても、ここまでとは思わなかった」とおっしゃるお客様が非常に多いのです。現在、Microsoft Azure 上で稼働する仮想マシンの40%以上が Linux です。OSS のデータベースも提供するなど、自社製品にこだわることなく、お客様が求めているソリューションを提供できるクラウドプラットフォームであることが、今や Microsoft Azure の強みとなっています。
草川Microsoft Azure では、インテリジェントエッジとインテリジェントクラウドをうまく組み合わせる世界を提唱しており、それらがセキュアに自在に連携する世界の実現に力を注いでいます。IoT の進展により大量に発生するデータをすべてクラウドにアップロードして処理するのは現実的ではないことから、エッジ側でもデータを処理できることが必要だからです。セキュリティ確保を目的とした新しい IoT ソリューション「 Azure Sphere 」も Linux を採用しています。また AI の開発プラットフォームではオープンソースで公開されている機械学習のソフトウェアライブラリをそのまま利用できます。マイクロソフトのオープン化戦略はますます加速しています。

すでに Microsoft Azure 上で稼働する仮想マシンの4割が Linux ベースだと語る原氏。

■ 世界を席巻するデジタルイノベーターを誕生させたい

―スタートアップ企業の支援活動について、今後の抱負や意気込みをお聞かせください。
スタートアップ企業の支援活動を行ってきたこの1年間は、世の中が急激に変わる前夜といった雰囲気を強く感じる日々でした。そうした大変革の只中に身を置くスタートアップ企業のみなさんの想いに共感し、一緒にビジネスをつくりあげていくことを心掛けてきました。お客様と同じ目線や価値観に立って、ビジネスがどういうフェーズで、今必要なものは何か、その課題に対してマイクロソフトはどう貢献できるのかを考え、ご提案し共にビジネスを大きく育てていく。これからもデジタル技術を使ってイノベーションの創造にチャレンジする企業に対し、私たちもチャレンジ精神と時代を変革するモチベーションを持って支援活動に取り組んでいきたいと思います。
草川新しい顧客やチャネルパートナーとスタートアップ企業を結び付け、グローバルなエコシステムをつくりあげることを目的とするプログラム「 Microsoft for Startups 」が始まっています。日本企業に向けて、Microsoft Azure の無料利用チケットを含む同プログラムを大きく広げていくとともに、これまでの支援活動のさらなる拡充を図っていきます。
お客様のビジネスを支援するという観点から、利益相反のない専業のグローバルクラウドベンダーとして、マイクロソフトの果たす役割はますます大きくなっています。社内のメンバーとよく話すのは、「ビジネスパートナーとして、日本から世界を席巻するデジタルイノベーターを誕生させたい」ということです。Microsoft Azure というプラットフォームの上でスタートラインに立ったお客様と共にイノベーションを起こし、これまでにないビジネスモデルで新たな市場を創造していきたいと思います。