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少子化の中、教育市場でのICT利活用は常に注目を集めている。と言うと、生徒がタブレット端末を用いるといった教育現場にばかり目が向きがちだが、教職員の働き方改革、業務効率化や、市場競争を勝ち抜くデジタライゼーションを推進するためにも、ITインフラはモダナイゼーションの必要に迫られている。今回は、中学受験塾として全国展開する株式会社日能研のICT基盤を支える株式会社エヌ・ティ・エスの基幹業務システムインフラ改訂の事例から、実践的なモダナイゼーション手法と、その効果についてご紹介する。

株式会社エヌ・ティ・エス(以下、エヌ・ティ・エス)は日本全国に直営教室151教室、グループネットワークあわせて240校以上の教室開設する中学受験塾、株式会社日能研(以下、日能研)の情報システムを支えると共に、そのノウハウを広く教育市場へ展開している情報システム企業だ。エヌ・ティ・エス システムサービス部 部長の三枝弥生氏は、事業を取り巻く環境と、ITインフラへの要求の変化について、こう語る。


(株)エヌ・ティ・エス
システムサービス部 部長
三枝 弥生 氏
「日能研では『子どもの学びを真ん中に』にして、子ども達が仲間と共に学び合いながら、自分の学びを自分でじっくりと、しっかりと育てていくことが大切であると考えていますので、生徒がタブレット端末を持って、といった授業は行っていません。しかし中学受験の世界に初めてコンピューターによる成績処理システムを導入するなど、ICT利活用には積極的です。少子化に伴う教育市場の競争激化でビジネスのスピードも速まり、高度な成績解析やタイムリーな情報提供など、事業競争力強化への要求にも応える必要があります。もちろん働き方改革への対応もあり、ITインフラにはこれまで以上に効率化と即応性、柔軟な拡張性と、コスト抑制が求められます」

高可用性と柔軟な拡張性、管理の効率化を
求めてHCIを選択

今回のシステム改訂の対象は、日能研のスタッフが日々利用する基幹システム用DBサーバー、ADサーバー、ファイルサーバー、アプリケーションサーバーなど業務システムの基盤。システムサービス部 システム課 課長の古川真也氏は、改訂前の課題と、その解決にHCIを選択した理由を次のように説明する。


(株)エヌ・ティ・エス
システムサービス部 システム課 課長
古川 真也 氏
「7年ほど前に刷新した基盤ハードウェアが保守切れ時期を迎えました。加えて、弊社ではBCP(事業継続計画)を目的に数年前から自社ビル内からデータセンターへ移設を行い、  Windows Server 2016 と Hyper-V による仮想化を実施して来ましたが、仮想基盤がシングルサーバー構成のため、HA( High Availability :高可用性)やライブマイグレーションができない、といった課題を抱えていました。業務上、止められないシステムで影響範囲も広いため、サーバーの再起動が必要、といった際に運用が難しかったのです。将来的なサービス拡張やサーバーOSのEOSなどに備えて切り替えが容易であると共に、それら既存の仮想環境を集約、管理も効率化できる基盤を求め、HCI(※1 ハイパーコンバージドインフラストラクチャ)を選択しました。SIはマイクロソフトの技術力を持つ日本ビジネスシステムズが担当しました。HCIやSQLについての知見が豊富で、大変心強かったです」


(株)エヌ・ティ・エス
システムサービス部
大津 裕平 氏
システムサービス部 システム課の大津裕平氏は、ストレージ管理負荷もHCI選択の理由と話す。
「過去の成績情報や統計情報などデータが増大する中で、物理ストレージでの管理は負荷が高まっていました。Azure Stack HCIに搭載のS2D機能(※2)によりストレージまで仮想化して一元管理できる点は、魅力的でした」

※1 ハイパーコンバージドインフラストラクチャ:汎用サーバーにコンピューティング機能とストレージ機能を統合した検証済みの仮想環境。インフラ構築コストおよび期間の短縮、運用負荷の低減、柔軟なシステム拡張といったメリットをもたらす。

※2 S2D:記憶域スペースダイレクト(Storage Spaces Direct)。サーバー上に可用性とスケーラビリティの高いソフトウェア定義ストレージを実現する機能。

Dell EMC Solutions for Microsoft Azure Stack HCI (旧称S2D Ready Node)選定の理由:競合比較での優位点とは?

同社は複数社のHCIを検討した結果、「 Dell EMC Solutions for Microsoft Azure Stack HCI」を採用した。その選定ポイントを古川氏は次のように説明する。
「まずはコスト効果です。 Windows Server Datacenter エディションの標準ライセンスのみで導入でき、別のハイパーバイザーなど仮想化ライセンス費用が不要な点は、トータルコストで大きなメリットです。また、既存仮想環境でも Hyper-V を利用していましたので、同一環境での移行スピードの速さは、止められない基幹システムのインフラとしては最善の選択と考えました。また、『 Dell EMC Ready Node ソリューション』*として提供され、設計から運用までの各フェーズにおけるサポートが手厚い点も評価しました」

* Dell EMC Ready Node ソリューション:OSのデプロイ、 Hyper-V の構成、AD環境の連携、S2Dストレージの初期設定などはすべてDell EMC側で実施するほか、お客様の時間とリソースの節約、省力化、ITエクスペリエンスの向上に役立つエキスパートサービスを提供する。

システム課 髙木良氏は、 PowerEdge R640 のハードウェア性能も評価したという。 「 PowerEdge R640 はBIOSからS2Dに最適化された設計で、NVMe(※3)仕様のSSDドライブであるなど、データ転送スピード、パフォーマンスの高さは移行期間の短縮につながります」

※3 NVMe:Non-Volatile Memory Express。SSD向けに最適化された通信インタフェース/プロトコル。


(株)エヌ・ティ・エス
システムサービス部
髙木 良 氏
同社は Dell EMC とは今回が初めての取引であるそうだが、システム課 大津裕平氏は、対応品質も高く評価している、と語る。
「提案時から営業、SEなど担当の皆さんが、常にこちらの技術的な質問に対してもタイムリーに、そして新しい技術についても的確に回答していただけました。その対応品質は担当者が変更になっても変わらず、安心感があります。質問のたびに持ち帰りになったり、曖昧な回答に終始したりすることなく、最新技術でもコストの構造に至るまでわかりやすく説明いただける点で、他社との違いを感じました」

Windows Server 2019 を導入
業務インフラのサーバーOS最新化の狙いとは?

もう一つ、特筆すべきポイントがある。同社は今回の改訂でサーバーOSも Windows Server 2016 から、いち早く最新の2019を採用した点だ。EOSまで余裕のある中、敢えてサーバーOSを最新化した狙いとは何なのだろうか。
「シンプルに”最新のものが一番良い”という考え方です。いますぐ最新機能の必要がないとしても、同じ使い勝手で、最新の環境で長く安全に使える、という点だけをとっても、これからのインフラ基盤には大きなメリットだと考えます」(古川氏)

髙木氏は、重複除去機能の強化にも期待、と語る。
「移行を期に、既存の実データ容量を削減できるのは助かります。実際、今回の改訂でストレージのファイル収容率はおよそ300%向上する見込みです」
この機能は従来の Windows Server でも搭載されていたが、最新の Windows Server 2019ではパフォーマンスが改善されており、ファイル単位ではなくバイナリのデータ単位で重複を検出して除去するため、大幅に重複除去率が向上する。さらに、 Windows Server 2019 ではファイルの圧縮がサポートされていない、ReFSフォーマット(※4)での重複除機能が利用可能となった。これにより、大容量のボリュームでパフォーマンスを維持しつつ、高いファイルの収容率を実現できるのだ。

※4 ReFS:Resilient File System。Microsoft の最新のファイル システムであり、データの最大限の可用性、さまざまなワークロードに対する大規模なデータ セットへの拡張、破損部分の回復によるデータの整合性を実現できるように設計されている。

そして古川氏は、 Windows Server 2019 の導入は、近く予定されているVDI化への布石でもあると明かしてくれた。
「クライアントPCの Windows 7 EOS に伴い、 Windows 10 化するのですが、サーバー環境を最新にしてVDI化することで、クライアント側の管理工数を削減する計画を進めています」

デジタル化に向け、新たな要求に応えるために
オンプレミスITインフラの進化手法とは

今後、同社はこれまで個別最適であった仮想基盤を統合し、計画中のVDI化も含めサポートなども一元化し、さらなる効率化を目指していく予定である。古川氏は、新たな技術として5Gにも注目していると語る。
「5Gにより、従来の光回線と比べ敷設工事などの必要がなくなり、教室へのインフラ提供がコストを抑えて、タイムリーに展開しやすくなるのでは、と期待しています」

最後に三枝氏に、教育市場におけるこれからのITインフラに求められることと、今回の改訂の総括をお話しいただいた。

「今後、さまざまなICT利活用や、子ども達の成長につながるための教育施策立案にデータマイニングが行われる範囲も、頻度も広がると思います。それを支えるITインフラにはさらなるレスポンス性と、柔軟な拡張性、展開スピードが求められます。世の中ではクラウド化の動きばかりが目立ちますが、弊社では秘匿性の高い個人情報を安全に取り扱うためにオンプレミスによる運用管理を選択しています。そこへ、今回の改訂で最新技術を取り入れることで、これからの新しい要求に応えられる手ごたえを感じました」

あらゆる業種でデジタル化が進む中、業務基盤としてのITインフラに求められるのは導入のしやすさとコスト削減、そして管理と運用のしやすさが基本。ただ、オンプレミスであっても従来通りのリプレースではなく、使い慣れた環境で課題を解消し、拡張性を高められるマイグレーション手法という点で、同社の事例に学ぶことは多いのではないだろうか―。

関連リンク

株式会社エヌ・ティ・エス
http://www.ntsinc.co.jp/
株式会社日能研
http://www.nichinoken.co.jp/
既存オンプレミスシステムのモダナイゼーションを実現する「 Azure Stack HCI 」
https://special.nikkeibp.co.jp/atclh/NBO/17/microsoft1222/p9/