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前回は「既存オンプレミスシステムのモダナイゼーションを実現するAzure Stack HCI」として、「現場のデータとクラウドをミックスさせてDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する」Azure Stack HCI の全体像と、ビジネスにもたらす真の価値についてご紹介した。>前回の記事を読む

そこで今回より、前回ご紹介した
①低価格/②圧倒的なパフォーマンス/③一体的で高い運用管理性④Azureファミリーとしてのハイブリッド性/⑤セキュリティ
の5つの優位点や特長について、革新的な技術的ポイントを含め、ユーザー視点でさらに掘り下げていく。

今回は前編として、①低価格、②パフォーマンス、③運用管理性を、日本マイクロソフト クラウド&エンタープライズ本部 佐藤 壮一氏/パートナー事業本部 高添 修氏のご協力のもと、解説していく。


あなたの企業のITインフラは、未来に対応していますか?

各ポイントに入る前にいま一度、これからの企業ITインフラに求められる要件を確認したい。

図:”未来に対応する”ITインフラとは?

  • 1つ目はコスト抑制。企業は設備保有コストを抑えながらも、新たなビジネスモデルや事業開発アイデアを実行に移す柔軟なITインフラを必要としており、これからますますその要求は高くなるだろう。
  • 2つ目は安全性。サイバーセキュリティの巧妙さは進化を続け、もはや自社のみでの対策、対応は費用面でもリソース面でも、そして知見という点でも難しい状況だ。
  • そして3つ目はスピード、俊敏性。マーケットとビジネスの変化がこれまでとは比較にならないほど速まり、顧客の期待に応えるために経営の意思決定が迅速化を迫られる。IoT、AIによってデータ量もまた、爆発的に増加し続ける。当然、ビジネスの足元を支えるITインフラは、それらに対応しなければならない。

これらの要求を満たすものがクラウド活用であり、社内ユーザーや開発者にとっては「ビジネスに近いITインフラ」として注目され続けている。

しかし、企業のITインフラがすべてクラウドに移行できるかというと、話はそう単純ではない。これまで蓄積してきた情報や、基幹システム、Webサービスが集約されているのは、データセンターを含むオンプレミスの「基盤」だ。そしてその多くは、サーバーOSのEOSや機器の老朽化など、刷新のタイミングを迎えている。

これらの解決策が「オンプレミスシステムのモダナイゼーション」であり、少なくともWindows Server を利用中の企業であれば(実際はそれ以外であっても)、最初に検討すべきは「 Azure Stack HCI 」ということなのである。

そして、決して「クラウドか、オンプレミスか」の二択ではなく、「(将来的な)クラウドの利活用時代に適合する、最適なオンプレミスの進化=モダナイゼーション手法」が「 Azure Stack HCI 」なのだ、ということを、改めて最初にお伝えしておきたい。

やや前置きが長くなったが、ここからが本題。最初に、コスト抑制要求に応えるこのポイントから解説していこう。


①低価格
~徹底的に効率化と低コスト化を目指す設計で
規模の大小を問わず「お得」である~

企業ではこれまで、物理サーバーの台数と管理工数の削減を目指し、仮想化を推進してきたが、仮想化システム自体がサイロ化する、物理ストレージの管理負荷といった、新たな課題も生まれた。HCIは、物理ストレージも含めて仮想化し、各メーカーが検証済みで「すぐに使える状態」で納入されるソリューションである。HCIはオンプレミスの仮想基盤をさらにシンプルに、複雑な機器構成を単一ポイント化し、物理的なラックの占有率を削減するだけでなく、構築の期間短縮や管理工数削減というメリットが得られることは、多くの方が既にご存じだろう。

そのHCIには各社からさまざまなソリューションが提供されている。その中で「 Azure Stack HCI 」は徹底的に効率化と低コスト化を目指す設計がなされている。 Azure Stack HCI はHCIと仮想化ライセンスが Windows Server 2019 Datacenter Editionの「標準機能」としてハイパーバイザーである Hyper-V も含めて提供され、他社と比べハイパーバイザー(仮想化制御プログラム、OS)の別途購入の必要がない。

図:他社HCIとのコスト比較

これをもう少し掘り下げてみよう。以下は、HCI専業他社メーカーとの「ソフトウェアだけのコスト」を比較した場合だが、小規模の2シングルサーバー構成でもコストはおよそ4割、大規模の8デュアルサーバー構成では実に5割のコストが削減できる。規模の大小に関わらず、コスト観点でどちらが「お得」か、一目瞭然だ。

図:HCIソフトウェアライセンス コスト比較

Hyper-V* はパブリッククラウド Azure の基盤として、商用ハイパーバイザーの中では異例ともいえる大規模なサービスを支えている実績が、そのまま強みと言える。ハイパーバイザー自体の技術は成熟期に差し掛かりつつあるが、先進の Azure のクラウド基盤技術を自社で利用できると考えれば、Hyper-Vユーザーであることも Azure Stack HCI の優位性になり得るのだ。

また、Hyper-Vはコンテナ技術への対応により、Red Hat、CentOS、Debian、Oracle、Ubuntuなど主要なLinux 仮想マシンもサポートしている。仮想マシンの中に必要となる Hyper-V 用のモジュールはLinuxのカーネルにビルトインされ、追加の機能などが必要な場合も手動によるインストールが可能である。

* Hyper-V : Microsoft Cloud の基本的なハイパーバイザー テクノロジ。仮想化を通じてコンピューティング リソースを分割し、複数の Windows または Linux オペレーティング システムを並行して実行でき、クラスタリングにより高可用性を実現する。


②圧倒的なパフォーマンス
~“激速”検証結果とS2D強化ポイント~

■ Windows Server 2019 は コンピューティングを劇的に変化させる
インテル® Optane™ DC Persistent Memoryを標準サポート

前回、マイクロソフトとインテルによる共同検証結果で、約1380万IOPSという桁違いの(他社オールフラッシュ(SSD)HCIは100万IOPSで「高速」とされる)数値結果が示されたことを述べた。

今回はより分かりやすい環境での検証結果をご紹介する。今回は分かりやすさを重視し、本番環境のような冗長性を担保しているわけではないこと、また、HCI 環境でのテストではないことは、ご了承いただきたい。

結果からお見せすると、以下のようになる。

図:パフォーマンス検証結果

一番左、赤枠の部分「PMEM (DAX))の値に注目してほしい。中央の「PMEM」、右の「NVMe」数値と比較して、桁違いのハイパフォーマンスであることがお分かりいただけるだろう。この理由は、技術的な解説が必要となる。順を追って説明していく。

上図の一番右枠、「NVMe」での数値。NVMe(Non-Volatile Memory Express)とは、SSD(フラッシュストレージ)での通信パフォーマンスを最適化するためのプロトコルである。

中央と、左枠の「PMEM」とは、インテル® Optane™ DC Persistent Memory(以下DCPMM)での数値。Persistent Memory(パーシステント・メモリー:永続メモリ)とは、DRAMに近い低レイテンシ(CPUがデータを読み書きするまでの時間が短い)を実現し、かつDRAMよりも大容量を低コストで実現できる新しい不揮発性メモリー製品。不揮発性メモリーであるため、電源を切ってもデータは保持される。同じ容量であればDRAMよりも低コストで導入でき、同コストで容量を増やせるというメリットがある。

そして Windows Server 2019 は、このDCPMMに標準対応している。vhdpmem 形式で作成、アタッチすることで Persistent Memory disk(永続メモリディスク)としてHyper-V仮想マシン内のデバイスマネージャー上で認識できる(下図)。パフォーマンス検証結果の中央枠が、この状態で負荷をかけた際の数値結果だ。

図:Hyper-V仮想マシン内のデバイスマネージャー上で「Persistent Memory(永続メモリディスク)」として認識

しかし、このままではNVMe SSDと比較しても、そこまで大きな差は出ていない。そこで、「DAX(Direct )」と呼ばれる、Persistent Memoryに最適化されたストレージ処理を行うモードへと切り替える必要がある(下図)。

図:DAXによるストレージ処理の最適化

今回のパフォーマンス結果で“爆速“数値をたたき出したのは、このDAXを有効設定したものだ。中央のPersistent Memory(非DAX)と比べ、大きくスコアが改善している。ちなみに、異なるベンチマークツールを用いた検証でも、2つのvSCMディスク(各物理リージョンに作成したSCMディスク)に同時にIOをかけた結果、274万IOPSという数値が確認された(下図右)。

図:IOPS検証結果

Persistent Memoryはランダムアクセスに強い特徴がある。前回の結果と合わせ、今回の実際の利用環境に近い検証においても、従来「高速」と言われたSSDと比べても各段の差があることがおわかりいただけただろうか。

*IOPS:ディスクが1秒当たりに処理できるI/Oアクセスの数。1回のI/O処理時間は平均アクセス時間とデータ転送時間を足した数値であり、このI/O処理が1秒当たり何回実行できるかがIOPS。この数値が高ければ高いほど高性能なディスクと言える。

■ Windows Server 2019 S2D強化ポイント

Windows Server 2019では、S2D(Storage Spaces Direct :記憶域スペースダイレクト)についても強化、改善がなされた。以下に紹介する。

記憶域プールが最大4PBに拡張

Windows Server 2019 & Azure Stack HCI では、記憶域プールが最大4PBに拡張。Windows Server 2016 と比べ4倍の容量となったほか、ボリューム数も最大64に、最大サイズも64TBとそれぞれ、倍増となった。

パフォーマンスと容量効率の向上

Windows Server 2019 では、mirror-accelerated parity(ミラーアクセラレーテッドパリティ)のパフォーマンスが Windows Server 2016 と比較して2倍に高速化した。mirror-accelerated parityとは、記憶域階層の高速階層にミラースペース、標準階層にパリティスペースを利用することで、パリティ単体より高いパフォーマンス、ミラー単体よりも高いディスク使用効率を兼ね備えた記憶域スペースが作成できる機能だ。

図;パフォーマンスと容量効率

ReFS Deduplication (重複除去) パフォーマンス

重複除去は、ディスク内に存在するファイル中の同ファイルをひとまとめにして容量を削減する機能。Windows Server 2019 の重複除去は、ファイル単位ではなくバイナリのデータ単位で重複を検出して除去することでパフォーマンスが大きく改善。さらに、Windows Server 2019 ではファイルの圧縮がサポートされていないReFSフォーマットでの重複除機能が利用可能となり、大容量のボリュームでパフォーマンスを維持しつつ、高いファイル収容率が実現できる。同ファイルが多数存在する企業内ファイルサーバーや、VDIとして仮想マシンテンプレートが多く利用されている場合などで、高い効果が期待できる。

図:ReFS Deduplication (重複除去)


③一体的で高い運用管理性
~ Windows Admin Center ~

Windows Admin Center ― 多数のコンソールを最新のWebベース UIに統合

運用管理性については、なんと言ってもそのカギを握るのが「 Windows Admin Center 」だ。Azure との連携を説明する前に、基本的なところから解説する。

図:Windows Admin Center

Windows Admin Center はインストール5分で、Windows Server または Windows 10 の有効なライセンスさえあれば無償で利用できる。Webブラウザ(現在は Microsoft Edge と Google Chrome)で動作し、Windows Server 2012 / 2012 R2 / 2016 / 2019、 、 Windows 10 の管理が可能。今後公開される新たな Windows Server 向けに最適化されていく予定だ(ハードウェアメーカーなどがリリースする管理ツールとの拡張連携も進められている)。

これまで、 Windows Server の管理ツールといえば、「サーバーマネージャー」や、「Microsoft管理コンソール(MMC:スナップインベースのGUI管理ツール)」、「リモートサーバー管理ツール(Remote Server Administration Tools:RSAT)」などがあった。また、大規模環境向けの System Center 製品やクラウドベースの「Azure Monitor」などがある。

Windows Admin Center は、その中間に位置し、「 Windows Server や Windows クライアントの日々の管理作業で使用される多数のコンソールを統合し、現代的でシンプルな、統合型の安全なリモート管理環境を提供する」ためのものだ。1台のサーバー管理から、オンプレミスやクラウド上のサーバー群の管理までが行える。

これまでのサーバーマネージャーや標準のGUI管理ツールを置き換えるものではなく、補完し、強化するものと捉えて欲しい(これまでのツール提供は継続される)。サーバーマネージャーとGUI管理ツール、コントロールパネルアプレットが1つのコンソールに統合して利用可能になるイメージだ。

従来のように、複数の管理ツールを使い分ける必要がなくなり、扱いなれた従来と同様の管理操作が、最新のWebベース UI(ユーザーインタフェース)により提供される。さらに、リモートデスクトップ接続(Mstsc.exeクライアントを使用しないブラウザのみでの接続)や、Windows Updateによる更新プログラムの確認とインストール、再起動のスケジュールといった機能も備えている。

HCIの管理という観点では、 Windows Server 2019 はもちろん、2016 のHCIも管理可能である。

図:Windows Admin CenterによるHCIの管理

System Insight ― AI機械学習モデル予測分析機能

Windows Server 2019 の新たな機能としては、「System Insight」というAIによる機械学習モデルを基盤とした予測分析機能が標準提供されている。パフォーマンス カウンターやイベントといった Windows Server のシステム データをローカルで分析し、クラウドに接続することなく、コンピューティング、ネットワーク、ストレージの今後の使用状況の高精度な予測を提供する。

図:AIを搭載したSystem Insight

Performance History ― IOPSやレイテンシの可視化

また、「Performance History」は、IOPSやレイテンシなどの統計データを自動で採取、保存され、 Windows Admin Center で可視化される。例えば、物理ディスクごとのレイテンシ評価によって異常を検知、警告が出る、といった効果がある。

図:Performance HistoryによるIOPS、レイテンシの可視化

ITシステム 管理者はこれまで、ディスクの空き領域が不足していないか、 Hyper-V ホストの消費メモリーや消費 CPU を確認して VM の追加を計画する必要はないか、リモートデスクトップ運用管理などのために、さまざまなスナップインを切り替えて監視する必要があった。しかし、 Windows Admin Center は、それらが1つのコンソールで完結する。管理工数の大幅な削減のために、ぜひ活用して欲しい。


Azure Stuck HCI はWindows Server 2019 でしか利用できない訳ではなく、Windows Server 2016 Datacenter にも HCI 機能は備わっており、Windows Server Software Defined (WSSD) 認定制度もあるため、安心して HCI を構築することは可能。ただし、本記事でご紹介しているように Windows Server 2019 には技術上の優位性が多々あり、Azure Stack HCI としての最大のメリットを活用するには Windows Server 2019 が推奨されている。

後編では、「④ Azure ファミリーとしてのハイブリッド性」と「⑤セキュリティ」について解説する。

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