未来を勝ち抜くIT投資

~ポスト2020を見据えた最適環境を探る~

デジタル時代のモダンITインフラストラクチャ

2019年10月9日~11日に開催された日経BP 主催のイベント「日経 xTECH EXPO 2019」において、日本マイクロソフトは「モダンITインフラストラクチャ」をテーマに、セミナーや Azure Stack HCI のハードウエア パートナーによる展示・デモを実施した。セミナーでは、 Windows サーバーのカリスマ エバンジェリストJeff Woolsey氏から「1,380万IOPS」という、 Azure Stack HCI が達成した衝撃的な数字が紹介された。また日本発の「 Azure Stack HCI 採用プロジェクト」を進めるマイクロン ジャパンの江間氏は、モダナイゼーションの背景とともにグローバル展開のポイントを具体的に解説し、聴衆の関心を集めた。本記事では、日経 xTECH EXPO のセミナーをレビューする。

■マイクロソフト本社主席PMが語る
顧客事例に学ぶオンプレインフラ投資成功のヒント

DX(デジタルトランスフォーメーション)時代にはオンプレミスのインフラにもモダナイゼーションが求められる。 Windows Server のカリスマ エバンジェリストJeff Woolsey氏は、米国オクラホマ市の事例をとりあげ、クラウド時代のオンプレ投資効果最大化についてポイントを語った。
「人口150万人を超えるオクラホマ市では、わずか7名で構成されるIT部門が1,000台以上のサーバーを管理していました。既存のインフラには VMware と SAN を導入していましたが、コストが非常に高く、パフォーマンス面でも問題がありました。オクラホマ市は次世代インフラとして Azure Stack HCI と Dell EMC サーバーを組み合わせた HCI ソリューションを、 SQL Server 向け、バーチャルマシン向けに導入することで、劇的にコストを削減しパフォーマンスもこれまでのSANに比べて飛躍的に向上できました。またオンプレミスのデータを Azure でバックアップするといったハイブリッドクラウド活用の選択肢が持てたことに大きな期待を寄せています」

Azure Stack HCI はテレメトリが取れるサーバーだけで、前年対比で150%も伸びており、ハードウエア パートナーによるアプライアンス製品の台数も劇的なペースで増加しているとJeff Woolsey氏は話し、 Azure Stack HCI が選ばれる3つの理由に言及した。

1. 低コストで、なおかつ必要な機能、高度なセキュリティを網羅

Azure Stack HCI は、 Windows Server 2019 Datacenter の標準機能として提供されるため、追加ライセンスやソフトウエアなどの追加購入が不要だ。「ソフトウエアライセンスの観点では、 Windows Server ゲストも Linux コンテナも無限に利用できます。また Windows Server 2019 には Windows Defender による高度なマルウエア検知、 Windows Defender Advanced Threat Protection によるサイバー攻撃やデータ漏えいの検出に加え、SQLデータベースの計算の暗号化など高度なセキュリティ機能が組み込まれています」(Jeff Woolsey氏)

2.他の HCI の追随を許さない圧倒的なパフォーマンス

Azure Stack HCI が2016年に達成した670万IOPSは、2019年10月10日現時点まで他の HCI が上回ったことはないと、Jeff Woolsey氏は力強く語る。「インテルの最新ハードウエアにOSネイティブで対応するなど、ハードウエアのスペックを最大限に活かすことにより2018年には約1,380万IOPSという驚異的な数字を叩き出しました。しかも2016年比でサーバー台数を25%削減できました」
Jeff Woolsey氏は第3者サイトである StorageReview.com の公開情報も紹介した。 Azure Stack HCI と VMware Virtual SAN をテストし評価した結果、 Azure Stack HCI のほうがランダムIOパフォーマンスで4.2倍、IOパフォーマンスが6.1倍という結果となったという。

図:マイクロソフトとインテルが共同検証した結果、約1,380万IOPSという驚異的数字を達成

3. 数クリックで Azure とのハイブリッドクラウド活用が可能

「 Azure Stack HCI は Azure に必ずしも接続しなければいけないわけではありません」とJeff Woolsey氏は話し、こう続ける。「ハイブリッドクラウドを活用したいときは、数クリックするだけです。 Windows サーバーの管理ツール Microsoft Windows Admin Center によりクラウド( Azure )とオンプレミス( Azure Stack HCI )との一体的な運用・連携が行えます。データバックアップ、仮想マシンの災害対策、Windows サーバーの更新管理などを、クラウドかオンプレミスかを意識することなくシームレスな運用管理を実現します。またサイバー攻撃が高度化する中、オンプレミスのサーバーの脅威を Azure Security Center で監視できるメリットは非常に大きいです」

図:クラウド、オンプレミスを意識することなくシームレスな運用管理を実現


Microsoft
Windows Server プロダクトグループ
プリンシパル PM マネージャー
Jeff Woolsey 氏
従来型のサーバーやストレージの構築、運用管理負荷の課題解決に加え、必要なときすぐにハイブリッドクラウド活用に向けた統合環境を実現できる点が、 Azure Stack HCI の大きな強みだ。Jeff Woolsey氏は「オンプレミスのベストとクラウドのベスト、両方のメリットを享受することでDXの推進を加速させ、持続成長を実現していただきたい」とのメッセージで締めくくった。

■【ユーザー登壇】グローバル企業はどうやって新しいテクノロジーを採用していくのか?

ユーザー企業として登壇したのがマイクロン ジャパンのシニアITシステムマネージャー 江間氏だ。江間氏は日本発で『 Microsoft Azure Stack HCI 採用プロジェクト』を率いる日本人担当者だ。世界第4位の半導体メーカー、マイクロンは、DRAMからNAND、NOR、3D XPoint™メモリ、NVMeまでを製造している唯一の企業。マイクロンがインフラのモダナイゼーションに取り組む背景について江間氏は、「現在、VMware vSphere with NFSとVMware vSANを使っています」と話し、既存インフラのモダナイゼーションに向けて4つのキーワードを挙げた。

1.ハイスピード
デザイン部門から求められる高性能な計算能力への対応

2.拡張性
プロジェクトが増えるごとに、サーバーやストレージのリソース増強が必要

3.コスト
ハードウエアリソースの拡充に伴うソフトウエア費用の増大

4.ユーザーエクスペリエンス
多くのサーバーの効率的な管理

江間氏は採用理由についても具体的に説明を加えた。「 Windows Server 2019 に仮想基盤機能やSDS機能などが付随しており、追加費用が不要という点を評価しました。またストレージへのアクセスを高速にするRDMA(リモートダイレクトメモリーアクセス)に対応しています。さらに無償で提供されている Windows サーバー管理ツール Windows Admin Center の使いやすさも評価しました」

図: Azure Stack HCI の優位性


日本ヒューレット・パッカード株式会社
テクノロジーエバンジェリスト
小川 大地 氏
江間氏は、新しいテクノロジーを推進する上で、欧米と日本との違いについて次のように指摘する。「プロジェクトの進め方に関して、日本は仕様を固めてから始めますが、アメリカは大きなところだけ押さえて走りながらフィックスしていくため、スピード感が違います。導入プロセス自体はあまり大きな差がありません。違いがあるのは、グローバルへの貢献・発信力・影響力を求められるという点です。また他チームのロードマップや国内外の状況を考慮した提案でなければ採用されません。少人数でインフラを管理しなければならないため、標準化・自動化の観点もとても重要です。明らかな優位性を定量的に説明できれば、アメリカ本社でなくてもどこの支社からでも起案することは可能です」
マイクロソフトが提供しているベンチマークツールを使って、「 HPE ProLiant DL380 Gen10 with Microsoft Azure Stack HCI 」の2ノードで、各ノードに4つのSSDをさした環境のもとテストを実施した結果、31万IOPSを達成したと江間氏は話し、「今後、グローバル展開する際、費用対効果の資料作成にマイクロソフトのベンチマークツールは非常に役立ちます」と付け加える。
江間氏は、「現在、PoC(概念実証)が終わった段階です。今後、リリースして間もないマイクロンNVMe9300とSSD5300を使ったパフォーマンステストの実施、社内用リファレンス・アーキテクチャーの発行など、さまざまなステップを踏んでいかなければなりません。大事なポイントは、新たなスタンダードを作り、運用し、定着させていく、やりぬく推進力です」


マイクロン ジャパン株式会社
シニアIT システムマネージャー
江間 泰紀 氏
江間氏のプレゼテーションの後、日本ヒューレット・パッカード テクノロジーエバンジェリスト 小川大地氏、 Microsoft のJeff Woolsey氏が壇上に上がりディスカッションが行われた。Jeff Woolsey氏は、「マイクロン、HPE、 Microsoft Azure Stack HCI により2ノードで達成した31万IOPSは、これまででは考えられない大きな数字です」と強調した。江間氏は Microsoft Azure Stack HCI の導入におけるHPEのサポートを高く評価していると話す。それを受けて小川氏は、「日本ヒューレット・パッカードでは、 Microsoft Azure Stack HCI に関して保守サポートはもとより、PoCも含めて導入前の提案サポートにも力を入れています」と強調した。
最後に小川氏は次のように締めくくった。「グローバル企業は多種多様な文化・人種でありながら、ITに関しては標準化・自動化が進んでいます。ただし、外国人の上司への提案には徹底的な論理武装が必要です。さらに本格採用にあたっては、各国でも導入されることを意識した標準化として、社内用にリファレンス・アーキテクチャーをつくるなどの工夫も大切です。」