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未来を勝ち抜くIT投資 ~「乗換案内」エンジンで経路検索サービスを提供するジョルダン 「サービスを止めない!」顧客サービス基盤の賢い進化手法 - 日経ビジネス電子版Special

ビジネスのデジタル革新が急速に進む中で、顧客へ提供するサービス基盤はどのように進化させるべきなのか。さまざまな技術と選択肢から何を重視して選択すれば、事業の継続した成長が可能になるのかを知ることは、経営視点からも重要事項と言える。経路検索エンジンをベースとした数多くの法人向けサービスを提供するジョルダン株式会社の成功事例から、賢いインフラ進化の手法、具体的なアプローチを見ていこう。


ジョルダン株式会社
企画営業本部 マネージャ
佐藤真一氏
ビジネスや日常生活で欠かすことができない経路検索アプリ。近年ではインバウンドの増加に伴う観光送客利用やIoT、MaaS(モビイリティ・アズ・ア・サービス)との連携でも注目を集めている。中でもジョルダン株式会社(以下、ジョルダン)が提供する「乗換案内」は、提供開始から20年以上、月間検索回数2億回以上、アプリの累計ダウンロード3,000万を誇る経路検索サービスの老舗だ。

今回のシステム改訂の対象は、ジョルダンが企業や自治体、公共交通機関向けに提供する法人サービスの基盤。そこにはどのような課題があり、どのようなアプローチで刷新したのか。ジョルダン株式会社 企画営業本部 佐藤真一氏に聞いた。

いかに“サービスを止めず”に
安全な基盤刷新を実現するか
課題は仮想基盤の運用複雑化の解消

「ジョルダンが提供する法人向けサービスは、いずれも『乗換案内』経路検索エンジンをベースとして、企業内の旅費交通費精算や経費精算システムと連携する『乗換案内Biz』、インバウンドを含めた集客を促進する自治体、企業向けの『乗換案内Visit』、鉄道、バスなど公共交通事業者向け『MovEasy(ムーブイージー)』など、多岐にわたります。要望に応じてフルカスタムで開発を行い、バックエンドシステムとの連携や、駅名、経路などの表記ほか、個別に細かなチューニングを行い提供しています」

ジョルダンが提供する法人サービスの一例。地域観光アプリ、各種交通機関(鉄道、路線バス)向け経路検索Webアプリなど。

「これらの法人向けサービス基盤は、スケールアウトしやすいように仮想化しています。しかし、クラウドサービス上で構築してしまうと従量でコストが変動してしまい、法人顧客向けビジネスではなかなか受け入れていただけないのが現実です。そこで、自社オンプレミスで環境を用意し、必要に応じてCPUを切り出してご利用いただく、というスタイルを基本としています。

従来環境での具体的な課題としては、ハードウェアの保守期限が迫っていたことと、仮想基盤の運用複雑化を解消したい、という点でした。また、お客様サービスの提供基盤であるという点では、サービスは止めることが許されず、とにかく時間をかけずに移行できることが重要でした」

刷新前の環境は、Windows Server 2012およびWindows Server 2012 R2のブレードサーバーをHyper-Vで仮想化し、外部ストレージをiSCSI接続して構築されていた。運用の複雑化について佐藤氏は、ストレージの運用管理負荷を挙げた。

「物理ストレージはディスク障害など機器のメンテナンスに加え、容量管理にも負荷がかかります。仮想サイズと実容量には微妙な差異があり、気がつくといっぱいになっている、深夜知らないうちにオフラインになっているなど、サービス基盤としては気を配るポイントが非常に多かったのです」

ジョルダンではこれらの解消を目指し、複数社のHCI(※1 ハイパーコンバージドインフラストラクチャ)を検討する。そして、各社からの提案を比較した結果、「Dell EMC Solutions for Microsoft Azure Stack HCI (旧称:Dell EMC Microsoft Storage Spaces Direct(S2D)Ready Node)」を採用。2018年9月に新基盤での運用を開始した。Windows Server 2016搭載の「Dell EMC PowerEdge」サーバーのみでストレージまでが仮想化される構成となる。

※1 ハイパーコンバージドインフラストラクチャ:汎用サーバーにコンピューティング機能とストレージ機能を統合した検証済みの仮想環境。インフラ構築コストおよび期間の短縮、運用負荷の低減、柔軟なシステム拡張といったメリットをもたらす。

Dell EMC Solutions for Microsoft Azure Stack HCI は、Windows Server 2019/ 2016 Datacenter エディションの標準ライセンスのみでHCIを実現する。HCI専用導入サービスやミッションクリティカルな業務サービスでの利用を想定したHCI専用サポートと共に提供され、設計から運用までの各フェーズにおける負荷を大幅に軽減することができる。

”サービスを止めない”は実現するのか?
HCI(ハイパーコンバージドインフラ)による刷新効果

MicrosoftのHyper-VおよびDell EMCのHCIを採用した理由を、佐藤氏は次のように語る。「サービスの停止期間を最小限に留めるために、従来環境との親和性を重視しました。仮想ベースを変えてしまうとデータのエクスポート以外にコンバート時間が余計にかかり、数時間で済むところが数日作業になるなど、移行期間が長くなってしまいます。そこで、従来環境と同じHyper-Vを採用しました。コスト面でもWindows Serverのライセンス費用のみで導入できる点は大きなメリットでした」

佐藤氏は、当初課題として挙げていたストレージの運用管理性について、大きな成果があったと語る。「ストレージがAzure Stack HCIでサーバーだけで仮想化されたことで外付けストレージ専用機器メンテが不要になりました。さらに、ストレージ専用の管理ソフトウェアやエージェントソフトの利用が不要になり、容量管理もしやすく、運用負荷が大きく削減されました」

またサービス提供基盤であるが故の移行期間の短さにも貢献したと続ける。「法人サービス、中でも公共交通事業者に提供するサービスは、停止が許される時間帯は深夜から明け方まで、終電から始発までの数時間しかありません。その点でも、今回の選択は正解でした。OSのデプロイ、Hyper-Vの構成、AD環境の連携、S2Dストレージの初期設定などはすべてDell EMC側で実施してくれて、当社側の作業はゲストOSの移行のみで、導入もラクでした。また、Windows Server 2012 R2からのオンラインエクスポートによって移行もスムーズでした」

HCIによるサービス基盤刷新の、
経営観点でのメリットとは?

「お客様へ提供するサービスの基盤で最も重要なのは、安全性とダウンタイムの少なさです。その点、HCIはストレージ機器が削減されて構成がシンプル化し、その結果、障害発生時の切り分けポイントや問い合わせ先も少なくて済みます。加えて仮想サーバー間のデータの移行も、万一の際に備えるフェイルオーバーの仕組みも構築しやすく、ハードウェアのメンテナンス性も向上するなど、障害に強く、サービスを止めずに済むシステムと言えると思います。今後、増設が必要な際も、おそらくはサービスを止めずに実施できる期待があります。コストだけでみても、従来型のサーバー、ストレージ、スイッチからなる構成と比較するとHCIは機器台数が大きく削減することで、数百万から規模によっては千万円単位で安く抑えられます。利用しないともったいないですよ」と佐藤氏は語る。

一方で、佐藤氏は将来的にはバックアップにクラウドを活用したいと語る。「データ容量は今後も増大していきますので、将来的には、 Microsoft Azure をデータバックアップに活用したいと考えており、今回の刷新でそれがやりやすくなったと感じています」Windows Server 2016を用いた「Dell EMC Solutions for Microsoft Azure Stack HCI」基盤であれば、Microsoft Azureへのクラウドバックアップがボタン一つで実現する機能がある。オンプレミスとクラウドの特性を把握した上で、適材適所での利用が実現するのだ。

AI、MaaSなどサービスのデジタル変革時代に
ITインフラに求められること

最後に佐藤氏に、これから企業ITインフラのリプレイスを検討している企業へのアドバイスを聞いた。「インフラの安定性は事業継続や発展に直結します。データ量が増大しますが、ビジネスにおいてすべてをクラウド化することはコスト面からも必ずしも得策ではありませんし、法人顧客へのサービス提供インフラであればなおさら、従量型の課金はまだ難しい側面があります。一方で、オンプレミス環境もHCIを用いれば機器構成がシンプル化し、コスト効果も高い上に、運用負荷の高いストレージ課題も解消します。そして、将来に備えてクラウドとの併用も可能になる。運用性や拡張性が高まることで、サービスの継続性や提供スピードも速まります。そのためにはHCIなどの新しい技術の積極的な採用と、ソフトウェア、OSを常に最新に保つことも重要です」

ジョルダンでは今後、AIを活用したMaaSサービスの提供を計画しているとのこと。路線バスなどの車両内の画像をAIで解析し、混雑情報や代替え輸送手段を案内する、といったサービスだ。こうした次世代型サービスの開発や提供においても、柔軟で拡張しやすく、安定した基盤環境がさらに求められる―

関連リンク

ジョルダン株式会社 法人サービス
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