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今後、企業が勝ち残っていくためには、データを収集、活用し、うまくマネタイズして新たな価値を創出するビジネス変革が必要だ。そのための手法としてクラウドに注目が集まりがちだが、現実的な課題は「現場のデータとクラウドをいかにミックスさせてDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するか」である。そう、ハイブリッドクラウドの利用にはオンプレミスシステムを進化(モダナイゼーション)させる必要があるのだ。マイクロソフトは、Windows Server 2019 のテーマの1つにHCIを掲げ、2019年3月、Azureファミリーに「 Azure Stack HCI ソリューション」を加えた。今回は日本マイクロソフトのクラウド&エンタープライズ本部の佐藤 壮一氏とパートナー事業本部の高添 修氏に、Azure Stack HCI がビジネスにもたらす真の価値について語っていただく。

Windows Server 2019 の「今までにないHCI」

Windows Server 2008 および 2008 R2 のサポートが、2020 年 1 月 14 日に終了する。次期バージョンである Windows Server 2019 (2018年10月リリース)は、「オンプレミスな環境とAzureをつなぐオペレーティング システムである」という特長を持つ。

Windows Server 2019 は、以下の4つのテーマを掲げている。

中でも注目すべきは、今回取り上げる「今までにないハイパーコンバージドインフラ(以下、HCI)だ。

「スピード」と「アジリティ」。ビジネストレンドとITプラットフォームの在り方

図: 2020年までに、あらゆるものからデータが生まれる


日本マイクロソフト株式会社
マーケティング&オペレーション部門
クラウド&エンタープライズビジネス本部
プロダクトマネージャー
佐藤 壮一氏
2020年までに、あらゆる場所でデータが生まれる。いわゆるIoT、データ×AIで得られることは、
・ 確実で再現性の高いデータがリアルタイムに把握でき、より正確な知見が得られる
・ 自動化され高速に回るPDCAサイクルを構築できる
ということであり、真の目的は、データドリブン、DX化することによってビジネスの「スピード」と「アジリティ」を高めることにある。

そして、そのために最適な手段、プラットフォームとしてクラウドが評価されている。プラットフォームをクラウド化することで、新たなビジネスモデルやグローバルビジネスの立ち上げとクローズといったチャレンジを、コスト効率を高めつつ瞬時に、あたかもDevOps的に行うことができる、ということがクラウド利用のベネフィットである。

しかし・・・現実問題として、ビジネス上のあらゆる場所でデータが激増するということは、すべてがクラウドで完結することはあり得ず、オンプレミスのインフラを無視できないことは、多くの企業、特にIT部門が実感していることだろう。さらに、データの発生現場であるオンプレミスのエッジにおいても、インテリジェント機能を装備する必要に迫られている。

DXやビジネスモデル変革が求められるこれからの時代、もはやオンプレミスにこれまで通り多額の投資を行うことはできない。そのため、オンプレミスのインフラも、クラウド時代のスピードに適合して、全体最適でパフォーマンスと、業務及びコスト効率性を高める「モダナイゼーション」が求められている。Windows Server 2008 のEOSをきっかけにしたこの乗り換えのタイミングこそ、その好機と捉えることが肝要なのだ。

マイクロソフトのハイブリッドなプラットフォーム戦略

これらの課題に対応するべく、マイクロソフトは、お客様の用途、目的に応じて、クラウド、オンプレミス、ハイブリッドを選択して利用可能なプラットフォーム戦略を推進している。

図:Azureハイブリッド プラットフォーム

<Azure、Azure Stack、Azure Stack HCI の違い>

  • Azure:「パブリッククラウド サービス」としてオンデマンドのセルフサービス コンピューティング リソースを利用し、既存アプリの移行や最新化、新たなクラウド ネイティブ アプリ開発を行うことが可能。
  • Azure Stack:一貫性のあるAzureサービスをオンプレミスで利用する「プライベートクラウド」。クラウドに非接続時もエッジにおいてクラウド アプリケーションを構築して実行することや、特定のセキュリティ要件や業界規制への対応を可能にする。
  • Azure Stack HCI:「オンプレミス」で仮想化アプリケーションを実行したり、老朽化したサーバのリプレイスおよび統合、そしてAzureに接続してクラウド管理サービスによる統合管理を実現する。

図:ハイブリッド アプローチ

これをユーザー視点で捉えると、上図の左にある「一貫性のあるクラウド サービスをオンプレミスに提供」がAzure Stack。そして右にある「パブリッククラウドに接続されたオンプレミスリソース」が、Azure Stack HCI の役割、ということになる。

言い換えるとAzure Stackはオンプレミスでクラウドと同じものを利用するために提供されており、Azure Stack HCI はその逆のアプローチで、オンプレミス側からクラウドに接続して、オンプレミスとクラウドのそれぞれの良さを活かしていくアプローチ、ということだ。

それ故、Azure Stackと Azure Stack HCI は競合するものではなく、共存できるもの、なのである。

改めて、HCIのメリットとは?

Azure Stack HCI について説明する前に、一般的なHCIの概要および利点について、解説しておこう。

HCIとはハイパーコンバージドインフラストラクチャの略称で、従来型のネットワーク、コンピューティング(サーバ)、ストレージからなる”三層構造”を仮想化技術によりシンプル化。さらにハードウェアメーカーの動作検証済機器を導入するだけで、すぐに利用開始できるソリューションだ。

図:HCI概要図

HCIにより解決する課題は、

  • 管理性:複数のハードウェアや管理コンソールを一元化することで単一ポイント化
  • 拡張性:組み合わせと検証済みの機器のため、増設、スケールアウトが容易
  • 省スペース:物理的な機器がシンプルであり、ラック占有率が大きく低減

などが挙げられる。オンプレミスにおいても、最新のハードウェア×ソフトウェアでビジネスにスピードとアジリティをもたらすという意味で、注目のソリューションという訳だ。

Azure Stack HCI とは ― 他社比較の優位点

Azure Stack HCI *は、Windows Server 2019 ベースの仮想化基盤Hyper-Vと、記憶域スペースダイレクトを利用した、ハードウェアメーカー検証済みのHCIソリューションだ。 Microsoft の SQL Server は当然として、既存オンプレミスのレガシーアプリやIoTのエッジ側製品にも対応できる。

*Windows Server 2016に実装されていたHCI実現機能「Windows Server Software Defined(WSSD)」のリブランドソリューション。

加えて Azure Stack HCI には、他社のHCIと比べて数々の優位点がある。

①低価格

Azure Stack HCI はWindows Server 2019 の標準機能として提供されるため、追加ライセンスやソフトウェアなどの購入が不要。HCIと仮想化ライセンスが Windows Server Datacenterエディションのライセンスに含まれているため、Windows Server 2019 導入企業は、追加コストなく利用することが可能だ。

図:他社HCIとのコスト比較

②圧倒的なパフォーマンス

インテルの最新ハードウェアにOSネイティブで対応するなど、仮想化基盤としてハードウェアのスペックを最大限に活かすことで実現する高速化も優位点だ。マイクロソフトとインテルが共同で検証した結果、約1380万IOPSという数値結果が叩き出された。他社オールフラッシュ(SSD)HCIが100万IOPSで「高速」とされる中で、このパフォーマンスの高さは文字通り“桁違い“であり、圧倒的だ。

図:IOPS検証結果

*IOPS:ディスクが1秒当たりに処理できるI/Oアクセスの数。1回のI/O処理時間は平均アクセス時間とデータ転送時間を足した数値であり、このI/O処理が1秒当たり何回実行できるかがIOPS。この数値が高ければ高いほど高性能なディスクと言える。

③一体的で高い運用管理性

Azure との連携も含めてカバーするサーバ管理ソリューション「Windows Admin Center(WAC)」により、Azure Stack HCI は既存の Windows Server やAzureとの一体的な運用が可能である点も、将来にわたって業務効率化に大きく貢献する。

図:Windows Admin Center管理画面

④Azureファミリーとしてのハイブリッド性

Azure と統合して、クラウドベースのバックアップ、サイトの回復、監視などのハイブリッド機能を利用できる。ファミリーとしての連動性は強く意識されており、「Azure Site Recovery」、「Azure Backup」、「Azure Monitor」、「Azure Automation」などと密に統合できるように設計されている。データバックアップや、仮想マシンの災害対策、Windows Serverの更新管理などにおいて、オンプレミスorクラウドを意識することなく、シームレスな運用管理が実現する。

図:Azureサービスとの連携

⑤セキュリティ

マイクロソフトはセキュリティ関連に年間10億ドルを投資。ベースとなる Windows Server 2019 において「Windows Defender」による高度なマルウェア検知および、「Windows Defender Advanced Threat Protection(ATP)」によるサイバー攻撃やデータ漏えいの検出に加え、「BitLocker」で仮想マシンの保護を実装するなど、先進のテクノロジーによりデータセンター仮想基盤を保護するセキュリティを提供している。

図: Azure Stack HCI セキュリティ

Azure Stack HCI の導入に最適なユーザー、タイミングとは?


日本マイクロソフト株式会社
パートナー事業本部
パートナー技術統括本部
ソリューション開発技術本部
パートナーソリューションプロフェッショナル
高添 修氏
一つはシンプルに、老朽化、保守切れを迎えるハードウェアの更新タイミング。もう一つは、仮想化基盤としてのサーバ インフラストラクチャの統合タイミングである。従来型のサーバおよびストレージ個別の構築および保守運用負荷が課題であれば、まさにそれらの課題を Azure Stack HCI が、モダナイゼーションにより解消する。

そしてもう一つ、現状及び将来にクラウド利活用プランがある場合にも最適だ。現状クラウド利用のボリュームがまだ少なく、いきなりAzure Stackまでは必要がない、という状況であっても、まずはオンプレミス環境をAzure Stack HCI にすることでクラウド管理機能の利用が可能になり、今後のハイブリッド、マルチクラウド環境への推進イメージがクリアとなる。

コラム<中小企業や拠点利用にも最適な『真の2ノードHCI』>

さらに Azure Stack HCI は、中小企業や拠点(リモートオフィス、ブランチオフィス)での利用にも有効な機能がある。SMB(Server Message Block)2.0対応の「USB Witness」ルータを用いて、スイッチレスで2台のサーバ間10GbE、アップリンク1GbEの冗長性を担保した“真の”2ノード構成が低コストで実現できる。

Azure Stack HCI の導入方法~パートナー企業15社からのソリューション提供

2019年3月26日から、全世界でMicrosoftのパートナー企業15社を通じて Azure Stack HCI ソリューションの提供が始まっており、日本では6社が該当している。利用には「Windows Server 2019 Datacenter Edition」と「Windows Admin Center」が必要だ。前述の通り「ハードウェアメーカー検証済みのHCIソリューション」であり、既にパートナーから提供される70種類以上の Azure Stack HCI ソリューション製品のリストが公開されている。

図: Azure Stack HCI ソリューション購入方法

図: Azure Stack HCI ソリューション&ハードウェアパートナー

今回は、いま企業が取り組むべきオンプレミス インフラのモダナイゼーション手法として、最初に検討すべき Azure Stack HCI の概要と特長について解説した。
 次回以降、パートナーであるハードウェアメーカー各社のソリューションの紹介や、導入企業の事例について順次、紹介していく予定であるので、引き続き注目して欲しい。

関連リンク

Azure Stack HCI の発表:Azure Stack ファミリの新メンバー
https://azure.microsoft.com/ja-jp/blog/announcing-azure-stack-hci-a-new-member-of-the-azure-stack-family/
Azure Stack HCI solutions(英語)
https://azure.microsoft.com/ja-jp/overview/azure-stack/hci/

パートナーリンク

Microsoft Azure Stack HCI 向けのソリューション | Dell EMC Japan
https://www.dellemc.com/ja-jp/solutions/software-defined/microsoft-wssd.htm
HPE Solutions for Microsoft Azure Stack HCI
https://www.hpe.com/us/en/alliance/microsoft/azurestackhci.html
Microsoft Azure Stack HCI 認証について:Windows情報| 日立
http://www.hitachi.co.jp/products/it/windows_os/support/ws2019/ashci.html
ThinkAgile MX 認定ノード| レノボ
https://www.lenovo.com/jp/ja/data-center/software-defined-infrastructure/ThinkAgile-MX-Certified-Node/p/WMD00000377
Azure Stack HCI :Windows ServerのHCI - NEC Global
https://jpn.nec.com/windowsserver/s2d/azurestackhci.html