積水ハウスが着実に業績を伸ばしている。2014年度の中期経営計画の最終年に当たる2017年1月期の連結業績は
初の売上高2兆円に到達する見込み。住宅建設の「請負型ビジネス」主体の事業構造から、3本柱の事業で
収益を支えるグループ戦略に大きくかじを切りながら同社を率いてきた阿部俊則社長に、今後の展望を聞いた。

(聞き手は、日経ビジネス発行人 高柳正盛)

大胆なグループ戦略へ転換 グループシナジーを実感

――3月の2014年度中期経営計画の総括、新たな中計の発表に向けて大詰めのときを迎えていることと思います。

当社のビジネスは典型的なドメスティック産業であり、景気の影響を受けやすいという特性がある中で、一定の手応えを感じた3年間でした。かつては住宅建設が売り上げの8割を占めていましたが、リーマンショックで戸建て住宅一辺倒のリスクに直面し、ダイナミックな構造改革に踏み切りました。中計では、8つの事業セグメントにおいて、戸建てや賃貸住宅の建設である「請負型ビジネス」、リフォーム事業の「ストック型ビジネス」、都市再開発事業などの「開発型ビジネス」の3事業を収益の柱とする基本方針を打ち出し、積和不動産や積和建設、積水ハウスリフォームなどのグループ企業との連携を強化させてきました。現在、グループ企業の売り上げ、そして人的資源が全体の4割を超え、確かなグループシナジーが生まれてきました。

グループシナジーの強化による“住”関連ビジネスの新たな挑戦

――2016年は英国EU離脱問題、トランプ米大統領誕生とその後の株価の安定推移など、予想外の出来事が頻発。未来予測が極めて難しくなっています。

長期的視野での信念に基づいていなければ、正しい判断はできない時代です。長期的に自社の強みをさらに強くしていくために、変えてはならないものと変えるべきものを見極める必要があります。私たちはいつも企業理念の根本哲学である「人間愛」に立ち返ります。当社は徹底的にCS(顧客満足)にこだわることで成長してきましたが、そのCSを実現するのは社員であり、社員の幸せが原動力となっています。そのため、どのようなときも「まずは社員」という考え方に立脚し、人材育成に最も神経を使います。

――女性の人材育成に積極的な企業という印象もあります。

2006年に「女性の活躍推進」を人事基本方針の一つの柱とし、専任チームを設置して「女性のキャリア推進」「両立サポート」「働き方改革」に力を入れてきました。きめ細かさなど女性ならではの仕事に対する期待もありますが、それ以前の話として、超少子高齢化の日本において女性は性差に関係なく極めて重要な戦力なのです。女性人材に対し「あなたが本当に必要なんだ」というメッセージを常に発信し続け、女性の人材育成を丁寧に行える幹部の下に配置しています。また、いち早く「遅くまで仕事をする現場に未来はない」と、残業削減にも力を入れてきました。

全国を網羅する「施工力」と高付加価値の「商品力」
高級外壁材「ダインコンクリート」の家として1984年に登場し、30年来進化を続けるイズ・シリーズ。風格のあるたたずまいは、街の財産として愛され、鉄骨2階建ての8割を占める標準仕様となっている

――建設業界全体は、活況を呈する一方で人材不足にあえいでいます。

1980年代に100万人いた大工は、現在40万人以下。建設業は施工力なくして生き残れない時代です。その点、積和建設を擁する当社には、施工会社を持つ唯一の住宅メーカーとして大きなアドバンテージがあります。さらに、創業以来協力工事店が「運命協同体」として強い信頼関係で結ばれた任意組織「積水ハウス会」の存在も大きい。全国の協力工事店約7000社が加盟しており、仕事を平準化しながら安定的に施工業務を遂行しています。


都会の狭小地にも3・4階建てを実現する「βシステム」構法を独自開発。高さ60mの高層ビルと同じ耐震基準で、2.5mオーバーハングなど自由度の高い設計を実現する

――そのほかに、さらに強化していく強みとは何でしょうか。

ニーズではなくウオンツを重視した「商品力」に絶対の自信があります。戸建てでは美しさと強度を兼ね備えたオリジナル外壁「ダインコンクリート」や陶版外壁「ベルバーン」などを備えた中高級ラインが主力となっているほか、環境と街並みに配慮した分譲マンション「グランドメゾン」も好調です。また、独自の重量鉄骨構造により、都市部でデザイン性の高い3・4階建てを短工期で実現。戸建てでも賃貸でもフレキシブルに対応可能です。これは住宅建設のイノベーションであると自負しています。


環境配慮にも引き続き注力していきます。エネルギー収支をゼロ以下にする住宅「グリーンファースト ゼロ」の普及率は72%になりました。昨年のCOP22において、公式会議「ビルディング・デイ」で当社は日本企業で唯一事例発表を行いました。地球温暖化防止をはじめとする社会課題の解決に寄与しながら、社会に調和した状態での事業拡大を引き続き目指していきます。

積水ハウス