仕事の右腕、ならぬ“左腕”ビジネスパートナーとしての腕時計再考

腕時計が単なる時刻表示装置であった時代は終わった。
現代において、それはする者の生き方、考え方を代弁する存在になりつつある。だからこそ、名経営者は腕時計選びに真剣になる。
もしかすると、これからのビジネスの正否を占うのは、腹心の“右腕”ではなく、左腕に巻かれた腕時計かもしれない。

“リスク回避”を前提に、
時計も電池不要の機械式を選ぶ

マネックスグループ 代表執行役社長CEO

松本 大 氏

文=辻 啓子 写真=山下亮一

マネックスグループ 代表執行役社長CEO 松本 大 氏
グランドセイコー メカニカルGMT 10周年記念限定モデル

「グランドセイコー メカニカルGMT 10周年記念限定モデル」はメカニカルGMTの発売から10年後の2012年に発売された。文字盤には濃紺の「グランドセイコーブルー」を採用。

「金融人の時間的中心はニューヨーク。GMT針を一度そこに合わせておけば、日本時間と同時に表示できるので便利です」こう話すマネックスグループ社長の松本大氏は、グランドセイコーの「メカニカルGMT 10周年記念限定モデル」を愛用している。「機械式」と「GMT」に惹かれ、2012年の発売直後に購入した。

「以前はグランドセイコーのクオーツを使っていました。でも、本来はメカニカルが好き。マニュアル車が好きだし、ニコン最後のフルメカニカルカメラは買いに走りました。正確さで信頼のおけるクオーツはセイコーの大発明だと思いますが、電池が要るのが私にはね……」

 何事も“リスク回避”を前提にしている松本氏は、スマートフォンが壊れても困らないようにと手帳も使い、飛行機移動の際には荷物の紛失を避けるため極力機内に持ち込む。時計も電池切れの心配がない機械式が安心なのだという。

 そもそも松本氏にとって時計は実用的な「道具」。目立ち過ぎるのは好まない。

「投資家とのミーティングでは、主役は投資家。私の時計に注目が集まるのは避けたい。この限定モデルは文字盤が濃紺だから日本人の肌の色になじみ、悪目立ちしません。カジュアルにもフォーマルにも合い、シーンごとに時計をつけ替えるのが面倒くさい私にはちょうどいい」

 この時計を雑誌で見た際、グランドセイコーが完全ジャパンメイド(完全自社生産)であることも知り、俄然惹かれた。

「海外の時計店に立ち寄ると、店の人からよく『それグランドセイコーだね』と声をかけられます。丈夫な作りや少し和テイストのデザインは、海外でも人気が高い。世界に通用するブランドだと思います。当社もそうありたいですね」

 創業以来、お金との新しいつきあい方を提案してきた松本氏。先頃、2年ぶりにグループ傘下のマネックス証券社長に復帰し、仮想通貨の基幹技術「ブロックチェーン」を活用したサービスの提供に力を入れると発表した。同時に独自のブロックチェーンの開発と、その仮想通貨技術を使って資金調達する「ICO」も視野に入れることを明らかに。最前線に戻った松本氏の新たな試みに、注目が集まる。

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