仕事の右腕、ならぬ“左腕”ビジネスパートナーとしての腕時計再考

腕時計が単なる時刻表示装置であった時代は終わった。
現代において、それはする者の生き方、考え方を代弁する存在になりつつある。だからこそ、名経営者は腕時計選びに真剣になる。
もしかすると、これからのビジネスの正否を占うのは、腹心の“右腕”ではなく、左腕に巻かれた腕時計かもしれない。

当時の最先端技術が詰まる、
義父から譲り受けた時計

アスミック・エース代表取締役社長

佐野真之 氏

文=岡田麻美 写真=今江寿之

アスミック・エース代表取締役社長  佐野真之 氏
セイコー「AGS」搭載機/ブルガリ「アルミニウム」

右は1988年の発売当初、画期的な発電・蓄電機構が注目されたセイコー「AGS」搭載機。
左は98年発売のブルガリのスポーツモデル「アルミニウム」。斬新な素材使いが話題に。

 今夏公開し、週間興行収入1位を獲得した『関ヶ原』の製作など、映画の企画や配給で知られるアスミック・エース。2012年にケーブルテレビ、インターネット事業を展開するジュピターテレコム(J:COM)の一員となった。社長の佐野真之氏は言う。

「アスミック・エースは映画やアニメを中心に、1本1本の作品を職人的に作り上げてきた会社。一方J:COMは市場で何が売れるかに注目し、サービス面を軸に動画作品と向き合ってきた会社です。全然違う考え方を持つ人々が一つの企画を一緒に議論するようになり、文化と視点が混ざり合って他社にはないダイナミックな仕事につながっています」

 統合から5年を駆け抜け、佐野氏の幾多の正念場を見届けてきた愛機は、セイコーの「AGS」を搭載した一本。他界した義父から譲り受けたものだ。ローターが回転することで、自動で発電・蓄電されるクオーツ時計で、1988年の発売当初、その画期的な機構は大きな注目を浴びた。

「義父は理系の人だったので、当時の最先端の技術に興味を持っていたようです。生前、仕事に対するアドバイスをよくもらっていたんです。仕事に向かう姿勢みたいなものを学びましたね。だからこそ、大事なプレゼンや映画祭に挑むときに身につけると、義父がそばについていてくれるようで心強く、落ち着きます」

 ブルガリの「アルミニウム」も、義父から結婚のお祝いとして贈られたもの。

「ケースはアルミ、ベゼルはラバーという斬新な素材使いと、モダンなデザインが非常に気に入っています」

 新技術やデザインで世界をあっと言わせたAGSやアルミニウムと同様、佐野氏は統合後、特に動画配信分野で事業に新しい風を吹き込んでいる。

「情報が氾濫する中で、我々は埋もれない、強くて新しい作品を生み、発信することを目指しています。例えば、中国やアジアに向けてはアニメのライツ事業に力を入れ、配信だけでなく映画化やフィギュア制作など多角的に展開。プラットフォームを持つ強みを生かし、独自の魅力を持つオリジナルコンテンツを海外にも配信したいと考えています」

PC向けページを見る