2018年7月4日から6日の3日間、東京・品川で開催されたエシカルサミット「エシカル2018」は、一般社団法人日本エシカル推進協議会が主催し、今回が記念すべき1回目となる。エシカルとは「倫理的な」という意味で、特に「エシカル消費」という言葉で知られている。商品を購入する際に倫理的な側面も考慮する消費を指し、そういった消費者の増加に伴い、エシカルな調達や製造に取り組むメーカーも増えている。このようなエシカルな企業活動に賛同する多くの企業などが集い行われた「エシカル2018」において、エイピーピー・ジャパンの代表取締役会長 タン・ウイ・シアン氏が講演した。

エイピーピー・ジャパン(APPJ)は、インドネシアの世界的な製紙会社APPグループの日本での販売会社として、伊藤忠商事とともに1997年に設立された。コピー用紙などの情報用紙や書籍・雑誌などの印刷用紙、パッケージなどの産業用紙を提供。関連会社のユニバーサル・ペーパーによるティッシュペーパーやトイレットペーパーなどの家庭紙も展開している。

APPグループは、インドネシアの複合企業「シナルマス」グループの一員で、1970年代に創業。6大陸150カ国以上で製品を販売し、紙、パルプ、加工製品の年間合計生産能力は約2000万トン。世界総収入は1.5兆円にものぼり、従業員はインドネシアと中国での直接雇用だけで7万9000人以上、関連産業で働く人も加えると100万人を超える。

APPは、創業以来インドネシアの森林規制を順守し、合法的な植林開発を行ってきた。しかし、2000年代に入り、国際環境NGOなどから森林破壊に加担しているといった厳しい批判を受けた。そこで、APPは環境方針の大転換を決断。環境経営へと舵を切り、2012年には「持続可能性ロードマップ Vision2020」を制定。その内容は、認証材や植林木などの原料調達、気候変動抑制のためのCO2排出量削減、森林再生と生物多様性保全の支援、地域社会紛争の解決など多岐にわたる。Vision2020について、タン氏は、「2015年に国連サミットで策定されたSDGs(持続可能な開発目標)は、Vision2020と密接につながる内容で、強く激励された」と語っている。

さらに、2013年には森林保護方針(FCP)を誓約。自然林伐採ゼロ、泥炭地管理、地域コミュニティとの関わり、責任ある原料供給会社となることを、世界に対して約束した。今年5年目となるFCPについてタン氏は、「課題に直面しながらも、着実に誓約を実行してきた」と振り返る。植林地110万ヘクタールを含むAPPのコンセッションのすべてにおいて、宣言直後から自然林伐採を即時中止し、現在に至っている。

CO2排出量削減の促進と絶滅危惧種の生息地保護を目的とする泥炭地管理については、泥炭地上の7000ヘクタールに及ぶ商業植林地を閉鎖したほか、水位を上昇させる堰堤(ダム)を5000カ所以上建設するなど、着実に成果をあげている。

※ コンセッション:インドネシアの森林は大部分が国有林である。各企業は国や州政府からその使用権を得て利用するが、そのエリアのことをコンセッションという。

貧困が原因となり違法伐採や焼き畑農業につながることから、地域住民が森林破壊をしなくても生活ができるよう地域コミュニティを支援する事業を立ち上げた。総合森林農業システム(IFFS)を策定し、APPが資金提供、技術指導、販売支援などを行い、地域住民の代替生計手段確保に向けて協力を続けている。2018年3月現在IFFSプログラムは191の村で実施されており、その恩恵は1万3814世帯に及ぶ。最終的には500村での実施を目指している。

責任ある原料調達に関しては、世界最大の森林認証であるPEFCやインドネシアにおける森林認証であるPHPL、LEIを取得。自社のみならず原料供給会社に対してもFCP順守とリスクアセスメントの徹底を義務付けている。

火災による森林消失を防ぐため、森林火災対策にも取り組んでいる。2015~2017年に8000万ドルを投入し、2700名の消防隊員、消火ヘリ6機、消防車34台、放水ポンプ698台を配備。これにより、コンセッションの森林火災は、前年に比べて大幅に減少した。また、地域コミュニティと協力して実施することで、住民の防火意識の向上にもつながっている。

さらに、APPが立ち上げたベランターラ基金による環境保護活動もある。これは、2015年にAPPが資金を提供して設立し、その後5年間毎年1000万ドルを活動資金として供出しているが、現在は独立した助成金提供団体となっている。インドネシアの重要な景観地域10カ所で森林を保護し、同時に地域経済発展を支援する活動を続けている。他の資金提供者による寄付も募集しており、資金の使途又は用途に関する妥当性を担保するため、プロジェクトごとの外部監査を導入している。

エイピーピー・ジャパンは、経団連をはじめとする日本の経済団体のほか、日本エシカル推進協議会をはじめとする環境経営にフォーカスした団体にも加入している。日本のステークホルダーとのさまざまな活動を実施しているが、なかでも力を入れているのが、2014年から続くスマトラ島での植林活動だ。2014年、横浜国立大学の宮脇昭名誉教授がAPPを訪問。APPの植林地と自然林保護区を視察し、植樹を実施。APPが取り組む森林保護・再生への支援を約束されたことから、その志を引き継ぎ、毎年日本から多くの協力者が参加し、植樹活動を行っている。2018年も9月に実施することが予定されている。

エコプロダクツ展にも積極的に出展しており、エコプロダクツ国際展では2年連続の大賞を受賞(2016年タイ、2017年ベトナム)。2018年のEcoVadis社によるサステナビリティ調査において2年連続「ゴールド」評価を取得するなど、環境アワードも多数受賞している。

最後にタン氏は、「これからも誓約を着実に実行に移し、環境保全に努めていきます」と講演を締めくくった。

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