IFFSプログラムに参加する農民のひとり、リアウ州シアク県トゥアラン区ピナン・セバタン・バラット村の農家スリヨノ氏は、油ヤシの栽培から、ホウレンソウやキュウリなどの野菜やメロンやパパイヤなどの果物栽培に切り替えた。切り替えを始めた当初、コンスタントに収穫が得られるようになるまでは、APPなどが運営する「地域コミュニティ発展および訓練センター」による長期低利貸し付けや助言などに支えられた。その結果、スリヨノ氏は無事野菜や果物栽培への転換を実現。月収が油ヤシを生産していた時の200万~300万ルピア(約1万5000~2万2000円)から、1500万ルピア(約11万3千円)へと大幅にアップ。地域の人々に畑を管理する仕事を提供できるまでになっている。

スリヨノ氏は、2016年にはモロッコのマラケシュで開催された国連の気候変動枠組条約第22回締約国会議(COP22)に際してスピーチを行った。「こうしてここでお話して他の農民の皆さんを励ますことができるなんて、まるで夢を見ているようです。適切な栽培による土地の管理は、かつて私が行っていたこと(ヤシ栽培)より利益になるということを農民仲間に強く訴えたいと思います」と語っている。

野菜や果物の栽培だけでなく、米栽培や牧畜、魚の養殖などでの成功者も増えており、地域は確実に豊かになっている。このように、地域住民の貧困が少しずつ解消されていくにつれ、住民による焼畑農業も減少し、2015年には5%以上あった、APPのサプライヤーの保護地域のうち第三者による森林伐採によって失われた自然林の割合が、2017年には0.1%にまで減少している。

森林火災の減少には、森林火災対策の取り組みも貢献している。APPは、2015~2017年に8000ドルを投入し、2700名の消防隊員、消火ヘリ6機、消防車43台、放水ポンプ698台を配備。地域コミュニティと協力することで、住民の防火意識も向上している。

インドネシアの国全体で見ても、2017年には森林・泥炭火災の発生数が激減した。2017年の火災は2411カ所で、2015年の7万900カ所と比べて97%減となっている。すべてがAPPの活動の成果ではないし、自然要因もあろうが、着実に効果は出ているといえるのではないだろうか。

2014年、スマトラ島を視察した「植樹の神様」宮脇教授。1万本植樹プロジェクトはこの時にスタートした

2018年9月7日には、日本からのボランティアが参加して1万本のフタバガキ科の苗木をスマトラ島の自然保護区で植樹するというイベントが実施された。これは、APPとAPPジャパンによる森林再生プロジェクトの一環で、2014年以降毎年植樹が実施されており、今年で5回目を迎えた。

きっかけは、FCPの一環として、2014年4月にインドネシアの熱帯雨林の保護・再生支援活動を発表したAPPが、同年秋に植物生態学の世界的権威である横浜国立大学の宮脇昭名誉教授を招聘したことだった。スマトラ島の自然保護区などを視察した宮脇名誉教授が、植樹による自然林再生の可能性を確信し、地域固有種であるフタバガキの植樹活動を提案されたのだ。

在日本インドネシア共和国大使館林業部長
リバ・ロバニ氏

今回の植樹イベントは、インドネシアと日本の国交樹立60周年の記念イベントのひとつとして認知され、日本とインドネシアの企業に加え、国際熱帯木材機関(International Tropical Timber Organization/ITTO)やインドネシア政府も参加。式典で、在日インドネシア共和国大使館林業部長 リバ・ロバニ氏は、「SDGsは、すべての人にとって、より良い、より持続可能な未来を実現するための設計図のようなものです。SDG13『気候変動に具体的な対策を』とSDG15『陸の豊かさも守ろう』という2つの目標に沿って、地球の大切な自然資源の保全という人類共通の目標に取り組むこうしたパートナーシップを拝見できて、嬉しく思っています」とあいさつした。また、日本環境ビジネス推進機構代表理事の神谷光德氏は、「インドネシアと日本は長年にわたって特別な関係を築いてきました。今日ここで植える木々のように、2つの国の関係がより親密により強固になって育っていくことを希望します」と述べた。

日本環境ビジネス推進機構
代表理事 神谷 光德氏

APPタン会長と共に植樹を行う神谷氏

植樹には日本全国から26人のボランティアも参加。なかには、大雨や台風に見舞われた西日本や、出発当日朝に北海道胆振東部地震に見舞われた北海道からの参加者も。インドネシアの人々と共に植樹に汗を流した。

地域コミュニティのボランティアと共に植樹を行う酒井さん親子

当日は、IFFSプログラムにより生計手段を野菜や果物栽培に転換した地域住民が、栽培した野菜や果物を参加者に振る舞った。環境の改善は、CO2排出削減や自然エネルギーの活用、植林など、それぞれ単体で行ってもその効果は限定的だ。特に自然環境にとって最も脅威となり得る人の営みを併せて考えていかなければ、継続的な改善は見込めない。その意味でこのツアーは、自然の再生と地域住民の生活を共に考える機会として、参加者に貴重な学びを与えたに違いない。

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