2014年12月に「まち・ひと・しごと創生法」が施行され、内閣設置の法定組織として「まち・ひと・しごと創生本部」が発足した。この本部の通称が「地方創生本部」である。大都市集中の呪縛を解く地方のあり方、そこでの暮らしのあり方、そして暮らしを支える仕事のあり方。それらに総合的に取り組んでいこうという政策だ。そこに大きく貢献しているのが軽自動車だという。具体的にはどういうことなのか。全国軽自動車協会連合会会長・堀井仁氏に話を伺った。

一般社団法人 全国軽自動車協会連合会 会長

堀井 仁氏

1978年 滋賀大学経済学部卒業 同年 ダイハツ自動車販売株式会社(現、ダイハツ工業株式会社)入社。2006年 同社執行役員、2014年 専務執行役員(営業本部長)、2015年 取締役専務執行役員を経て、2016年よりダイハツ東京販売(株)、埼玉ダイハツ販売(株)、ダイハツ千葉販売(株)3社の代表取締役会長を務める。ダイハツ工業(株)在職中、通算19年間にわたる販売会社への出向を経て、販売の最前線を経験し、営業マン・拠点長・代表者などを歴任。2017年より現職。

地方の活力を担う
交通基盤としての軽自動車

 軽自動車は、昭和24年に規格が生まれて以来、主に排気量の規定変更(360cc以下→550cc以下→660cc以下)を経て、さまざまな社会的ニーズに応えてきた。全長3.4m以下×全幅1.48m以下×全高2.0m以下のコンパクトなサイズゆえに、省エネルギー性に優れ取り回しが楽で、さらに今ではさまざまな安全装備も搭載され独自の個性をも生み出している。

一般社団法人全国軽自動車協会連合会(以下、全軽自協)のキャンペーン・スローガンは「幸せに、気づく。未来を、築く。日本の原動力、軽自動車」というものだ。堀井会長は言う。

「軽自動車はまさに日本の原動力であると思っています。ライフラインとしての役目を果たしている。とくに公共交通機関の整備が都市部ほどではない地方において、軽自動車がそれに代わって人々の生活を支えています」

東京・名古屋・大阪・福岡などの都市部と違い、一家に一台ではなく、一人に一台、車があることで成り立っているのが地方都市である。それは一人ひとりの移動の自由を担保するものであり、それが経済活動や地域のネットワークづくりの土台をつくっているのだ。

 

「一家に4台、5台という光景も珍しくありません。それが私が長年、営業の現場で見てきた日常です」

出典:公共交通機関利用率:「平成22年国勢調査」 従業地・通学地による人口・産業等集計結果」(総務省)を基に算出
1世帯あたり軽自動車保有数台数:全軽自協「軽四輪自動車保有台数と世帯当たり普及台数」(平成29年12月末現在)

全軽自協の取り組みではないが、軽自動車が地方に根付いている一例として「軽トラ市」がある。地元の商工会が中心となり軽トラックの荷台を売り場にして定期的に青空市を開くという取り組みだ。野菜などの農産品や海産物を並べて、多いときで1〜2万の人を集め、その人出を見込んで地元の店舗も店を開ける。軽自動車はときに地域活性化のプラットフォームとなっているのだ。

「出店者には高齢者が多いんです。きっとさまざまな楽しみや励みに繋がっているんじゃないかなと私は思っています。そのような数字として見えにくい部分でも、軽自動車は地域に貢献できているのかなと思っています」

女性の活躍を多面的に支える
軽自動車の役割

たとえば、公共交通機関に頼ることができず、誰かに車を出してもらわなければ行きたい場所に行けない、という地方では、その人の活動が大きな制約を受けることになるのは言うまでもない。そうなれば経済活動の基盤が非常に脆弱なものとなってしまうだろう。とりわけ、多面的な役割をこなしている女性の活躍を支えることの意義は大きい。軽自動車はまさに、女性の生き方にも大きな貢献をしている。

「たとえば、一般的に幼稚園や保育園で働くのは女性が圧倒的に多いと思いますが、その通勤手段をみると、地方では軽自動車通勤が当たり前の光景です。勤め先やスーパーマーケットや畑に行くにも、子どもの送り迎えをするにも、普段の買い物でも、生活をまるごと軽自動車が支えています。仕事という側面だけみても、女性軽自動車ユーザーの就業率は、すべての年代で、一般女性より高いというデータも出ています」

出典:軽乗用車は「2017年度 軽自動車の使用実態調査報告書」2018年3月 日本自動車工業会
乗用車全体は「2017年度 乗用車市場動向調査」2018年3月 日本自動車工業会

軽乗用車ユーザーの67%が女性。一人の女性として、妻として、あるいは母として多くの役割を担う女性にとって、コンパクトで運転しやすい軽自動車は、気軽さと使い勝手という点で、いわば地方・地域における自転車のような存在だと言えるのかもしれない。軽自動車は気軽に女性と社会の関わりを生み出す必須アイテムなのだ。

少子高齢化の中で問われる
軽自動車のあり方

軽自動車が高齢者の暮らしを支えていることも見逃せない。軽乗用車ユーザーのうち、60歳以上のユーザー比率は10年間で約1.6倍に増えている。もう一つ、「福祉車両」の分野でも高い利用率を誇っている。自立した高齢ユーザーの支持を広げ、何らかの支援を必要としている高齢者に対しても福祉という切り口で貢献していることが伺える。

出典:「2015年度 軽自動車の使用実態調査報告書」2016年3月
「2017年度 軽自動車の使用実態調査報告書」2018年3月 日本自動車工業会

「全国の4輪の保有台数の中で軽自動車の占める割合は39%です。これを『車椅子移動車』『助手席回転式シート車』の合計でみると、その比率が45%に上がります。福祉の現場でも軽自動車が活躍していることの証左だと思います」

ある時代まで、とにかく誰もが車を手に入れやすいように、さまざまなものを犠牲にして安価であることを追求していた、いわば“我慢の車”だった軽自動車。今では、さまざまなニーズに応える装備を備え、地域で、女性に、高齢者に受け入れられている。生活者と地域に最も近い親近感のあるクルマ、それが軽自動車と言えるだろう。

全国軽自動車協会連合会では軽自動車理解促進キャンペーンを実施している

一般社団法人 全国軽自動車協会連合会

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