TOPインタビュー EY Japan カントリー・マネージング・パートナー 辻幸一氏「EY Japan、アジア太平洋で連携強化、リーダーシップ発揮へ 人材投資とデジタル投資を加速し、変化のスピードに対応」

日経ビジネスオンラインスペシャル

TOPインタビュー EY Japan カントリー・マネージング・パートナー 辻幸一氏「EY Japan、アジア太平洋で連携強化、リーダーシップ発揮へ 人材投資とデジタル投資を加速し、変化のスピードに対応」

 EYのJapanエリアはグローバルサービスを充実するため、2019年7月1日付で、アジア太平洋地域におけるメンバーファームを統括するAsia-Pacificエリアと統合する。これによりEY Japanはアジア太平洋地域では最大の事業拠点となり、同地域が成長するための重要な役割を担うことになる。
 なぜ統合する道を選んだのか、そのメリットは何か、EY Japanの役割は何か。こうした質問をEY Japanのカントリー・マネージング・パートナーの辻幸一氏に聞いた。(以下、敬称略)

――EYのJapanエリアは2019年7月1日付でAsia-Pacificエリアと統合することになりました。その背景と経緯について教えてください。

辻: EYは世界150以上の国と地域に26万人以上の構成メンバーがいます。その全世界をAmericas(北・中・南米)、Asia-Pacific(アジア太平洋の22カ国)、EMEIA(欧州、中東、インド、アフリカ)、そしてJapan(日本)の4つのエリアに、さらにエリアの中を27のリージョンに分けて運営しています。

 昨今、日本企業のグローバル化が急速に進展する中で、エリアをまたいでコミュニケーションをとり、素早い対応が求められる場面が格段に増えてきました。

 2年半前、EY Japanのエリア・マネージング・パートナーにスコット K.ハリデーが就任して以来、EY Japanはどう成長していくべきかという議論をずっと進めてきました。私もEYのグローバルの会議に出席するたびに、EY JapanはAsia-Pacificの一員として、もっとほかの国やエリアとコミュニケーションを深くしたほうが良いという思いを持ってきました。

 そこでスコットとエリアデピュティーの貴田と協議を重ねた末、日本のグローバル企業により良いサービスを迅速に提供するためには、EYのJapanエリアとAsia-Pacificエリアが統合することが最善であろうとの結論に至り、我々自身からEYのグローバルに提案し、今回の統合が承認されたというわけです。

――EYのグローバルやAsia-Pacificはどんな反応でしたか。

辻: 統合はEY Japanのパートナーの意思で決めるべきで、グローバルがああしろこうしろという話ではない、と。もしパートナーが統合に前向きであるなら、EYのグローバルはそれをサポートする、ということでした。EYのAsia-Pacificのリーダーは、日本が入ることによりアジア太平洋地域においてコミュニケーションや協力体制が深まり、クライアントへの対応も大きく向上するのでEY Japanを歓迎する、ということでした。

――日本のパートナーの反応は?

辻: アシュアランス(監査・保証業務)、税務、トランザクション、アドバイザリーの4つのサービスラインでパートナーは約700人いますが、全員の意見を確認したところ、94%が統合に賛成でした。

辻幸一氏

辻 幸一氏

1957年生まれ。大阪府出身。81年、中央大学商学部会計学科卒業、83年に早稲田大学大学院経済学研究科を修了。84年10月、ピート・マーウィック・ミッチェル会計士事務所(現・EY新日本有限責任監査法人)入所。89年スイス・チーリッヒ駐在。2004年にシニアパートナー就任。16年2月、新日本有限責任監査法人(現・EY新日本有限責任監査法人)理事長就任。同5月、EY Japan カントリー・マネージング・パートナー就任。

大切なのはスピード感。人材開発とデジタル投資に積極的に取り組む

――改めて伺いますが、統合によってどんなメリットがクライアントにありますか。

辻: アジア太平洋の国々は日本にとって近年最大の貿易国になっていまして、しかも高い経済成長率を維持し、今後さらに成長が見込まれます。こうしたアジア太平洋地域で、統合により5万5000人を超える専門能力を持った人的リソースを地域横断的に活用し、ベストプラクティスを集約することによって、国・地域を超えたシームレスなサービスを提供できるようになります。

 成長のためのコラボレーションを実現するために、最も大切なことはスピード感だと考えています。EYのJapanエリアとAsia-Pacificが統合して同じエリアになると、よりスムーズにコミュニケーションが取れ、チーム編成も素早くできます。M&A(合併・買収)などは、明日決めるとか、明後日決めるといったスピード感が成否を決めることもあります。EYのプロフェッショナル同士が、お互いに同じエリアの中で顔見知りであるとか、先週も別の仕事を一緒にやったとか、そういう濃密な関係を日頃から作っていかないと、スピード感は実現できないということです。

――そうなると人材育成も重要になりますね。

辻: そうです。人材育成のトレーニングメニューの中には、エリアごとに集まって行うものもあります。EY Asia-Pacificであれば、エリア内の22カ国から集まって、同じ課題でトレーニングに取り組んでいました。ところがエリアが違った日本はこれまで日本だけで実施していました。これではやはり視野の広さとか、グローバルの視点が十分に学べません。クライアントはどんどんグローバル化しているのに、EY Japanのプロフェッショナルは日本という閉じた世界に留まることにもなりかねません。

 EYは全世界で年間5億米ドル以上を人材育成に投資しています。アジア太平洋地域の一員として、多様なキャリア成長の機会を捉え、トレーニングを積んでいくことは、次世代のパートナーや若手のメンバーがグローバルな視点を育むうえで大きな意味があると思っています。

――IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などのデジタル技術が進歩し、新しいイノベーションサービスを提供するうえで多額のデジタル投資も必要になりますね。

辻: ええ。Japanエリアだけでデジタル投資を行うのは次第に難しくなってきています。10年前でしたら日本単独で投資することも可能だったかもしれませんが、昨今のIT化、ロボット化の動きには多額の投資が必要になっています。

 EYは世界中でAI(人工知能)、ブロックチェーン、サイバー技術、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などのデジタル技術へ今後2年間で10億米ドル投資する予定です。日本を含むアジア太平洋地域においても、EYの持つ知見やデジタル技術を最大限に活用し、より高品質のサービスを提供していく予定です。

しっかりと発言し、高品質のサービスを提供するのが責務

――EY JapanとEY Asia-Pacificのエリア統合により、EY Japanは、統合されたエリア全体の売上高の約20%を占め、アジア太平洋地域で最大の事業拠点となります。大きな発言力を確保することも期待できますね。

辻: 発言力を確保するというよりも、発言しなければいけない。日本がしっかりとリードして、アジア太平洋地域全体に高品質のサービスを提供できるような体制を確保し、維持していく、それが日本の責任だと考えています。これは、全世界ベースで日本企業へのサポートが強化されることにもつながると確信しています。

――EYのAsia-Pacificの一員として大きな責任を背負うという覚悟が必要ですね。

辻: そうです。グローバル展開を加速させている多くの日本企業対して、EY Japanは覚悟を持ってしっかりコミットします。

――将来的には、EY Japanからの代表者が一定のポジションで活躍することになりそうですね。どんなジャンルでリーダーシップを発揮できるとお考えですか。

辻: リーダーシップを発揮していくべきところは様々あると思っています。EY Japanの場合、収益に対する監査の割合が大きいので、アジア太平洋地域全体に対しても影響が大きくなります。一例ですが、EY Japanでは監査のデジタル化を積極的に進めています。過去の有価証券報告書の訂正事例から将来の不正会計の可能性を予測する「不正会計予測モデル」や、会計仕訳からAIが取引パターンを学習して異常仕訳を自動的に識別する「会計仕訳異常検知アルゴリズム」等を実践配備しています。このような先進的なプログラムの開発経験を活かし、Asia-Pacificとの協働作業の中でEY Japanがリードしていきたいと考えています。

 また、アドバイザリーやトランザクション、税務サービスにおいても、クライアントからRPAをはじめとするデジタル・ソリューションに対するご要望が非常に増えています。EY全体で今後2年間に10億米ドルのテクノロジー分野への投資を予定していますので、EY Asia-Pacificとの協働作業を通じて、テクノロジー社会における新たな社会課題の解決につながるような新しいサービスの開発に、EY Japanのノウハウや知見を展開できるのではないかと思っています。

経営体制、ガバナンス体制、サービスラインに変更なし

――統合により様々な成長が期待できます。しかしその一方で、EY新日本有限責任監査法人などから成るEY Japanのメンバーファーム(事業者)各社の経営体制やガバナンスのあり方などが変わることはありませんか。

辻: その心配はまったくありません。今回の統合はあくまでもEYのAsia-PacificエリアとEY Japanのメンバーファーム各社が対等な立場でメンバーシップ・アグリーメントを結ぶものであって共同でテクノロジーなどに投資する機会は増えますが、資本関係は一切生じません。このため、EY Japanのメンバーファーム各社は法的に独立した組織として、資本関係やガバナンス、意思決定プロセスなどが変わることはありません。

――つまり、法的な独立性を維持したまま、統合により「成長」が得られるというわけですね。最後に、辻さんの今後の役割とグローバル企業へのメッセージをお願いします。

辻: 自分たちがEYのAsia-Pacificの一員となることを望んで決めたわけですから、日本の成長はもちろんのこと、アジア太平洋地域全体の成長に対しても私たちは貢献していかなければなりません。私が今後やるべきことは、そのための体制づくりです。どうやってコミュニケーションしていくか、どうやってリーダーシップを発揮していくかなど考えていきます。

 企業買収に何兆円という巨額を投資する時代になってきました。私たちは視野を広げて、クライアントにとって最適なソリューションは何かを考え、時に厳しくても積極的に自分たちの意見を発し、クライアントのビジネスでの成功と成長に貢献していきたいと考えています。また、そうすることで経済社会の発展にも寄与していくことができると信じています。

 EY Japanは、今後も、グローバル化を加速する多くの日本のクライアントの皆様の期待とニーズに対し、よりスピーディーにお応えしていきたいと思います。

EY Japan
EY Japan エリア・マネージング・パートナーのスコット K.ハリデー氏(左)とカントリー・マネージング・パートナーの辻幸一氏

~日本のクライアントの皆様へ~

スコット K. ハリデー EY Japan エリア・マネージング・パートナー

「Asia-Pacificは、日本のクライアントの皆様にとって重要な成長市場です。EY Asia-Pacificとの統合により、EY Japanはこの重要なマーケットにおいて強い発言力を確保し、クライアントの皆様に、より良いサービスを世界中で提供する知見とリソースを獲得することになります。」

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