日本は未曾有の人手不足時代を迎え、今後ますます深刻化することが予想される。こうしたなか、政府は「人生100年時代構想」を打ち出した。これは、長寿化、高齢化で国民が100歳まで生きるようになった社会を想定し、すべての人が元気に活躍し続けられる社会システムを構築しようとする構想である。生涯にわたって活躍し続けるためには、健康の維持が重要だ。スポーツを通じて健康な心身を育み、人生に豊かな時間を提供するという思いを込めて、2008年グローブライドは自社を「A Lifetime Sports Company」と定義。人々が生涯にわたってスポーツを楽しむためにサポートをしていくことを確認した。それから10年。創立60年を迎える今年、代表取締役社長 鈴木一成氏が、同社のブランディングをサポートするクリエイティブディレクター 佐藤可士和氏とこれまでの経緯やこれからの取り組みについて語り合った。

これからの半世紀を見据え
社名変更を含めすべてを一新

―フィッシングをはじめ、ゴルフ、テニス、サイクルスポーツなど、スポーツ・レジャー業界を牽引してきた「ダイワ精工」が「グローブライド」へと社名変更をされ、10年目を迎えます。

鈴木:当時経営企画室にいた私が最初に会社から命じられたのは、行動規範の作成でした。しかし、その上位概念である企業理念が形骸化していたため、そこから定義し直す必要があると主張し、企業理念と併せて一新させてほしいと提案しました。それが認められ、1年間にわたって社員の意思をヒアリングし、答申を提出しました。それに対し、第三者である専門家の意見も聞きたいと言われたのです。

 その時、一番頼みたいと思ったのが佐藤可士和さんでした。企業理念やロゴを変える際、変えて終わりではなく、作ってからボディそのものを作り込んでいくところまでディレクションされるという姿勢に期待したからです。周囲からは無理と言われたのですが、頼むだけは頼んでみようと佐藤さんに連絡をとりました。

Kazunari Suzuki

1961年大阪生まれ。1984年 明治学院大学社会学科卒、同年ダイワ精工(現グローブライド)入社。経営企画室長、フィッシング営業本部国内営業部長、スポーツ営業本部長を歴任。2013年執行役員、2015年取締役、2017年10月より代表取締役社長に就任。

Kazunari Suzuki

1961年大阪生まれ。1984年 明治学院大学社会学科卒、同年ダイワ精工(現グローブライド)入社。経営企画室長、フィッシング営業本部国内営業部長、スポーツ営業本部長を歴任。2013年執行役員、2015年取締役、2017年10月より代表取締役社長に就任。

佐藤:釣りは子どもの頃やった程度でしたが、もちろんダイワ精工のことは知っていました。話を聞くと、釣りの分野で日本発世界ナンバーワン企業とのことで、これはすごいと思い、引き受けました。ただ、企業理念や行動規範を新たに規定するにあたって、ビジュアル変更を伴わず社内外に浸透できるのかは疑問に感じていました。そこで、当時の社長に最初にお会いした時にそう話したところ、社名を含めて一新する案を考えてみようということになり、すべてを考え直すことになりました。

鈴木:制約なき提案の策定に当初は驚きましたが、創立50年にあたり、これからの半世紀を考えると、これまでの延長線上では生き残れない、何らかの意識改革をしなければならないとの考えを巡らせました。また、今後より幅広い事業かつグローバルに展開するうえで、社名とフィッシングのブランド名が同一であることも、会社の遠心力を高めるうえで疑問に感じていました。

A Lifetime Sports Companyとして
人生に豊かな時間を提供する

―ブランディングにあたり、多くの社員からヒアリングをしたと伺いました。

佐藤:半年間毎週通って100人以上の社員にヒアリングしました。その中でみんなが共通で大切にしていることを探っていきました。特に、いわゆるアスリート系のスポーツのメーカーとどう違うかをしつこく聞きました。

 多くの社員が語っていたのが、「競技だけではないが、単純な遊びとも違う」ということでした。そしてまずできたのが、「A Lifetime Sports Company(人生を豊かにするスポーツ)」というコーポレートドメインです。また、ユニークだと思ったのは、「Feel」や「感じる」という言葉が多く聞かれたこと。そこから、コーポレートスローガンである「Feel the earth(地球を五感で楽しもう)」が生まれました。これらのコンセプトが固まったことで、地球を舞台にスポーツの新しい地平を切り開いていく決意を込めた、「グローブライド」という社名が決まりました。グローブライドのロゴの上下のグリーンラインは、緑の地平線を表しています。

Kashiwa Sato

1965年東京生まれ。多摩美術大学卒業。博報堂を経て2000年独立。同年「SAMURAI」設立。ブランドアーキテクトとして数々のプロジェクトを手掛ける一方、近年は文化庁文化交流使として日本の優れた文化を広く海外に発信することにも注力している。

Kashiwa Sato

1965年東京生まれ。多摩美術大学卒業。博報堂を経て2000年独立。同年「SAMURAI」設立。ブランドアーキテクトとして数々のプロジェクトを手掛ける一方、近年は文化庁文化交流使として日本の優れた文化を広く海外に発信することにも注力している。

鈴木:当初の目的だった行動規範も、スポーツを愛する人に人生の新たな感動をとどける「Make it wow!」、自由な発想を大切に、開かれた会社を作る「Open Our Minds」、フィールドである地球のことを常に考えて行動する「Be Earth-Friendly」など「5つの大切な約束」というわかりやすいものになりました。

―スポーツメーカーというと最新技術を駆使しアスリート向けの製品を作るイメージがありますが、A Lifetime Sports Companyと名乗る御社のアプローチは少し違いますね。

鈴木:もちろん、スポーツメーカーとしてそういった側面もあります。常に先進の技術を追い求めるには、競技アスリートなどとのパートナーシップは重要です。しかし、そうして生まれた革新的技術は、スポーツを楽しむ一般の人たちに向け、より簡単に安全にスポーツを楽しむための技術としてフィードバックしていきます。

 私どもグローブライドは、プロもアマチュアもなく、老若男女もなく、人生に豊かな時間をご提供する「A Lifetime Sports Company」として、スポーツと自然を愛する世界中の人々に貢献し続けたいと考えています。

―グローブライドの持つ技術を教えてください。

鈴木:たとえば、DAIWAの多くのリールには、NASAが宇宙服用に開発した磁性流体を利用した防水機能「マグシールド」が搭載されています。これにより、軽い回転性能と高い防水機能を両立させています。また、高度なカーボンテクノロジーにより、より軽く感度の高いロッドを実現。基本的にこのような技術のほとんどは、上位機種をはじめ中級機種まで展開しています。一部のコアのファンだけでなく、より幅広い方に使いやすい道具でスポーツを楽しんでもらいたいと考えているからです。

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