IoT新時代 先進事例から勝機を掴め

IoTの壁を越えろ-日立製作所:後編

埋もれているデータに光を当て、未来を照らす顧客協創基盤
「Lumada」が一味違うワケ

日本におけるIoTの実情とそのなかで必要なOTの重要性について紹介した前回を受けて、今回は日立製作所が提供し、デジタルイノベーションを加速する「Lumada(ルマーダ)」の特徴について紹介しながら、生産ラインなどのシステムや設備を最適に制御・運用するために欠かせないOT(Operational Technology)で培った知見を、プラットフォームにどう生かしているのか、そのポイントについて聞いた。

日立製作所が描くIoTプラットフォーム

日立製作所が描くIoTプラットフォーム

日本においては、現在でもIoTそのものの実装がなかなか進んでいない。確かに現場から何らかのデータ収集は行っているものの、それを見える化するレベルには十分達しておらず、特に“賢く作る”ためのIoTはいまだに未成熟の状態だ。その大きな原因の1つに挙げられるのが、工場やプラントにおけるシステムや設備に関するノウハウすなわちOTの活用が不足していること。ITを中心にIoTが語られることが多いなか、実際得られたデータの意味を理解し、分析した結果や予測に基づいて現場にフィードバックしていくためには、OTの知識が欠かせないものになる。

そこで日立製作所が提唱しているのが「Lumada」だ。Lumadaは、illuminate(照らす・輝かせる)とdataを組み合わせた造語で、埋もれているデータに光を当てる、そしてデータによって顧客の未来を照らすという思いが込められている。オープンアーキテクチャでパートナーであっても容易に利用できるだけでなく、OSSも積極的に取り入れた“オープン性”を兼ね備え、豊富なAPIによって既存システムの再利用や容易な連携が可能な“適用性”、そしてセキュアであることはもちろん、すでに実証されたものを適用することで得られる“高信頼性”が大きな特徴となっている。

日立製作所が提唱している「Lumada」の概要と特長

Lumadaは、IT技術を含めた先端技術を駆使して街全体のスマート化を推進し環境配慮型の都市を目指すスマートシティ構想の際に登場した“共生自律分散“というコンセプトがもとになっている。スマートシティが大きく注目された当時から、さまざまなものが有機的に連携して全体最適化を行う“共生”という考え方は受け入れられていたが、当時はIoT自体のキーワードもなく、業種を超えて連携していくための技術や環境面でも足りない部分が少なくなかった。しかしIoTが大きな潮流となった今、Lumadaを通じて、改めてその理想に向かうための環境が整いつつある。「我々はエネルギーや交通、製造など社会インフラを含めたさまざまな領域で事業を展開しており、まさに日立が社会や産業全体をブリッジしていけるような存在になりたいと考えています。そしてこれを推進し、日立全体が目指す社会イノベーションを実現したいと考えています」と入江氏。

Lumadaが持つ強み

Lumadaが持つ強み

株式会社日立製作所
制御プラットフォーム統括本部
制御プラットフォーム開発本部
本部長
博士(工学)
入江 直彦 氏

Lumada同様、世の中にはIoTプラットフォームと呼ばれるソリューションは数多く存在している。数あるIoTプラットフォームとの違いについて入江氏は「OTの知見を活かして現場に実装していける部分が大きい」と説明する。市場に展開している多くのIoTプラットフォームはIT専業のベンダーが提供しており、OT自体への造詣はさほど深くないのが実態だ。対して日立製作所は、ITに対するソリューションも幅広く持っているだけでなく、制御系のOT技術はすでに100年以上の歴史がある。特に電力やプラント、交通など社会インフラ関連の事業を幅広く展開していることもあり、現場に入り込み、お客さまと一緒に課題解決に取り組むことが可能な点は大きなアドバンテージだと入江氏。

その現場での経験は、具体的なソリューション提供にも生かされている。「我々はアナログデータを自動的に読み取ってクラウド上にデータを蓄積し、解析可能な状態にできるサービスを提供していますが、現場にメーターを読み取る機械を設置するためだけでも大変な苦労が伴います」(入江氏)。通常であればWebカメラを設置して画像解析からメーターを読み取るというアイデアが浮かぶが、実際の現場では雨天時の対応はもちろん、電源の確保、通信経路の設置など、多くの課題に直面することになる。「そうならないためにも、遮蔽物によって電波環境が悪くても高信頼につながるワイヤレスによって読み取りでき、電池だけで3年間駆動し続けることが可能な仕組みを提供しています。まさに現場から得られたOTの知見がLumadaに生かされているのです」と入江氏。

Lumadaの特徴の1つである“協創”という概念も忘れてはならない。「提唱した当初の共生自律分散はある意味コンセプトであり、実際にビジネスに落としていくためには、お客さまとの協創が重要です。この協創プロセスを体系化したうえでLumadaに取り込んでいます」(入江氏)。さらにLumadaには、ユースケースと呼ばれるソリューションのひな型が数多く用意されており、このユースケースをベースに課題解決のアプローチを探ることができるようになっている点も大きな特徴だ。「日立グループ全体でユースケースをLumadaに蓄積し、それを再利用していくことで新たな価値を提供していく、これがLumadaの本質です。共生自律分散というコンセプトは維持しつつも、お客さまに価値を届けるための方法論をきちんと定義し、取り込んでいるのが今のLumadaなのです」とその特徴について説明する。

Lumadaはお客さまやパートナーと協創し、ソリューションを迅速に提供する

OT経験が生かされたLumada実装例

OT経験が生かされたLumada実装例

ここで、OTの経験が生かされたLumadaの事例を見ていきたい。セルロースや合成樹脂などのプロセス型生産領域を中心に、自動車用のエアバック用インフレータ(衝突を感知するセンサーとその信号でエアバッグを作動させる装置)といった組立加工生産領域も含めたモノづくりを行っている株式会社ダイセルでは、エアバック用インフレータ製造において品質を最大限に高めるためのプロセス改善に向け、人手で行われている作業も含めて製造プロセス管理を徹底的に行うべくLumadaを利用している。「多くの工程が機械化されているものの、モノの移動や検査など一部で人手による作業が発生しています。品質管理を高めていくと、最終的には人手作業の管理も含めて行う必要があることが共通理解として得られたのです」と入江氏。

そこで、これまで導入されていなかったカメラを生産ラインに設置し、そこで働く人の動きをセンシングしたうえで異常な行動などをチェック、万一の際には次のプロセスに製品が流れていかないようにすることで、品質向上を最大限に高めることに成功している。このプロジェクトでは、工場におけるラインの動き方や注視すべきポイントなど、これまで数多くのライン構築やMES(Manufacturing Execution System)導入を手掛けてきた日立製作所が持つOTの知見が生かされており、顧客とともに協創しながら最適なインフラ作りが行われている。

なお、Lumadaを構成するコンポーネントに必要な制御サーバーや産業用PCなどに組み込まれているのがインテルのテクノロジーだ。「IoT利活用の成熟度モデルにおけるセンシングによる見える化、分析、予測といった領域には、これからAIの技術が幅広く適用されていくことは間違いありません。そこで重要になってくるのが、ハードウェアアクセラレーション、そこに関わるソフトウェアスタックなど。まさに半導体をベースにしたテクノロジーの進化であり、インテルが持つ高度なテクノロジーです」と入江氏は評価する。インテルとは、PCやインターネットが世界を変えたような、テクノロジーによる次の変曲点について一緒に議論していきたいと期待も寄せている。

Lumadaで目指す世界とOTのさらなる進化への期待

Lumadaで目指す世界とOTのさらなる進化への期待

Lumadaでは、データを中心に据え、エッジコンピューティングやデータストレージ、ミドルウェア、クラウドといったIT基盤をベースにIoTプラットフォームが構成されており、顧客との協創を通じて新たな価値創造を目指している。現状は、産業・流通・水や電気・エネルギーといった領域ごとに向いているベクトルだが、最終的にはすべての領域をつなぎ合わせることで共生できる社会を目指していきたいと入江氏は語る。「中心にはデータがあり、顧客と協創していくための基盤としてLumadaがある。分野を超えてつなげていく共生社会の実現に、日立としても積極的に関わっていきたい」。

顧客協創による新たな価値創出を、データを核としたLumadaのIoTプラットフォームで支える

また、アナリティクスを中心に世界中で議論が進んでいるAIだが、このAIをOTの領域へ適用していきたいとその思いを語る。「我々大みか事業所は社会インフラシステムをメインに扱っており、制御系を中心にしたビジネス展開を行っています。世の中の制御をこれまで以上にインテリジェンスにしたいというのが、我々が抱く大きな野望です」。何か1つに不具合があっても他でサポートできる環境が整備できる、まさにレジリエントな社会インフラを作るためにも、インテリジェントな共生自律分散の世界をLumadaで作り上げたいと今後について語っていただいた。

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