IoT新時代 先進事例から勝機を掴め

インダストリアルIoTの現在地 - 東芝デジタルソリューションズ:後編

ベストエフォートでは社会インフラは成り立たない!
インダストリアルIoTでエッジ処理が重視されるワケ

デジタルトランスフォーメーションがあらゆる業界に広がる中でも、データを活用して製造プロセスの見直しや業務改善を積極的に行っている製造業では、他の業界に比べてデジタル化の動きが進んでいる。第4次産業革命のキーテクノロジーとなるIoTについても積極的に取り入れており、インダストリアルIoTの世界はこれからも拡大し続けることだろう。そこで今回は、社会インフラや製造業を中心に多くの顧客を持つ東芝デジタルソリューションズ株式会社(以下、東芝)が手掛けるインダストリアルIoTのソリューションについて見ていきながら、重要なIoTセキュリティにおける考え方や環境づくりに欠かせない基盤のありようについて聞いた。

長年培ったノウハウを集約した
東芝IoTアーキテクチャー「SPINEX(スパインエックス)」

長年培ったノウハウを集約した東芝IoTアーキテクチャー「SPINEX(スパインエックス)」

東芝デジタルソリューションズ株式会社
インダストリアルICTセキュリティセンター
センター長
下田 秀一 氏

さまざまな業界でIoTによるデジタルトランスフォーメーションが進められているが、製造業をはじめとしたインダストリアルIoTを手掛ける東芝では、IoTが世界的な潮流になる前から、製造プロセスの見える化を通じて業務改善を支援してきた。「1990年代後半からフィールドで発生した情報をネットワーク経由で収集して可視化し、分析や当時のITを駆使して生産性向上や品質向上に役立つ仕組み作りを支援してきました」とインダストリアルICTセキュリティセンター センター長 下田 秀一氏は説明する。特に製造業では、現場の業務改善に長年取り組んでおり、各種データを活用することで効率化を推進してきた経緯がある。そんな現場の運用を意識したIoTの実装や運用に対する知見を豊富に備えていることが、東芝が持つ大きな強みの1つとなっていると言えるだろう。

そしてIoTが大きな広がりを見せる今、現場で培ってきた長年の経験とノウハウを集約したものとしてインダストリアルIoTの中心に位置づけているのが、東芝IoTアーキテクチャー「SPINEX(スパインエックス)」だ。SPINEXは、設備をはじめとした各アセットやIoT機器をつなぎ、収集した様々な情報を元にAIを用いたデータ分析やデータ利活用によりビジネスに新たな価値を創出したり、ビジネスそのものを変革する為のIoTアーキテクチャーだ。東芝では、デジタルトランスフォーメーションの対象を設備から工場全体、企業全体、コミュニティへと広げていくことを目指している。また「見える化」「最適化」「自動化」「自律化」というIoT活用の進化に向けた4つのステップを経ることで、高付加価値サービスの創出につなげていくことが可能になる考え方だ。

これらを実現するために、SPINEXには現実世界をデジタル世界に再現するソリューションや高度な分析・処理が可能なAIテクノロジー、膨大なデータを効率的に処理するエッジの仕組みなどが用意されている。具体的には、物理世界の事象をデジタル空間に精緻に“双子のように再現する”デジタルツインをはじめ、需給予測や予防保全、作業効率化など産業領域の課題解決につなげるアナリティクスAI「SATLYS(サトリス)」、高度な音声・画像認識技術によって業務支援を実現するコミュニケーションAI「RECAIUS(リカイアス)」、そして現場から集まる膨大なデータを効率よく処理し、現場とクラウドでの最適な処理分担を可能にするエッジコンピューティングだ。

AIをはじめとするさまざまな先進技術を結集した東芝IoTアーキテクチャー「SPINEX」

IoT進化に合わせた
セキュリティフレームワークとは?

IoT進化に合わせたセキュリティフレームワークとは?

このSPINEXの中では、包括的な形で安心・安全を担保するためのセキュリティの仕組みも実装されている。「我々はセキュリティ専業ではありませんので、パートナーとともにインダストリアルIoTに適応できる形でセキュリティを実装し、お客さまに提供できる環境を整えています」と下田氏は説明する。情報システムはもちろん、生産システムや製造システムなど階層ごとに必要なセキュリティソリューションを用意しており、制御システムに適したセキュリティ環境の整備を行っている。

ただし、IoTシステムのセキュリティを設計するのは、実はそう容易なことではない。守るべき対象の事業やサービス、業務プロセス、接続機器の種類や数、情報資産の量や種類、セキュリティリスクなどあらゆる要素が、システムによって異なるからだ。一般的な情報システムにあたるITの領域では、サーバーやPCといったデバイスがある程度限定でき、OSの種類なども含めて、比較的標準化しやすい。しかし制御システムなどの場合は、製造ラインの機器や守るべき資産が業態によって異なってくるため、一律の対応では限界が出てきてしまう。大きな組織から小さな犯罪組織、愉快犯まで、攻撃者の目的も多岐にわたってくるため、一律の手法で対抗することは難しいといえる。

東芝デジタルソリューションズ株式会社
インダストリアルICTセキュリティセンター
センター長附
岡田 光司 氏

そのため、システムの特性とセキュリティへの要求との整合性を保ちながら、コストと技術でバランスの取れた対策を継続して行うことが本来必要になる。そこで東芝が打ち出しているのが「セキュリティリファレンスアーキテクチャー」と呼ばれる体系的なセキュリティフレームワークだ。「IoTシステムのネットワーク領域の層と、各製品システムの構成要素の層という二軸の多層防御で考えており、それぞれ“広さ”と“深さ”でコストと技術のバランスをとっています」とインダストリアルICTセキュリティセンター センター長附 岡田 光司氏。これは、多層防御の考え方で、視点の違う防御策を組み合わせることで攻撃のスピードを遅らせ、その間に検知、防御策を行う事でリスク低減につなげるアプローチだ。

また、見える化から自律化までの4つのプロセスを意識してモデル化された考え方を採用することで、現実的に実装できるよう意識したモデルを提示している。「すべて同じレベルでセキュリティを実装すると膨大なコストがかかるため、現実的ではありません。特にこのフレームワークの特長は、見える化から自律化というIoT進化の段階に応じてセキュリティを設計している点が大きなポイントです。IoT進化の段階とセキュリティ国際標準規格を照らし合わせ、“その段階ではここまでやれば必要十分”という現実的な解を見極めて設計されています」と岡田氏は力説する。豊富な製造現場のノウハウを持っている東芝ならではのアプローチだといえるだろう。

インダストリアルIoTセキュリティのフレームワークである「セキュリティリファレンスアーキテクチャー」

インダストリアルIoTだからこそ
重要になるエッジ処理

インダストリアルIoTだからこそ重要になるエッジ処理

これらインダストリアルIoTにおけるセキュリティの核となるものが、社会インフラ・産業用システム向けのIoTゲートウェイ装置だ。「すべての情報をセンターに挙げるのではなく、エッジ部分でいかに処理できるのかが、重要になってきます。そのためには、十分な処理能力を持ったチップが求められます」と下田氏。また、社会インフラ分野に適用できるゲートウェイとしては、頻繁に変更できる環境ではない。それゆえに、どんな環境に置かれても長期間安定して動作する、長期信頼性や耐環境設計が重視されている。そこで使われているのが、高い処理性能と産業用グレードの品質が認められたインテルのCPUだ。

エッジ部分での処理が重要になるのは、社会インフラならではの環境も大きく影響している。「インターネット自体はベストエフォートであり、もし通信できなければ再送するという概念です。しかし、社会インフラ分野のクリティカルなシステムではそうはいきません。必要なデータを欠損なく確実に通知、処理する必要があるため、その面でもエッジ側では正確な処理が求められます」と岡田氏。クリティカルな処理が求められる場面にも対応できるよう、クラウドのリソースでAIを使いながら、普段の判断はクラウドのエンジンをもとにしたエッジ側で処理する必要がある。ミスの許されない社会インフラの領域では、IoTゲートウェイによるエッジ処理がとても大事になってくる。その意味でも、インテルが果たすべき役割は大きく、大きな期待が寄せられているのだ。

データ処理の効率化やIoT全体の最適化やセキュリティ向上を実現するためには、最終的にはIoTゲートウェイ側でAIを活用していける環境が理想だと下田氏。インダストリアルIoTにおけるエッジコンピューティングは、IoTの進化やセキュリティの高度化にとって今後も重要度を増してくることになる。新たな価値を創出しながらセキュリティリスクを低減するIoT環境の整備に、東芝の果たす役割はますます大きいものになってくることだろう。

TOPへ

Archiveアーカイブ

顔認証の現在地 - NEC:前編

IoTによる“おもてなし”がビジネスをけん引!顔認証技術のビジネス活用最前線

記事を読む

顔認証の現在地 - NEC:後編

IoTによる“おもてなし”がビジネスをけん引!顔認証技術のビジネス活用最前線

記事を読む

インダストリアルIoTの現在地 - 東芝デジタルソリューションズ:前編

テクノロジーの進化で社会インフラが狙われる!IoTがもたらす、つながることの功罪

記事を読む

インダストリアルIoTの現在地 - 東芝デジタルソリューションズ:後編

ベストエフォートでは社会インフラは成り立たない!インダストリアルIoTでエッジ処理が重視されるワケ

記事を読む

物流IoTの現在地 - 日本Honeywell:前編

物流先進国・日本で新たな付加価値を生み出す「物流IoT」最前線

記事を読む

物流IoTの現在地 - 日本Honeywell:後編

物流先進国・日本で新たな付加価値を生み出す「物流IoT」最前線

記事を読む

流通IoTの現在地 - 富士通:前編

流通業界が直面する人材不足にどう立ち向かう!?「流通IoT」が果たす役割

記事を読む

流通IoTの現在地 - 富士通:後編

高度なアルゴリズムを武器に“流通業務”へと適用を広げる富士通が目指す流通IoTの未来像

記事を読む

小売IoTの現在地 - ローソン:前編

IoT活用で目指すは“ヒューマン・ファースト”進化するコンビニの“今”そして“未来”

記事を読む

小売IoTの現在地 - ローソン:後編

IoTで買い物が楽しく、こんなに便利に! CEATECで未来型コンビニをいち早く体験!

記事を読む

IoTの壁を越えろ - 日立製作所:前編

IT領域だけでは現場へのIoTデプロイは進まない! IoTの壁を突破するために不可欠なOTとは?

記事を読む

IoTの壁を越えろ - 日立製作所:後編

埋もれているデータに光を当て、未来を照らす顧客協創基盤 「Lumada」が一味違うワケ

記事を読む

流通IoTの現在地 - 富士通:前編

流通業界が直面する人材不足にどう立ち向かう!?「流通IoT」が果たす役割

記事を読む

流通IoTの現在地 - 富士通:後編

高度なアルゴリズムを武器に“流通業務”へと適用を広げる富士通が目指す流通IoTの未来像

記事を読む

小売IoTの現在地 - ローソン:前編

IoT活用で目指すは“ヒューマン・ファースト”進化するコンビニの“今”そして“未来”

記事を読む

小売IoTの現在地 - ローソン:後編

IoTで買い物が楽しく、こんなに便利に! CEATECで未来型コンビニをいち早く体験!

記事を読む

IoTの壁を越えろ - 日立製作所:前編

IT領域だけでは現場へのIoTデプロイは進まない! IoTの壁を突破するために不可欠なOTとは?

記事を読む

IoTの壁を越えろ - 日立製作所:後編

埋もれているデータに光を当て、未来を照らす顧客協創基盤 「Lumada」が一味違うワケ

記事を読む

インテル新製品情報

エッジからクラウドまで
AIソリューションを強化する

詳細はこちら

インテルのIoTシステム向け
スマート・ビデオ・ソリューション

AIとディープラーニングにより進化を遂げている画像解析。
IoTの目であり、究極のセンサーであるビデオは、
今後のビジネス変革にどのような影響を及ぼすのだろうか。

詳細はこちら

インテルではじめるIoT

様々な分野での活用が期待されるIoT。
IoTの進化が生み出す、新しいビジネスとは?

詳細はこちら

インテルのインダストリー向け
IoTソリューション

条件の厳しいインダストリー分野でも
高性能で信頼性の高いソリューションを
構築するためには?

詳細はこちら

事例から学ぶ
さまざまな業界でのIoTソリューション

様々な分野での活用が期待されるIoT。
IoTの進化が生み出す、新しいビジネスとは?

詳細はこちら

インテルのロジスティクス向け
IoTソリューション

IoTテクノロジーの活用で、
物流業界の効率性を向上し、
荷物輸送状況のリアルタイムでの可視化を実現。

詳細はこちら

事例から学ぶ
さまざまな業界でのIoTソリューション

様々な分野での活用が期待されるIoT。
IoTの進化が生み出す、新しいビジネスとは?

詳細はこちら

インテルのデータを活用した
IoTソリューション

エッジからクラウドまで、
IoTにより生み出されたデータ活用で、
ビジネスをよりインテリジェンスなものに。

詳細はこちら

事例から学ぶ
さまざまな業界でのIoTソリューション

様々な分野での活用が期待されるIoT。
IoTの進化が生み出す、新しいビジネスとは?

詳細はこちら

インテルの小売業向け
IoTソリューション

テクノロジーによる
顧客分析と洞察の進化を通じて、
よりリッチな顧客体験を実現する

詳細はこちら

事例から学ぶ
さまざまな業界でのIoTソリューション

様々な分野での活用が期待されるIoT。
IoTの進化が生み出す、新しいビジネスとは?

詳細はこちら

インテルではじめるIoT

様々な分野での活用が期待されるIoT。
IoTの進化が生み出す、新しいビジネスとは?

詳細はこちら

事例から学ぶ
さまざまな業界でのIoTソリューション

様々な分野での活用が期待されるIoT。
IoTの進化が生み出す、新しいビジネスとは?

詳細はこちら