IoT新時代 先進事例から勝機を掴め

物流IoTの現在地 - 日本Honeywell:前編

物流先進国・日本で新たな付加価値を生み出す
「物流IoT」最前線

全てのモノをインターネットにつなげることで新たな付加価値を生み出すIoT。センサー技術によってこれまで意識していなかった世界を可視化し、その情報を有効活用しようと多くの企業がIoTへの取り組みを加速させている。その中で注目されるものの1つに、サプライチェーンにおけるIoT活用がある。今回は、そんなサプライチェーンにおいて重要となるロジスティクス、いわゆる物流関連のソリューションに強みを発揮している日本ハネウェル株式会社に、IoTにおける取り組みについて聞いた。

つながる世界がもたらすインパクト

つながる世界がもたらすインパクト

ドイツが2010年に提唱した「Industry 4.0(インダストリー4.0)」がきっかけとなり、今ではIoTやビッグデータ、AI、ロボットといったキーテクノロジーを駆使した第4次産業革命が大きな潮流となっている。特にセンシング技術によってあらゆるものをインターネットにつなぎ、見えていなかった環境を可視化するIoTは、モノづくりの現場となる製造業はもちろん、農業や流通・物流、医療・介護、金融、環境・エネルギーなど、あらゆる業界で積極的に取り入れられるようになっている。

全てのモノがインターネットを介してつながるIoTは、従来のビジネスモデルはもちろん、人の行動様式まで大きく変えてしまう。その例としてよく話題になるのが、中国における個人決済の仕組みだろう。日本でもクレジットカードを利用すれば現金を使わずに済むが、中国ではキャッシュレス社会が急速に普及し、今ではスマートフォンだけで日常生活における各種サービスの決済が完結できる社会が出来上がっている。その中心的な仕組みが、QRコードを利用した決済で、ECサイト「タオバオ」を運営するアリババが提供している決済サービス「アリペイ」や、コミュニケーションアプリ「WeChat(微信)」を利用した決済サービス「WeChat Pay」が著名なところだろう。これらの仕組みは、銀行口座やクレジットカードを決済アプリとつなげ、利用者が提示したQRコードを店舗のレジで読み取るだけで料金の支払いが可能になる。

個人決済はあくまで一例だが、全てのものがつながることで社会的に大きなインパクトを与える変革につながることがわかる好例だろう。決済をはじめとした金融の仕組みだけでなく、今後はあらゆる産業でつなぐビジネスが急成長を遂げることになるはずだ。2017年12月に一般社団法人 電子情報技術産業協会が発表したCPS/IoTの利活用分野別世界市場調査によれば、2016年に世界で194兆円、日本で11.1兆円だった市場規模が、2030年にはそれぞれ2倍程度にまで成長することが示されている。中でも成長率が著しいと予想されているのが、年平均20%を超える成長率が期待される「農業」で、次いで「医療・介護」「流通・物流」と続く。特に高い成長率が見込まれている各業界は、総じて就労人口減少による人手不足や少子高齢化などが大きく影響する業界であり、新たな仕組みを活用した働き方改革が強く求められている部分だ。

実世界の様々な分野において新たな価値創造が期待されるIoT(一般社団法人 電子情報技術産業協会 資料より作成)

「物流先進国」と評される日本の物流サービス

「物流先進国」と評される日本の物流サービス?

日本ハネウェル株式会社
代表取締役社長
西巻 宏 氏

ここで注目したいのが物流業界だ。物流に関しては一般の人が普段意識する機会の少ない世界だが、実はグローバルで比較しても日本は優れた物流網が整備されており、ある意味「物流先進国」の位置にいるといっても過言ではない。あらゆるものをつなぎ合わせる“THE POWER OF CONNECTED”を標榜し、物流業界においてIoTソリューションに注力している日本ハネウェル株式会社 代表取締役社長の西巻 宏氏は「世界で見れば、届けて欲しい商品を事業者に預けても、きちんと商品が届くかどうか保証されないことも少なくありません。例えばインドなどでは半分以上は商品が届かないなんてことも実際に起こっています。そのため、専用の運び屋という職業が成り立っているほど」と海外における物流の現状について語る。特にインドでは県にあたるDistrictという行政区を越えてモノを移動させると税金がかかるという環境であることからも、日本のような物流網を構築することがそもそも難しいという側面もある。だからこそ、モノがきちんと届くことこそが、物流における付加価値として捉えられるわけだ。

一方日本では、指定された日付や時間できちんとモノが自宅まで安価に届けられる環境が整備されており、そのこと自体は特別なことではない。本来決められた時間に正しく配送されることは、世界的には付加価値の高い物流サービスを提供していることになるのだが、日本国内で見れば時間通りにモノが届くこと自体が当たり前。つまり日本では、時間通りにモノが届くことに大きな付加価値を感じなくなっている。ただし最近では、eコマースが爆発的に広がったことで荷物取扱量が増大し、物流現場の人手不足が重なったことで輸送費が高騰、料金改定も実施されるほど業界の負担が大きくなっている状況にある。それでも、高い品質の物流サービスを提供している割には、荷主がそこに価値を感じにくい状況に置かれていることに変わりはない。

では、物流における新たな付加価値として期待されているのはどんなことなのだろうか。西巻氏は「時間通りに届くだけでなく、モノが工場から出てきたときの状態や荷捌きエリアでの温度管理、輸送中の振動まで含めた輸送状態の管理を徹底し、その証跡がきちんと可視化できる環境がこれから求められてくる」と力説する。特に日本国内だけの物流に限らず、日本からは見えにくい海外の物流環境についてもしっかりとセンシングし、状態が可視化できる環境が整備できるかどうかが新たな付加価値づくりとして重要になってくる。そこで大きな力を発揮するのが、輸送中の状態をセンシングして環境の可視化に大きく貢献するIoTだ。

物流業界におけるIoTの可能性

物流業界におけるIoTの可能性

ただし、輸送中の荷物の状態を詳細にセンシングする仕組みは、実は以前からサービスとして存在はしていたものの、これまでは大きな潮流とはなっていなかった。なぜなら、仕組み自体が非常に高価であり、センサー自体に情報を蓄積したうえで、あとから情報を取り出して解析せざるを得ず、リアルタイム性に乏しいものだったからだ。もちろん、それでも役立つ部分はあるものの、モノを運ぶことの付加価値として容易に展開できる状況にはなかったのが実態だろう。

そこでセンサーを中心としたIoT技術を新たに応用することで、従来よりも安価に輸送中の状況を可視化できる環境が整備できるようになってきた。また、クラウド環境にセンシングした情報をリアルタイムに蓄積していくことで状況把握が迅速になり、何かあればアラートで知らせるといったことも可能になる。しかも、狭いエリアでのサービスではなく、その対象範囲は無線が利用可能な場所であればグローバルな対応が実現する。「物流にIoTを応用することで、生鮮食品や精密機械といった、輸送中の環境管理が大事になってくる商品に対する付加価値が提供できるのです」と西巻氏は説明する。

しかも、厳密な管理によって万一のトラブルを回避することができるため、結果として後工程での出戻りも発生しなくなる。「もし管理上不備があってモノが届いた時点で使えない状態になっていれば、その後のプロセスが遅延してしまう可能性も。IoTによるセンシングによって安心・安全を担保することで、機会損失を最小限におさえながら、業務の効率化にも大きく貢献することができます」と西巻氏。実際に同社では、グローバルでIoTに関する取り組みを積極的に行っており、全ての荷物にセンサーを取り付けることで、輸送途中の状態を可視化するソリューションをすでに海外で展開し始めている状況にあるという。

物流業界におけるIoT活用でもリアルタイムセンシングが重要になってきたと語る西巻氏。
後編ではその具体的ソリューションについて語った。

物流IoTは、時間通りにモノを届けるだけでなく、輸送中の状態管理によって安心・安全を確保し、その品質を維持することで業務の効率化につながるソリューションとして新たな付加価値を生み出してくれる可能性を秘めているのだ。後編では、より具体的な仕組みについて掘り下げながら、IoTによる物流の未来像について考えてみたい。

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