IoT新時代 先進事例から勝機を掴め

流通IoTの現在地 - 富士通:前編

データ活用で流通業界に新たな価値をもたらす
「流通IoT」が果たす役割

あらゆる業界で“モノのインターネット”としてのIoTが注目され、既存の業務データと新たに獲得したセンシングデータを組み合わせ、これまでにはない新たな価値創造を目指す試みが多くの企業で実践されている。中でも、サプライチェーンでの重要な役割を担っている流通業界も、IoTを活用することで新たな価値を顧客に提供することにどん欲な企業は多い。今回は、そんな流通業界向けのIoTプラットフォームを提供している富士通株式会社に、流通業界における現状とその課題、そしてIoTがもたらす価値について詳しく聞いた。

流通業界が抱えている現状

流通業界が抱えている現状

富士通株式会社
サービステクノロジー本部
イノベーティブシステム事業部
事業部長
後藤 博之氏

日本において大きな社会課題の1つとなっている、少子高齢化に伴う労働力人口の減少や人材不足。厚生労働省が発表した2011年の厚生労働白書では、1990年には6384万人に達していた労働力人口は、2030年には204万人減の6180万人と予想されている。しかも、15歳以上59歳以下だけに絞れば746万人の減少になるなど、若年層を中心に労働力人口が減少傾向にあるのは間違いない。この社会課題を解決するためには、そもそもの人口を増やすための少子化対策も重要ではあるものの、喫緊で取り組むべきは、労働者一人当たりの生産性を向上させていくことだろう。政府が働き方改革などを積極的に推し進めていることからも、より生産性の高い働き方へシフトさせることがあらゆる産業で求められていることが分かる。

労働力人口の推移(厚生労働省の2011年厚生労働白書より作成)

特に、運輸業や卸業、小売業などを含めた流通業界では、人材不足への早急な対応が求められる業界の1つ。例えばパートタイマーやアルバイト比率の高いスーパーやコンビニエンスストアなど小売の世界では、全体的に立ち仕事が多く、土日も休みづらい勤務体系であるなど、若者から比較的敬遠されがちな業界といえる。人員確保に頭を悩ませる経営者も多いことだろう。最近ではRFID(Radio Frequency IDentification)などを使ってPOSレジを自動化するなど、省力化に向けたさまざまな投資が行われていることも、その危機感の表れといえる。

この人材不足がモノを運ぶ配送の世界でも深刻な事態となっていることは、ご存知の通りだ。インターネットで手軽に商品が購入できるEコマースが盛んになったことで、自宅まで商品を届ける配送頻度が増え、宅配ドライバーに対する負担が急増。宅配大手は軒並み配送料金の値上げに踏み切るなど、人材不足が流通業界に大きな影響を与えている。

流通業界が抱える課題は、実は人材不足だけではない。今ではインターネットが高度に発達したことで、子供からお年寄りまでさまざまな形でサービスを受け、個人の志向に沿ってあらゆる情報にアクセスできる時代。ニーズの多様化によって“女性であればこういうものが好まれる”といった画一的な傾向をつかむのが困難な状況にある。しかも、ニーズの多様化は扱うモノに対してだけではない。販売店やインターネットによる配送だけでなく、コンビニエンスストアへ商品を配送して受け取ることができるといった、サプライチェーンに対してもそのニーズを多様化させている状況にあるのが今の実態なのだ。

情報が分断…デジタル化が進む流通業界に横たわる課題

情報が分断…デジタル化が進む流通業界に横たわる課題

これら人材不足やニーズの多様化といった課題に対処するためには、まずは現状を的確に可視化させたうえで改善点を見出していくことが重要になる。流通の業界では、すでに多くのデータが現場に存在しているケースが多く、他の業界に比べてデジタル化が進んでいる傾向にある。「もともと小売の現場にはPOSデータが存在しており、卸の現場には在庫管理システムとしての在庫情報がしっかりと蓄えられています。本来であれば、すでに得ているデータをうまく活用することで、前述した課題に対処していきやすい環境にあるのが流通業界です」とサービステクノロジー本部 イノベーティブシステム事業部 事業部長 後藤 博之氏は説明する。

しかし、現実的にはなかなかうまくいっていないのが実情だ。サプライチェーン全体を見渡せば、確かにそれぞれの現場は高度にシステム化されている。倉庫であれば庫内在庫を適切に管理し、効率的にピッキングするためのシステムが存在しており、店舗のPOSデータはマーケティングのために活用されたり受発注のための基礎情報として利用されたりしている。しかし、それぞれが有機的に連携しているわけではない。要は、部分最適化されてはいるものの、業界が抱える大きな課題を解決するためにデータ活用できる状態にはなっていない。一言で表すならば情報が分断されている状態にあるという。「情報の分断、つまり“つながっていない”のは、2つの意味があります。倉庫や店舗など場所ごとに異なるデータが存在したままつながっていないというのが1つ、そして従来からある業務データと、例えば人やモノにセンサーを取り付けて得られるデータが全く別の目的で動いており、一元的に利用できていないというのがもう1つの意味です」と後藤氏は指摘する。

流通業界はニーズの多様化や人材不足といった課題を抱えている。解決の鍵は分断されているデータをいかに活用するかだ。

富士通が実践するIoTアプローチ

富士通が実践するIoTアプローチ

そこで富士通が取り組んでいるのが、効率化を進めながらも、今までにないビジネス機会を生み出す、新たな価値創出のための仕組みづくりだ。「新たな価値を生み出すプロセスは、1年といった短いスパンでの改革は難しく、すぐにはリターンに結び付きにくい。だからこそ、目先の効率化を目指しながら、将来的な価値創造も提案していくことが重要です」と後藤氏。まずは効率的に現場を整流化するところから始め、その先にある世界を示していくアプローチだ。

ただし、センシング技術を用いて現場を可視化するなかで効果を示す際には、単に紙の業務を電子化することで削減できる定量的な効果を示すようにはいかず、どうしても仮説にならざるを得ない。「IoTへの投資は、段階的なものになるのが通例です。小さい投資で効果を確認し、確認できた段階で次の仮説に取り組んでいくことが必要です」と後藤氏はIoTビジネスの実態について指摘する。だからこそ、目で見て分かりやすい効率化から始めることが多くなるわけだ。もちろん、効率化を目指す現場と新たなビジネスを模索する企画部門とではそもそも判断する部署や人が異なるため、どの段階で誰と価値を一緒に作っていくのかを意識しながら進めていくことも重要だと後藤氏は力説する。

そんな富士通として流通業界向けに取り組むソリューションの中核にあるのが、「FUJITSU IoT Solution SMAVIA」(以下、SMAVIA)だ。この基盤は、サプライチェーンの各種データをつなげ、新たな価値を創出するプラットフォームとなるもので、収集したデータを活用できる形に整流化する仕組みとともに、AIを含めた各種アルゴリズムに基づいて蓄積したデータを分析することで、これまでとは違う新たな価値やビジネスを生み出すきっかけをつくり出すことを目指している。

SMAVIAの仕組み

SMAVIAには、現場に設置したセンサーから得られる現場センシングデータと、販売管理システムなど従来からある業務システムデータを、データベースに取り込む前にデータを整流化したうえで取り込むデータアダプタが備わっている。また、蓄積されたデータを分析する各種アルゴリズムも稼動しており、機械学習を含めたAI技術も活用しながら、流通業界における課題解決につながるデータ解析が可能になっている。特徴的なのは、行動最適化や物流最適化、販売最適化、環境把握といった流通分野に特化したアルゴリズムを備えていることだろう。

例えば「最適要員解析」と呼ばれるアルゴリズムを例に、流通業界における課題の1つである、庫内作業における複雑な要員計画について見てみよう。一般的には、現場にいる熟練のリーダーが作業者のスキルや相性などを勘案しながら属人的なアプローチで要員計画を行っており、この作業に多くの時間と手間をかけているのが実態だ。SMAVIAが持つ最適要員解析を用いれば、予定された物量や業務ごとに必要な平均的作業時間、そして作業員が希望するシフトなどを投入するだけで、最適な人的配置を導き出すことができるようになる。

人材不足やニーズの多様化という課題に直面する流通業界において、従来の業務システムデータを活用しながら、最新のセンシング技術を用いた現場センシングデータを組み合わせることで新たな価値を生み出す挑戦を続けている富士通の流通IoT。後編では、SMAVIAの具体的な仕組みやその強みについて見ていきながら、同社が描く流通業界の未来とその戦略について紹介する。

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