IoT新時代 先進事例から勝機を掴め

流通IoTの現在地 - 富士通:後編

高度なアルゴリズムを武器に“流通業務”へと適用を広げる
富士通が目指す流通IoTの未来像

人材不足に悩む流通業界において、現場での効率化に向けた仕組みづくりは避けては通れないもの。そこで期待されているのが、センシング技術を用いたIoTソリューションによって現場をこれまで以上に可視化し、効率化を実現する流通IoTだ。後編では、効率化はもちろん、新たな価値創造に向けての基盤となる流通業界向けIoTソリューションを提供している富士通株式会社に、流通IoTが目指すべき世界とそのための仕掛けについて詳しく伺った。

流通業界向けのIoTプラットフォーム“3つ”のアプローチ

流通業界向けのIoTプラットフォーム“3つ”のアプローチ

富士通株式会社
サービステクノロジー本部
イノベーティブシステム事業部
事業部長
後藤 博之氏

労働人口の減少が社会問題となる中で、人材不足に大きな課題を抱える流通業界。そんな流通業界だからこそ、限られた人員でサービスの質を担保しながら運用できるよう、業務効率化や生産性向上の取り組みが常に求められている。そんな流通業界に向けて富士通では、IoTプラットフォームである「FUJITSU IoT Solution SMAVIA」(以下、SMAVIA)を提供し、サプライチェーンの各種データと組み合わせた分析を実現することで、業務の可視化や効率化はもちろん、新たな価値を創出することを目指している。

富士通では、このSMAVIAを活用し、大きく3つの具体的なアプリケーションを軸に流通業界の課題に応えるサービスを展開している。具体的には、「倉庫作業員パフォーマンス」「在庫可視化」「作業工程分析」と呼ばれるデータ利活用サービスだ。

「倉庫作業員パフォーマンス」は、シンプルに言えば、現場の業務分析や効率化を図るべく、センシングした現場の人やモノの動きと業務システムのデータを分析し、業務改善のポイントやその中にある革新の種を見つけ出すサービスだ。倉庫や店舗内での作業を見ながら、誰がどういう作業をしているのか、どこに時間がかかっているのか、あるいは誰が“いい仕事”をしているのかを可視化、定量化することが可能になる。業務システム上で管理している業務指示データや実績データをはじめ、位置情報やバイタルなどのIoTデバイスから得られたセンシングデータを収集し、業務の状態を可視化していくことになる。

次に「在庫可視化」は、在庫の状況をリアルタイムに可視化し、適切な発注数量の検討を支援するサービスだ。生産工場や配送センター、さらには店舗に至るまでの商品の所在をRFIDなどでセンシングし、各フェーズの業務システムが持つ入出荷情報やPOSの販売データと組合せて分析する。「モノを製造するメーカーから保管する卸、そして販売する小売りまで、サプライチェーン全体の情報を横断的に分析することで、在庫状況の把握による効率化はもちろん、新たな領域にビジネスを拡大させるといったこれまでにはない価値創出へ役立つソリューションになります。」とサービステクノロジー本部 イノベーティブシステム事業部 事業部長 後藤 博之氏は説明する。

そして「作業工程分析」は、現場作業員やフォークリフト等の機材をセンシングして得られる位置情報を活用し、どの作業にどれくらいの工数がかかっているか把握できるサービスだ。各作業における所要時間を把握することで、想定より時間がかかった(コストがかかった)作業を定量的に可視化し、人不足の解消につながる業務改善や、適切な原価を把握することで損益を改善することが可能となる。「これまでは作業の詳細を把握することが難しく、業務の課題をどこから改善すべきか分からなかったという声がありましたが、IoTの活用によりこれらの課題を解決できます」と後藤氏は語る。

富士通がSMAVIAで展開している3つのデータ利活用サービス

流通IoTにおける富士通の強みとは?

流通IoTにおける富士通の強みとは?

流通業界向けのIoTプラットフォームとして提供されているSMAVIAだが、その強みはどこにあるのだろうか。ポイントは、エッジにおけるセンシング領域とともに、SMAVIAへの格納及び分析のアルゴリズムにあると後藤氏は指摘する。

センシングについては、「ユビキタスウェア」と呼ばれる豊富なウェアラブルデバイスを用意している点はもちろん、それらデバイス内でも分析を行う、いわゆるエッジにおけるデータの一次分析アルゴリズムを備えているのが特徴の1つだ。ウェアラブルデバイスによってセンシングされたデータにより、例えば立位や座位、臥位といった姿勢特定が可能になる身体姿勢検知をはじめ、転倒検知や屋内測位、熱ストレスレベル推定、身体負荷推定など、さまざまなアルゴリズムを駆使することで、課題に対して必要なセンシングデータを提供することが可能になる。「エッジに関しては、ハードウェアもソフトウェアも提供していますが、重要になるのはセンシングをどう現場に適用させるのかという視点です。どんな形でセンサーを取り付けると最適なデータが取れるのか、どういったアンテナで拾うと読み取り精度が高く正確な情報が取れるかといった、現場への適用技術も我々の強みとなっています」と後藤氏は力説する。

また、センシングされたデータはクラウドに集めていくことになるが、センサーそのものにはBluetoothといったシンプルな通信手段が採用されており、クラウドへの送信にはゲートウェイの存在が不可欠だ。「データをどんな周期で、そしてどんな形でクラウドへ送ると最適なのか、通信レイヤーについても提供しているのが我々の強みの1つ」と後藤氏。実は、このゲートウェイの部分にハイパフォーマンスな処理が可能なインテルのチップが利用されており、エッジ側でのリッチな処理が求められる際に大いに役立つはずと後藤氏は期待を寄せている。

さらに、クラウド側のデータベースにデータ格納する前のデータ加工処理技術をはじめ、流通業界に向けた豊富なアルゴリズムを独自に備えている点も大きな強みとなっている。具体的には、「作業員動線解析」「作業量解析」「最適要員解析」といった行動最適化に関するものから、「輸送距離解析」「最適ルート解析」といった物流最適化に関するもの、「販売数量解析」「発注回数解析」といった販売最適化に関するもの、そして「会話解析」「SNS解析」といった環境把握に関するものまで、豊富なアルゴリズムで顧客の課題に応える環境が用意されている。「多種多様な現場のデータをどう組み合わせれば課題解決につながるのかといった知見はもちろん、豊富に用意されたアルゴリズム自体が大きな特徴といえるのです」後藤氏は説明する。

あらゆる業界の“流通業務”へ範囲を広げる、流通IoTの未来

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現在進めているプロジェクトでは、新たな価値創出を目標に掲げながらも、初めのステップでは倉庫内の棚卸作業の削減といった効率化に取り組むケースが多い状況にあるという。「RFIDを用いて簡単なロボットを使うことで、本来業務を止めざるを得なかった棚卸作業を改善したり、人的なチェックによるミスを減らしたりといった具体的な効果を追いかけている段階です。いずれ在庫が的確に、かつリアルタイムに把握できるようになれば、例えば災害時にモノの動きがストップしたときに、最悪何日以内にどこからモノを出せば事業復旧できるといった、ビジネスリスクマネジメントという新たな視点でも効果を示すことができます」と後藤氏。実際に事業継続の観点で役立っているという声もすでに出てきているという。ビジネスの拡大という意味では、例えば卸業を営む企業が、上流のメーカー在庫や店舗在庫も一元的に把握することで、正確なリードタイムを可視化し、サプライチェーン全体にまで自社のビジネス領域を広げていく将来像を描き、プロジェクトを推進している企業もあるという。

現状のビジネスを進めながらも、富士通が目指す今後については、「目の前のことでいえば、このソリューションは流通業のお客さま以外にも存在する、“流通業務”に適用できるものです。例えば倉庫を持っているのは物流のお客さまだけでなく、メーカーにも存在しています。モノが保管されているのは小売店のバックヤードだって同じ。流通業務の改善につながるソリューションだからこそ、他のどんなお客さまの業務に適用できるかも見極めていきたい」と後藤氏。

流通業務に向けた既存のアルゴリズムだけでなく、パートナーが開発しているAIエンジンやアプリなど、一緒にインテグレーションすることで新たな価値が顧客に提供できるのであれば積極的に取り入れたいという。「サードパーティのセンサーなども含め、外の価値も柔軟に取り入れていかないと大きな価値は提供できません。自分たちの技術を磨きつつ、外部の仕組みと組み合わせながら価値に転換していきたい」とその意気込みを語る。

またソリューション開発当初からグローバル展開も視野に入れており、その展開に向けても下地作りを進めていくという。「人材不足については日本独自の課題ですが、ニーズの多様化といった流通業界の課題は海外でも共通です。グローバルも視野に今後も取り組んでいきたい」と後藤氏。そんな今後のビジネス展開において、インテルの持つ顧客層や豊富なIoT事例が大いに参考になるという。「ゲートウェイ以外のデバイス提供も含め、さまざまな業種でグローバルな経験を持つインテルとともに、共同でソリューション展開できるとうれしいですね」と最後に語った。

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