国連総会でSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)が採択されたのは2015年9月。以来、多くの企業がSDGsを経営指標として意識するようになっている。SDGsの採択以前から、そこに掲げられた社会的課題を解決する様々な事業活動を展開してきたことで注目されているのが、日本アジアグループとその中核企業である国際航業。現状をどう捉え、今後の事業展開をどう描いているのかを、トップに聞いた。

環境や時代が変われば課題も変わる。その変化に技術で対応し、持続可能なまちづくりに取り組む

SDGsの理念を追い風に、持続可能な地域への貢献を進める

国際航業株式会社 代表取締役社長 𡈽方 聡

―SDGsの採択から2年半が過ぎました。以前から、持続可能で安心・安全なまちづくりに取り組んできた国際航業にとって、この採択はどのようなインパクトがあったのでしょうか。

𡈽方:SDGsで掲げられた17のグローバル目標と169のターゲットは、 “Save the Earth, Make Communities Green”を旗印に事業展開してきた私たちにとって、まさに我が意を得た内容であり、強く背中を押された思いがしました。特に17の目標が個別に存在するのではなく、相互に連関しながら、一つの目標の達成が他の目標の推進にもつながっていくという考え方は重要ですね。SDGsが示すのは未来の社会の在り方であり、SDGsの理念を理解し、事業で利益を追求すると同時に社会的責任を意識し、果たしていくことが、未来の企業の在り方になると思います。当社の未来にとっても、このインパクトは大変に大きいものです。

17のグローバル目標のうち、当社の起点となるのは13番の『気候変動に具体的な対策を』です。当社は気候変動やそれに起因する防災・減災分野で、多くの適応策・緩和策の策定と実行に関わってきました。そこで培ったノウハウは、グループで取り組むグリーンエネルギー事業や森林活性化事業などにも生かされています。特に2011年からスタートしたグリーンエネルギー事業は、未利用地を活用した太陽光発電所の開発を中心に、非常用電源の設置や発電所での環境教育なども実施しており、目標の7番、13番に加えて11番と4番の達成にもつながっています。

今後は、こうした私たちの取り組みを、これまで以上に多くの方々に知っていただくことも重要になってくるでしょう。地域のイノベーションは、よそもの・わかものからはじまるともいわれています。当社が各地域の課題解決に中心的な存在として関わり、将来を見据えた広い知見で提案を行うことで、その地域の持続可能な成長につながるような仕事を増やしていきたいと考えています。

SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS 世界を変えるための17の目標

課題解決に不可欠な事実の把握・検討・対策・実行を支える

―SDGsで掲げられた目標に向けた活動に、企業が事業として取り組むことの意義はどこにあるとお考えでしょうか。

𡈽方:SDGsの関連分野で事業を展開していることは、企業が社会から求められる存在であることを意味すると思います。これは、当社の社員にとっても大きなモチベーションになるはずです。当社には、もともと社会貢献に対する意識の高い社員が多いのですが、今後はより若い世代を巻き込み、社会を変えていくリーダーシップを身につけた人材の育成に力を入れていきたいと思います。彼らは既に、新たな課題に気づいているかもしれません。そうした“気づき”を事業に結び付けてこそ、持続可能な社会に貢献できるサービスを生み出していけると思います。

地域や社会の新たな課題に対応するためには、事実を把握し、その事実を解析し、目標とのギャップを段階的に埋めていくための対策を考え、実行していくプロセスが必要です。そして事実の把握・検討・対策・実行に不可欠なのが、そのもとになる正確なデータを「取得」し、それを「解析」し、さらに「役立てる」技術。当社の強みである地理空間情報技術を、そこに生かすことができます。

事業を通じたSDGsの取り組み
事業を通じたSDGsの取り組み

70年にわたってまちづくりを支えてきた当社の歴史は、まさにこのプロセスによる課題解決の積み重ねであるといえるでしょう。新たな社会的課題に対するとき、時には今までの常識を超えた発想が必要になる場合もあります。柔軟な思考を持ち、常に磨きをかけてきた地理空間情報技術に、AI、IoTなどの先進技術を組み合わせることにより、目標達成に向けたよりよいサービスを創造し、国内・外に提供していくことは、当社の未来のあるべき姿だと思っています。

気候変動によって生まれる新たなビジネスチャンスとは

―社内に気候変動対策研究所準備室を開設されたのも、SDGsに対応した事業展開の一環ですね。どのようなねらいがあるのでしょうか。

𡈽方:「持続可能な開発のための2030アジェンダ」では、「持続可能な開発を、経済、社会および環境という三つの側面において、バランスがとれ統合された形で達成することにコミットしている」と明記されています。この経済、社会、環境の三側面のバランスをとり、統合された形で達成するという考え方は、あらゆる事業の基本となります。

当社の事業分野である防災・減災への対策にも、近年の気候変動によって大きな変化が求められるようになっています。これまで土砂災害に見舞われたことのなかった地域でも、雨の降り方や地形、土地利用が変化すれば、危険な地域になることがあります。こうした自然条件や社会経済条件などの変化を予見し、災害を未然に防ぐための対策は、社会や経済の持続可能な成長を目指すために不可欠なものになるはずです。

当社が、シンクタンク設立を前提に、社内に気候変動対策研究所準備室を設けたのは、こうした気候変動に関する課題の調査・研究を行い、企業戦略を提案するサービスに、ビジネスチャンスがあると考えたからです。SDGsへの取り組みはもちろんのこと、当社はTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)にも賛同していますが、TCFDでも気候変動が企業の持続的な成長にどのような影響があるかをシナリオ分析することが求められています。当社にとって、気候変動はリスクであると同時に、大きなビジネスチャンスでもあるのです。

たとえば「古い道路の整備を行いたい」という要望に対し、単に整備を行うだけでなく地域の課題を踏まえ、将来的にこの場所にある道路が住民の利便性につながるのか? 今後の維持管理において問題はないのか? などの課題検証により、将来的なまちづくりにあった提案ができます。また、道路にセンサーやカメラをつけておくことで、遠隔からの監視が容易になり、自然災害の未然防止から、防犯、維持管理の効率化、さらにはより高度な道路利用のための情報収集など、無限の広がりを持った活用が可能となるでしょう。このような情報の見える化を当社が得意とするGIS技術を活用すれば、自動走行時代に向けてベースとなる3D地図にリアルタイムの状況を付加することも可能になります。SDGsの17番の目標では、「パートナーシップで目標を達成しよう」と述べられていますが、当社と異なる技術やサービスを持つ企業が協業することにより、解決できる課題は何倍にも広がるでしょう。

時代が変われば課題も変わります。それに合わせて思考も変化させ、よりよい解決方法を導き出すことで、お客様の想定を超えた未来を示唆し、安心・安全なまちづくりを実現したいと思っています。

社会の変化、技術革新を先取りし成長し続ける企業へ

―SDGsのゴールは2030年です。その頃までに、日本アジアグループや国際航業は、どんな企業になっているでしょうか。

𡈽方:「日本アジアグループ、国際航業は、“Save the Earth, Make Communities Green”に率先して取り組む企業である」。そうした認識を、より多くの方々に知っていただかなくてはなりません。 日本政府が掲げる新たな社会像「Society 5.0」にあるようにAIやIoT、ビッグデータなどの技術革新を最大限に活用した社会は、まさにSDGsが達成された社会になっているはずです。今ある仕事の47%は自動化される可能性があるといわれていますが、事業の在り方、方法、活用シーンを変革させればいいのです。変化をタイムリーに捉え、お客様と社会の期待に応えられるよう、私たち自身も変わり続けてゆくつもりです。2030年はSDGsのゴールでもあり、当社の事業の起点とも言える気候変動対策はより具体的な活動が求められるようになるでしょう。そのような時代の変革の中においてもメインプレーヤーとして企業理念である“Save the Earth, Make Communities Green”の実現を推進していきたいと思います。

「Society 5.0」の実現には、新しいビジネスモデルの創出や、産業そのものの変革を促し社会に新たな価値を生み出すことが必要となるでしょう。当社は、気候変動と「Society 5.0」を企業としての成長につなげるために不可欠な技術・ノウハウを、様々な企業と社会に提案・提供できると自負しております。また私たち自身も、SDGsを達成し、持続可能な社会発展のための課題解決を自社の成長につなげる企業でありたいと思っています。

事例1 遊休地を活用した太陽光発電所
事例1 遊休地を活用した太陽光発電所
国際航業が開発した太陽光発電所

和歌山県にある、国際航業が開発した太陽光発電所は、もともとは産業廃棄物が置かれ、適切な処理がされていなかった土地で、ダイオキシンが発生するなどの問題を抱えていた。無害処理後も放置されていたが、今は発電所であるだけでなく、非常用電源の保管所、環境教育の現場としても活用されている。

事例2 森林の活性化
事例2 森林の活性化
国際航業が開発した太陽光発電所

日本の国土の3分の2は森林といわれているが、適切に管理されている森林ばかりとは限らない。林業従事者は減少傾向にあり、森林保有者の関心も低下している。そこで日本アジアグループが事業主となり、国際航業の技術を活用して、徳島県で森林管理・林業再生に乗り出した。林業のバリューチェーン構築、森林の価値向上に取り組んでいる。

事例3 安心・安全なまちづくり
事例3 安心・安全なまちづくり
国際航業が開発した太陽光発電所

仙台市の田子西地域で「エコモデルタウン」の整備を進めている。これは、東日本大震災を受け、自然と融合して、エネルギーの消費を抑えて快適に暮らせるまちをつくろうという試みだ。もともとは水田だった土地に、災害に強い都市基盤を整える。

Vol.1 空からの視点で農業を支え、生産者の笑顔を増やす Vol.2 位置情報を読みといて、理想的な働く環境をつくる Vol.3 地震発生から20分以内に現実に即した津波浸水被害を推計する
日本アジアグループ株式会社
国際航業株式会社
2016年度 よりよい地球の未来をつくる