変革の時代に先進の総合力で応える

地政学的リスクに伴う関税マネジメントは経営戦略の一つ

BEPSの問題が顕在化して以降、国際税務の世界は一大転換期を迎えた。こうした中、日本企業の間でもグローバルな税務管理体制を見直す機運が高まっている。特に関税リスク対応の観点から、日本企業はどのような税務マネジメントを行うべきか。KPMG税理士法人の神津隆幸氏と古賀弘樹氏に話を聞いた。

*Base Erosion and Profit Shifting(税源浸食と利益移転)の略。グローバル企業が低税率国に利益を移転して租税回避を行う節税策で、問題視されている 。
KPMG税理士法人 バリューチェーン アドバイザリー サービス パートナー/税理士
神津 隆幸 氏 / KPMG税理士法人 バリューチェーン アドバイザリー サービス マネジャー/税理士・通関士有資格 古賀 弘樹 氏
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バリューチェーン アドバイザリー サービス
パートナー/税理士
神津 隆幸
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バリューチェーン アドバイザリー サービス
マネジャー/税理士・通関士有資格
古賀 弘樹

日欧EPAの発効を機に改めて問われる関税リスクへの対応

激化の一途を辿る米中貿易摩擦や、英国のEU離脱など、世界経済を揺るがす地政学的リスクが顕在化している。保護貿易主義の拡大は、グローバル展開する企業の税務に深刻な影響をもたらしつつある。

「自国第一主義の高まりによる関税環境の変化に伴い、多くの企業がサプライチェーンを見直す必要に迫られています。しかし、関税コストだけに着目してサプライチェーンの見直しを進めてしまうと、法人税の負担が増えてしまう可能性もあります。税のトータルな最適化を図るには、関税のみならず、その他の税目全体を包括的に捉えた、いわゆる地政学的税務リスクへの対応が必要です」(神津氏)

しかし、関税リスクに係る日本企業の認識は未だ十分とはいえない。BEPSを機に、日本でも移転価格税制への対応が更に進んだが、関税リスクや関税コスト削減機会について十分な理解があるとはいえず、企業経営を圧迫する一因となっている場合もある。

「2015年にコーポレートガバナンス・コードが制定され、税務ガバナンスの構築に向けた議論も盛り上がりつつあります。しかし、関税についてはリスク管理やコスト削減の対象とは認識されておらず、誰が最終的な管理責任者なのかさえ判然としないのが実態です。関税は損益計算書の『売上原価』の中に埋没しているケースが多く、その総額を正確に把握することさえ難しいことがあります。グループ全体で関税を最適化するには、トップダウンで組織横断的に取り組む必要がある場合が多いです」(神津氏)

一方で、関税環境の変化がもたらすのはリスクだけではない。FTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)をうまく活用すれば、関税コストを削減し、税前利益やフリーキャッシュフローの増加をもたらすことも可能となる。

「来年早々には、日欧EPAの発効が予想されています。これが発効すれば、日欧間で新たに一大自由貿易圏が誕生することになるでしょう。しかし、日欧EPAの活用に向け、具体的な対策ができている日本企業は、まだ少ないのが実情です」(古賀氏)

では、FTAやEPAの恩恵を受けるために最も必要な手続きとは何か。それは、「原産地証明書」の作成である。

例えば、国産自動車のパーツには、海外で調達した部品も使われている。その割合が一定の基準を超えると、「日本の原産品」とは認められなくなる。このため、FTAやEPAの適用申請にあたっては、協定国で作られた原産品であることを証明する「原産地証明書」の提出が求められる。

しかし、例えば、自動車の生産工程には多くのサプライヤーが関わっており、サプライヤーの納入部品の原産判定にミスがあれば、自動車自体の原産性が問われる事態につながることもある。さらには、原産地証明書の作成に必要な人件費・IT投資などの管理コストが特恵関税によるコスト削減効果を上回った結果、全体としてコスト増につながってしまう可能性もある。

こうした事態を防ぐためには、最初に「どの品目に関税をいくら払っているのか」という定量情報を可視化することが必要だ。特恵関税適用の費用対効果を検証し、適用の可否について経営判断を行うことが、まさにコーポレートガバナンスの一環として求められるのである。

関税の見える化は、税務リスク管理の面でも必須となりつつある。今後、日欧EPAが発効すれば、原産地証明書の発行は輸出者自らが行う「自己証明方式」となり、その結果、現状の「第三者証明方式」と比べて、企業はEUの関税当局から輸出品の原産性について検認(監査)を受ける機会が増えることになると予想されている。もし検認により原産性が否定されれば、追徴課税やペナルティを科される可能性もあるばかりでなく、検認に対応するための稼働負担により日常業務への対応が立ち行かなくなるリスクもある。こうした事態を回避する意味でも、最初に定量情報を確保し、事前にリスクを特定できることが重要になる。

「ヘルスチェック」で関税リスク・
削減機会対応の方策を提案

関税リスクやコスト削減機会の見える化を具体的に実現するためには「本社主導でグローバルな税務管理体制を構築し、世界中に張り巡らしたサプライチェーンの全体を視野に入れることが必須」(神津氏)。加えて、各国の関税事情に精通した人材の確保も重要となる。

しかしながら、企業の税務部門の陣容には限りがあり、必要な知見の全てを社内で賄うことは現実的ではない。こうした企業の課題に対応するために、KPMGでは、税務専門家による関税対応の健康診断サービス「ヘルスチェック」を提供する。関税の過少申告や輸出入手続きの誤りといった潜在的なコンプライアンス・リスクの特定と同時に、不必要な関税や通関手数料など、コスト削減が可能な項目を洗い出し、具体的な施策を提案。さらに、データ分析を行い、国別・品目別に関税リスク・削減機会を見える化するためのサポートも行っている。

世界154カ国に広がるKPMGのグローバルネットワークを活かし、各国の税制・税務の最新情報をいち早く入手。顧客ニーズに応じて各分野の専門家が連携し、国・地域やサービスラインを超えてサポートが提供できるのも、同法人の特徴である。例えばサプライチェーン構築にあたっては、関税や国際税務、物流効率化など、様々な国で多様な領域のノウハウが必要となるが、幅広い分野の専門的知見を結集して、顧客の課題解決を強力にサポートする総合力――それこそが、総合ファームであるKPMGの最大の強みといえる。

「地政学的税務リスクが高まる中、税務の最適化を実現するためには、税務管理のレベルを向上することが必要です。そのためにも、情報の可視化と、トップダウン型税務管理体制の構築は急務。お客様の課題解決に向けて、ぜひ我々の専門的知見を活用していただければと思います」(神津氏)

ヘルスチェックによる潜在的な税務リスクの特定
		税関調査での指摘
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