代表取締役 最高経営責任者 松田 総一 氏
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多額の資金がかかることを理由に、AIビジネスに二の足を踏む企業は多い。実際、新しいビジネスモデルの開発にはトライ&エラーが不可欠だが、「失敗できない」現実は大きな足かせとなっている。連載第5回で紹介するのは、低コストで、PDCAを高速に回すことができる、これまでの常識を覆す「挑戦」できるAIサービスだ。誰もがAIに挑戦できる時代がもう目の前にやってきた。

LeapMind

2012年設立。「全ての人にDeep Learningのある生活を」というコンセプトで組込みディープラーニングの研究開発を行い、自動運転プロジェクト、瓦礫撤去ロボット、発電所での異常検知、食物の異物混入検査などのプロジェクトを成功させる。プログラミングが必要なく組込み向けディープラーニングモデルを構築できるSaaS型のソリューション「DeLTA-Lite(デルタライト)」や、ディープラーニングを簡単に評価できるハードウェアキット「DeLTA-Kit(デルタキット)」を提供。インテルとも資本提携し、AI業界で多くの注目を集めている。

「ディープラーニングは、インターネットと同じくらいのインパクトがある技術です。インターネットは今や、あるのが当たり前の存在ですが、その登場により世の中の常識やビジネスモデルを破壊、創造するトリガーとなりました。誰もが当たり前のように使え、新たな価値やビジネスを生み出す。ディープラーニングの世界もその入り口に立っているんです」

そう興奮気味に語るのは、LeapMind 代表取締役 CEO 松田総一氏だ。
「ディープラーニングを民主化させる」――。
その熱い思いが、今、AIビジネスの常識を変えようとしている。

早くから組込みディープラーニングに注目し、研究開発を続けてきたLeapMindが生み出したのは、「どこでも」「誰でも」「低コストで」ディープラーニングを可能にする世界だ。

「身近なAI」はビジネスの常識を変える

「身近なAI」はビジネスの常識を変える

ーーLeapMindは、早くからディープラーニングに注目し、研究開発をされてきたそうですね。

創業したのは2012年。現在AIブームが訪れる随分前から、ディープラーニングの可能性に注目し、研究を始めました。創業から2年ほどは、誰からも相手にされず辛い時期が続きましたね(笑)。ただ、強い信念をもって取り組み続けることができたのは、まるでSFの世界のような人間と機械の垣根がなくなる未来をつくりたいという思いでした。ビジネス界においては、今現在「IoT」が話題の中心ですが、実はもうすぐそこに「Deep Learning of Things(DoT)」の流れがきていると考えています。少し飛躍して聞こえるかもしれませんが、DoTの先には、人と機械の垣根がなくなった、もっと便利で快適な世界が実現することも夢物語ではないと考えています。

もう少し身近な近未来の例を一つ挙げてみましょう。2018年1月、アマゾンが店舗の未来形の提案として「Amazon Go」を米国・シアトルにオープンし大きな話題を集めました。カメラとセンサーを使うことで、客が棚から取った商品を認識。客はレジを通らず店を出ることができ、会計をすることなく買い物ができる。現時点では常識はずれの未来型店舗です。ディープラーニングは、こうした新たなビジネスモデルを生み出していくことでしょう。こうした例を聞くと、「アマゾンのように資本力があるからできるんだろう」と思う読者の方も多いかもしれません。確かにこれまでの常識はそうでした。

しかし、今その常識が変わろうとしています。それを実現するのがまさに我々が提供をはじめたSaaS型のディープラーニングソリューションです。「誰でも、いつでも、低価格で、AIにチャレンジできる環境」を提供している、と言いかえればわかりやすいでしょうか。これは、AIビジネスの世界において、革命的なことだと自負しています。

先ほどの店舗の事例で想像してみましょう。AIの導入コストが大幅に削減されることで何が変わるか。例えば、店舗に1台、AI搭載カメラを導入するのがやっとだったものが、棚に1台ずつ、さらには商品1つずつにカメラを搭載できるようになるでしょう。そうなると、アマゾンと同じ無人店舗が、商店街の八百屋さんでも実現できるかもしれない。そう考えると、ワクワクしませんか。ビジネスのパラダイムシフトを起こす大きな可能性があると考えています。

ーー確かに、AIに挑戦したものの、失敗したという話が後を絶ちません。膨大な投資金額は、さらに萎縮させる要因となりますね。

新たなビジネスや製品を生み出す過程には、多くのトライ&エラーがあってしかるべきで、むしろ多くの挑戦と失敗を重ね、PDCAを高速で回すことこそ、成功への近道です。しかし、ディープラーニングにおいてはコストが障壁となっているのが現実です。一般的に、ディープラーニングを始めようとすると、高価で大規模なGPUサーバを準備し、ディープラーニングのネットワークを作り、ネットワークの実装と実験を繰り返す必要があるため、最低でも3カ月以上かかり、タイムリーなビジネス機会のためのシステム構築や、ディープラーニング技術の進化に追いつくことが難しいという課題が生じます。コスト面でも最低でも数百万円、継続的なコストも必要となってしまいます。また、ディープラーニングに使うGPUは、サイズも大きく電力効率も悪く、さらに高コストであることから、簡単に導入することはできません。

企画・手法調査から始まり、教師データ作成を経て、およそ3ヶ月以上かけてモデル設計から
ハードウェア実装に向けたモデル圧縮まで行うのが一般的なプロセス。

ーーAIが使える領域が限定されてしまうということですね。

残念ながら今はそうですね。ディープラーニングが必要なのは、サーバルームだけではありません。例えば、GPUを用いて自動車やドローンでディープラーニングを活用しようとしても、電力とスペースの問題が挙げられます。計算をクラウド側で行おうとすると、今度は通信環境の問題がネックになる。トンネルに入ってインターネットが切れて、自動運転中の車が事故を起こしてしまえば本末転倒ですからね。

我々はその問題点を創業当初から感じ、一つのアプローチとして「組込みディープラーニング技術」の実現を目指し、形にしてきました。ソフトウェアとハードウェアの両領域におけるソリューションの研究開発を行い、ディープラーニングを小さくすることで、小型デバイスなどのエッジ側に搭載することを実現するわけです。今でこそ、エッジ側にAIを搭載することが求められていますが、早い段階から研究開発に着手したことで、GPUやクラウドに頼らないディープラーニングをいち早く提供することができました。発電所やプラント、海上、宇宙などの、場所が限られてインターネットが使いにくい環境でもディープラーニングを可能とし、自動運転、ファクトリーオートメーションでの故障・異常検知、食品異物混入検知。プラントや橋梁などの劣化検知、スマート家電などのプロジェクトを成功させています。

農家でも簡単にAI導入できる時代が到来

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ーー2018年4月にリリースされたSaaS型のディープラーニングソリューション「DeLTA-Lite」が大きな話題となっていますね。

AIを少し知っている方からは、「本当にSaaSでディープラーニングを実現できるの?」と半信半疑で驚かれることも多いですよ。それくらいこれまでの常識を変える、インパクトのあるソリューションをリリースできたと手ごたえを感じています。従来のディープラーニングの課題は、先ほどご紹介した組込みディープラーニング技術を使うことで解決できますが、さらにディープラーニングの社会実装を加速させるために考えたのが「DeLTA-Lite」です。

組込みディープラーニングを行うためには、モデル設計からハードウェアへの実装までソフトウェアとハードウェア両方の高度な専門知識が必要となりますが、「DeLTA-Lite」では、正解ラベル付きの学習データと実装するハードウェアを準備するだけで、手のひらサイズのデバイスでディープラーニングモデルが実行可能になります。プログラミングなどの専門知識が不要で、モデル構築からハードウェア上での検証までの時間を大幅に短縮できます。また、ディープラーニングの設計や目的をチャットベースでアドバイスする有料サポートサービスも用意し、将来的には自動でデータを作成するツールも提供する予定です。

ーー低コストで誰でも簡単に使えるようになっているのですね。

これまでAI活用に失敗してしまった企業やコストをかけてきた企業に使っていただくだけでなく、これまでは導入を考えていなかったところにも利用が広がることを期待しています。例えば、キュウリ農家さん。今AIを知らない農家の方でも、「DeLTA-Lite」を使えばキュウリの良し悪しを判別するために活用することができます。

それくらい「身近なAI」を実現しています。中小企業や町工場、商店街・・・、アイデア次第でさまざまな効率化や自動化を実現できるでしょう。低コスト・短期間で導入できるので、ディープラーニングが行えるエッジを増やすことも考えられますね。Amazon Goが遠い世界の話ではなく、身近なデジタルフォーメーションになる日もそう遠くないと思っています。

AIで未来をつくる、社会を変える

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ーー組込み技術とAIの融合において、LeapMindにはどういった強みがあるのでしょうか。

組込み型のディープラーニングを実現するには、CPUやGPUではなく、ディープラーニングをFPGAに搭載するために、モデルを圧縮して最適化する技術が必要です。FPGAは、GPUよりも比較的低コストで、消費電力も少ないことが魅力的なチップです。一方で、FPGAはハードウェア制御回路のコンフィグレーションデータを生成する必要があるため、汎用的ではあるものの、その使われ方は限定的でした。そういった特殊性から、コンフィグレーションデータを生成できるエンジニアも少ないのですが、FPGAをAIに特化して研究開発してきた我々だからこそ、「DeLTA-Lite」のように、FPGAを意識せずとも、自動的にディープラーニングのモデルを構築させて搭載できるようになったと自負しています。少し専門的な話になってしまいますが、その実現にはディープラーニングの計算構造を熟知しながらハードウェアエンジニアリングができることが重要なポイントで、我々は創業当時から技術的特質がまったく異なる、FPGAのハードウェアエンジニアリングとディープラーニングという2つの技術に投資し、研究開発を続けてきました。

FPGAなどの比較的小型な汎用チップ上で、Deep Learningの計算を行うことにより、資金や電力、
通信環境などの制約に関わらず様々な環境で利用可能になることが、組込み向けディープラーニングの特徴である。

その結果、ディープラーニングに最適化された回路をFPGA上で実行することができるようになり、通常のCPUの40倍の性能を出すことができるようになりました。これらのプログラミングからチップの最適化を一気通貫で自動的に行うことができることが我々の強みです。そうした技術が認められてインテルとは、現在資本業務提携を締結しています。インテルでは、従来のCPUに加えて、FPGAとディープラーニングにも力を入れており、そこに我々の組込み向けディープラーニング技術が使われています。我々としても、この業務提携によってネームバリューが広がり、さらなるグローバル展開を見据えています。

ーーマイクロソフトとの関係性も深いとお聞きしていますが。

1年半ほど前に我々の存在を知ったマイクロソフトから、スタートアップ支援プログラムの「BizSpark」を提案していただき、活用させていただいています。我々自身もトライ&エラーが必要だった時期に、AzureのGPUコンピューティングを利用することができ、商用サービス「DeLTA-Lite」のインフラとして使うことができたのは非常にありがたかったですね。今後は、もっとビジネス連携して関係を深め、マーケティングなどでもより深く連携していきたいと考えています。

ーー現在AI活用で悩んでいる読者、これからAIに挑戦したい読者に、今後AI活用に失敗しないためのアドバイスをいただければと思います。

ディープラーニングを活用しようとしてもコストがかかり、作ったネットワークが大きすぎて利用を想定していた環境に合わないといった課題は、我々の組込みディープラーニング技術や「DeLTA-Lite」で解決できます。しかし、忘れてはならないのは、AIは万能ではない、ということです。AIやディープラーニングは何でもできると思われがちですが、何となくAIをやってみようでは効果を出すことができません。何のために使うのかという目的をしっかりと設計することが重要で、どのように課題を解決するかというコンセプトが何より重要になってくるのです。もちろん、こうした設計部分からもお手伝いさせて頂くことは可能ですし、まずは「身近なAI」を是非実際に活用して、多くの挑戦と成功が「DeLTA-Lite」から生まれたら嬉しいですね。

未来のパートナーを募集中です

未来のパートナーを募集中です

  • 人材募集

    国際学会での論文などが注目されて優秀なエンジニアが世界中から集まっていますが、エンジニアだけでなく、マーケティングやビジネス開発などの人材を全方位で募集しています。

  • パートナー募集

    中国企業との連携なども進んできていますが、グローバル展開ができる販売代理店や販売パートナーを募集しています。

  • お客様募集

    エッジコンピューティングのディープラーニングソリューションを求めている企業様は、ぜひお声がけください。

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松田 総一 氏

LeapMind 代表取締役 CEO

1983年9月13日生まれ。2010年3月に人材を育成するプラットフォームを作るためにCross Agentを設立して、「キャリコレ」や「Jobスタ」を運営。2015年12月には、組込みDeep Learningを提供し、世の中のあらゆるものにDeep Learningが搭載される世界(Deep Learning of Things)を目指すために、LeapMindの前身となるAdd Qualityを設立し、2015年にLeapMindに社名変更している。

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