特別冊子ダウンロード

働き方進化論

PROFILE

国内の化学・ヘルスケア企業や外資系大手製薬会社など、日米を舞台に26年にわたって人事のプロフェッショナルとして手腕を発揮。人事部門の強化・刷新や、人材採用・育成、ダイバーシティ推進など多方面で大きな成果を収めてきた。2016年7月、その実績を基盤に日本マイクロソフトに入社。京都大学卒(文学部・社会心理学専攻)、City University of LondonでMBA取得。

2017年3月「働き方改革実行計画」政府案が発表されて以来、各企業でさまざまな取り組みが展開されてきた。しかし、本質的な働き方改革は、社員ひとり一人の意識改革と企業のマネジメントを両輪とした動きの中でこそ、魂のこもったものとなる。そうした中、組織を率いるリーダーにはどのような働き方が求められるのか? 日本マイクロソフトの人事本部において“データに基づいたビジネス”を実践してきた執行役員 人事本部長の杉田勝好氏に、働き方改革の捉え方や、執行役員として日々実践している自身の働き方について話を聞いた。

※Data Driven HR:データに基づいた人事戦略のこと


常に自分のパフォーマンスの最大化を意識し行動する

杉田氏は、日米のさまざまなトップ企業で、人事部門を牽引してきた。その視点で社内を見渡しても、マイクロソフトの企業文化はかなりユニークだと語る。
「いまやフレックスタイムは、日本企業でも一般化してきました。しかし、マイクロソフトでは出退社時間はもちろん、『今日は出社しないで自宅で仕事をします』というレベルまで、社員が自ら判断することができます。というのも、ひとり一人が担っている業務が質・量ともに非常に大きいので、自身のアウトプットを最大化するにはどんな勤務形態が最適かを常に判断する必要があり、組織もそれを支援する体制が整備されているからです」
 これは、個々の社員がビジネスパーソンとして成熟していることが前提となる。さらに、働き方に対する権限を本人に委譲した上で、各自を信頼しサポートする企業文化がなければ、実現することができない。
「つまり、プロフェッショナルな働き方ができる社員で構成される組織では、生産性向上や成果アップのための最適解を各自が見出し、それを実行した方が企業にとってもメリットが大きいはずだ、という考え方です」
 自己のパフォーマンスが十分に発揮できない働き方は、極力排除するべきだ、というのが杉田氏のモットーだ。

日々の働き方を可視化することで新たな気づきを得る

杉田氏は自らを評して「スケジュール人間」だと語る。「マネジメントとは、全て自分が動くのではなく周囲の人たちに動いてもらうことで、より大きなパフォーマンスを出すことです。そこで私自身、あらかじめ明確なアウトプットをイメージし、それを関係者に伝え共有することと、ゴールを先見し、そこから逆算して誰にどう動いてもらうか、という段取りを常に考えています」
 そんな振り返りに対して、Microsoft 365に含まれる働き方分析ツール「 MyAnalytics 」が、威力を発揮しているという。というのも、人はとにかく誰かと何かをしていれば、仕事をした気になってしまいがちだからだからだ。実はそこに、データに基づいたタイムマネジメントの大切さがある。
「 MyAnalytics のダッシュボードで、会議やメールの占有時間とともに『誰とどれくらい時間を費やしたのか』が一目瞭然になります。各案件のキーパーソンとコラボレーションしていたのなら良いのですが、そうではない人と多くの時間を費やしていた場合は問題です。例えばトラブルシューティングなど生産性のないことに貴重な時間を浪費していたことがデータとして明らかになった場合、働き方を見直すことを心がけています」

自分が今誰とどれくらいコラボレーションしているかを、MyAnalytics を活用すれば視覚的に把握できる。

メールや会議に費やした時間も一目瞭然。数字として捉えることで、自身の働き方に気づきが得られる。

グローバル指標に基づいた“Data Driven HR”で経営戦略に貢献

人事本部が活用している Power BI のダッシュボード。日本だけではなく、マイクロソフトのグローバルな人事関連情報をすべてここからドリルダウンできる。

そして、ビジネス上の問題点を機敏に察知し、解決施策を打つ上では、明確なデータに基づいた判断が必須だと杉田氏は力をこめる。マイクロソフト入社以来、杉田氏が推し進めてきたのが、データ分析ツール「 Power BI 」を活用した“Data Driven HR”だ。
 「人事業務にいては、社内に散在するさまざまなデータを抽出・比較して、その中から新たなインサイト(洞察)を得る姿勢は非常に大切です。その一方で『各種データを収集して Excel にまとめ、グラフを作成する』ことに大きなパワーを割かれ、その作業でこと足れりとする『 Excel の達人』が多くの企業で存在しているのも事実です。本当の仕事は、その先にある気づきやインサイトから経営に貢献する戦略を導くことなのです」
Power BI を用いれば、従来担当者がかかりきりになっていた煩雑な集計作業を自動化し、いきなり本題である洞察フェーズからスタートすることができる。例えば、各部署の新卒比率や退職率などのデータを瞬時に収集し、それらを時系列で追ったトレンド変化を把握したり、入社年度別のジョブレベルを国別で比較し、教育や異動の効果を測定したりなど、科学的な視点で議論することが可能だ。
 「その瞬間のデータを必要な指標で可視化して、圧倒的なスピード感を持って検討することができます。人事の仕事においてこのメリットは計り知れません」と杉田氏は話す。

「例えば、日英の新卒比率を比較すれば、英国が圧倒的に新卒採用が多いことが分かります。日本では各部ともフロントラインに近づく程“即戦力化できないから”と新卒を敬遠する傾向があります。しかし、業績が好調な英国がこれだけ新卒を採用しているという事実が分かれば、日本においても将来を見通す視点に立った採用戦略を練り直すことができます。また、部署ごとの退職率をトレンドで追った場合、ある段階で急激に退職率がアップしていれば、組織運営に何らかの問題が生じている可能性が高い。そこでマネジメントをチェックし問題点を探れば、早期の安定化を図ることができるでしょう。さらに他社への人材流出、他社からの人材流入も、LinkedInなどネット上のデータを分析要素に加えることで可能になります。優秀な人材の動きはどうなっているのか?などといったデータは、経営層なら絶対把握しておくべき事象ではないでしょうか」と杉田氏は Data Driven HR の具体的なインサイトを挙げ、こう続けた。
「データがあれば、企業戦略の意志決定を担うビジネスリーダーに対する提案の説得力が圧倒的に増します。今では打ち合わせにおいて何らかのデータがないと“何か気持ち悪い”という共通認識が社内に生まれています。この風土はさらに拡大こそすれ、もはや“データのない人事”の時代に逆戻りすることはあり得ないでしょう」

グローバルな人事データを様々な切り口で集計・分析することで、人事戦略に有用なインサイトを得られる。これらの分析が瞬時に、リアルタイムに行えるのが Power BI のメリットだ。

人事本部全体での戦略的データ活用を自らが旗振り役となり推進

杉田氏の働き方は、これから日本企業が目指すべきデータドリブン・マネジメントの好例と言えそうだ。

一般に人事部門は“採用イベントを開いた”“リクルーティング媒体に掲載した”など、アクティビティベースで成果を計りがちな傾向にある。しかし本当に重要なのは、その結果だ。より質の高い人事戦略を遂行するには“そのアクション結果、実際どうなったのか”というファクトベースで成果を捉えなければならない。
「それを支援するものが、求めるデータリソースに自在にアクセスし、それらを可視化して、容易に共有できる環境だったのです」と杉田氏は話す。
 当初人事本部内の Power BI 活用率はそれほど高くなかったという。そこで杉田氏はマネージャークラスを対象に、自らが蓄積してきた Power BI 活用ノウハウを共有するとともに、経営層との議論の場にもメンバーを同行させるなど、データドリブンな人事戦略の啓蒙に努めた。データ分析の専門家ではなく“人事のプロ”としての杉田氏の働き方は説得力があり、現在多くのメンバーが Power BI を活用し始めている。
 「長く人事畑を歩いてきて、こんな環境を待ち望んでいたのです。日本企業の場合には、人事部門に限らず、先ずその成果が体感できるところからデータ活用を進め、トップダウンの強い意志のもと、改革を推進していくことをお勧めします」

column

“メールの洪水”から脱却するコミュニケーション改革を推進

日本マイクロソフトの人事本部では、ほかにも働き方改革の一環として、無用なメールの削減によるコミュニケーション改革にも取り組んでいる。きっかけは部内の若手からの進言だった。杉田氏は当時の状況を「実は、毎日やりとりされるメールの多さに辟易としていました。メール対応に割かれる時間的ロスが、本来なすべき業務を圧迫していることを痛感していたのです」と話す。
そんな折、人事本部のビジネスマネージャーから“チャットで情報共有が行える Microsoft Teams をコミュニケーションのメインツールにすれば、メールの氾濫状況が解決するはず”と提案を受けた。
「早速実践してみると社内のコミュニケーションがシンプルになり、メールの洪水に本来業務が阻害されていた状況が大きく改善しました。働き方改革においては、テクノロジーに敏感な若い人材の声に積極的に耳を傾ける姿勢も大切ですね」と杉田氏はにこやかに話す。
人事本部における Microsoft Teams を活用した業務コミュニケーション改革の取り組みと成果は、以下のレポートをご覧いただきたい。

レポート『メールの洪水から社員を解放し、業務コミュニケーションの質的向上を』


PAGE TOP

SPECIAL DOWNLOAD

『働き方進化論〜変化を味方にする働き方〜』無料ダウンロードはこちら

RELATED CONTENTS

ワークプレイスの分析で顧客に貢献 全員データ経営で未来の航路を行く デジタルトランスフォーメーションで「働き方改革 NEXT」へ!