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働き方進化論

日本最大の海運会社として世界の経済発展とともに成長してきた日本郵船。海運業の国際競争が激しさを増す中で、海・陸・空すべてを網羅する企業グループとしてさらなる進化に向けた企業改革に取り組んでいる。「競争力の強化では、全社員が日常業務でデータ分析を行い、気づきを得て差別化につなげていくことが重要」と日本郵船 取締役・専務経営委員 (技術本部長・CIO) 丸山英聡氏は語る。また、グローバルでのデータ活用の推進とセキュリティリスクに対抗する基盤の構築は、表裏一体での実現が欠かせないと強調した。同社が挑むデジタル革新とは。


大転換期を好機に変える全社員によるデータ活用

1885年に創立し、130年を超える歴史を持つ日本郵船。海運会社として世界の経済発展とともに成長してきた同社の足跡は決して海運業の枠に収まらない。自ら業態を変革しながら次なる優位性を求めて果敢に挑戦と創造を繰り返してきた。世界最大規模の船隊と海・陸・空に広がる国際輸送網を構築し、世界の経済活動と人々の暮らしを支えている。
 そして今、同社は再び大きな転換期を迎えている。日本郵船、商船三井、川崎汽船の3社で定期コンテナ船事業を統合。新会社「 Ocean Network Express(ONE)」が2018年4月に営業を開始した。競争が厳しさを増す事業において規模を拡大して国際競争力を高めるためだ。転換期を好機と捉え、次の優位性をつくるためにパラダイムシフトしていくことは、日本郵船の伝統である。その推進力となるのが2018年3月に発表された中期経営計画 (Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green) の中で大きな柱の1つとなっている「デジタライゼーション」だ。丸山氏はデジタライゼーションを重視する背景についてこう話す。
 「当社は品質と付加価値の高い船舶の建造に関わり、運航してきました。しかし昨今、船舶そのもののコモディティ化が進行し、船というハードだけでは差別化を図ることが難しい時代です。過去の経験則だけに頼るのではなく、データに基づく客観的な分析を柔軟かつ積極的に取り入れ、省エネルギー運航などソフトの観点から高品質で競争力のあるサービスを実現していくことが大切です」
 そしてデータ活用においては、社員一人ひとりがデータを分析し自身の業務に活用していくことが重要なポイントになると丸山氏は強調する。

「グローバルビジネスは競争が激しく、変化のスピードも速い。またバリューチェーンの隅々にまで ICT を適用していく“デジタライゼーション”が進展する中で、リアルタイムな意思決定がますます求められてきます。専門部署にデータ分析を頼んでいる間に、ライバル会社は新たな一手を打つかもしれません。また専門家のデータ分析と現場の観点との間のギャップを埋めるのはなかなか難しい。業務の知識やノウハウと、その仕事に熱い思いを持っている人間が現場でリアルタイムにデータを分析し、自身の業務に活かすことが大切なのです」
 ここで活用が始まっているのが、同社がグローバルで導入している Microsoft 365 に含まれるデータ分析ツール「 Power BI 」だ。様々な業務システムから必要なデータを抽出し、簡単な操作で分析を行える。
 「データ分析の専門家ではない現場の社員が利用できるBI( Business Intelligence )ツールとしての Power BIの活用には大いに期待しています。全社員が日常業務で Excel を使って表計算を行うように、データ分析ができるようにしていきたい。そのための教育プログラムも始めています」と丸山氏は話し、こう続ける。
 「目的は大きく2つあります。1つ目は業務分析です。Power BI を使って自分たちの日々の業務を見つめ直す。2つ目は個人ベースで Power BI を使ってデータ分析を行っていく中で、ビジネスの“目利き力”を鍛えていく。誰もが使いやすい Power BI は、社員の教育ツールとしても非常に有用だと考えています」

世界43カ国32,000人、社員全員をデータアナリストにしたい

Power BI よるデータ分析で、これまで見えにくかったものが見えてくる。例えば、完成自動車を世界各国で陸上輸送する自動車物流事業において、お客さまの大切な商品を目的地に安全・安心に届けるうえで欠かせない現地法人のパフォーマンスもひと目でわかる。
 「従来、40数社ある当社自動車物流事業の現地法人の成績を見るには、各社の様々なデータを1つ1つ確認することが必要でした。今は Power BI を使って効率性、収益性、安全性、成長性など KPI(重要業績評価指標)を一元的に見ることができます。またキャッシュフローもグラフ化することで経営状態が一目瞭然です。さらにアラートにより担当者自身でリスクの早期発見も可能です」

Power BI による分析例。各国の自動車物流事業を担う現地法人のキャッシュフローから、収益性や安全性を見ることができる。

年度ごとのキャッシュフローの推移なども容易にグラフ化が可能だ。社員自らがデータ分析を行うことで、新たな気づきが得られる。

日本郵船の技術的アドバンテージであるSIMS(Ship Information Management System。運航状態や燃費、機器の状態など、毎時間の詳細な本船データを船陸間でタイムリーに共有するための装置)のデータも Power BI で見ることが将来的には可能になると言う。
 「船舶の様々な機器から収集した情報を船・陸間で共有することにより、省エネ運航や船舶からの CO2 排出量削減、最適航路などをタイムリーに検討できます。今後も船舶の IoT はさらに進化していくため、ここでのデータ分析活用は必須となるでしょう」
 これまで日本郵船では Office 365 を全社的に活用するとともに、特定の部門で Power BI の活用が始まっていた。今回、「 Microsoft 365 E5 」を導入し、全世界32,000人のグループ社員が順次利用することで、誰もが Power BI を扱える環境になる。彼ら一人ひとりが必要な時に、Power BI を使って海・陸・空の物流事業で生じる膨大なデータをリアルタイムに活用し、日々の判断の迅速化を図っていく世界を丸山氏は描く。
 「データ分析を現場で活かすためには、見たい人が見たい角度ですぐに見られることが大事です。そのため社員全員をデータアナリストにしたい、という想いがあります。当社は一人ひとりが技術力や現場力、創造性を発揮し新しいビジネスの創出や課題解決を具現化できる企業風土づくりに力を注いでいます。Power BI の活用は、そこへも貢献できるでしょう」

グローバルビジネスの立ち上げを支えた
国境を超えるミーティング

大転換期を好機に変えるためにはデータ活用に加え、コミュニケ―ションの質とスピードを高めることも必要だ。日本郵船グループの IT とともにコンテナ事業も統括した丸山氏は、3社による定期コンテナ船事業の統合による「ONE」の立ち上げを振り返った。
 「約1年で各国100カ所に拠点を展開し基幹システムを導入することが必要でした。シンガポールにあった日本郵船のコンテナ船事業本部と日本、英国、米国などの拠点との間で、事業統合に向けた日本郵船のポジションをMicrosoft 365 の Skype for Business を使って、移動することなく必要なタイミングでWeb会議を開催しました。経営から現場までファイルを共有しながら、それぞれの立場で様々な意思決定が機動的に行われました。Skype がなかったら意思の疎通が上手く図れず、スケジュール通りに進まなかったかもしれません」
 Skype を使ったミーティングは日本郵船の中で日常業務として定着しているという。「社長も含めて、もちろん私も、全社員が Skype を使うことは当たり前になっています。時間を有効に活用できることは大きなメリットです。出張や電話のコストも2割削減できました」

データ活用の推進とセキュリティリスクに対抗する
基盤の構築は表裏一体

グローバルでデータを活用し競争力を高めるためには、本社から世界に広がる現地法人まですべてが繋がることが必要だ。しかしすべてが繋がることは、高度化するサイバー攻撃のリスク拡大も意味する。2017年には、マルウェア感染( NotPetya )により欧州系グローバル総合物流企業が数時間で300億円以上の被害を受けた。データ活用の推進とセキュリティリスクに対抗する基盤の構築は、表裏一体で考えなければならないと丸山氏は話す。
 そこで丸山氏が期待を寄せるのが、社内 PC の Windows 10 への移行と同時に今後導入を進めていく「 Microsoft 365 E5 」の持つ統合的なセキュリティ機能だ。1つのダッシュボードから、グローバルレベルのセキュリティ管理を実現する。
 「サイバー攻撃への対策を考える上で重要なことは、“侵入された後の検知と追跡”です。また各国の拠点で起きた前例を知見として蓄え、次の対策に横展開で活かせるようにしなければなりません。そのためにはセキュリティの基盤を1つにするのが絶対条件となります。これは24時間365日休むことなくネットワークやデバイスを監視し、サイバー攻撃の検出と分析、対応策のアドバイスを行う SOC( Security Operation Center )の考え方と同じです。そうした観点から、Microsoft 365 E5 導入への期待は非常に大きいです。Microsoft 365 E5 のサービスを利用している場合、どの拠点の誰が感染しどこまで広がっているかなど、リアルタイムな把握が可能となるため、速やかに対策を打つことができます」
 データ分析という羅針盤を手に、社員一人ひとりが自ら能動的に動き、新たな優位性を積極果敢に切り開いていく。グループ・バリュー「誠意、創意、熱意」のもと、日本郵船はセキュリティを担保しながら全社員参加によるデータ経営で成長への航路を進む。

デジタルを活用した、全社員による企業競争力強化を熱く語ってくれた丸山氏。
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