最新OSとデバイスへの戦略的投資で守りと攻めの“武器”を手に入れる

デジタル革新による市場変化が加速する中、競争優位性を堅持するために最新テクノロジーのキャッチアップは欠かせない。鍵となるのが「テクノロジーのサービス化」だ。総合インターネット企業として進化を続けるグリーでは、OS と PC のライフサイクルを一元管理しサービスとして利用することで大きなメリットを得ている。「競争の激しいインターネット業界において、ITは戦うための武器そのもの」と同社 開発本部 情報システム部 部長の岡田寛史氏は強調する。グリーの情報システム部の精鋭に、その戦略を訊いた。

戦略的投資でビジネスにおける
攻守両面の備えを

 SNSがビジネスになるのかどうか誰も想像していなかった2004年2月に、日本のモバイルインターネットサービスを牽引するグリーは個人が運営する SNS として誕生した。
 「インターネットを通じて、世界をより良くする。」、その強い想いで創業者の田中良和氏(現 グリー株式会社 代表取締役会長兼社長)が立ち上げたのが同社の原点だ。2004年に SNS の利用者が10万人を越え、その後わずか2人で起業した同社のビジネスは、インターネット時代のニーズを捉えて急速な成長を果たしていく。2007年に世界初のモバイルソーシャルゲーム「釣り★スタ」を公開して以降、人気タイトルを数多く開発、運営するゲーム事業に加え、メディア事業、広告事業、投資事業、ライブエンターテインメント事業など、世の中に新しい価値や驚きを提供する挑戦を続けてきた。
 インターネットの新たな可能性を開拓し幅広く事業展開する同社のミッション実現に向けた事業活動を技術で支えているのが開発本部だ。「エンジニアの集団である開発本部は、技術で会社や事業に貢献することが大きなテーマです。その中で情報システム部は社内のIT基盤や業務システムを担っています」と開発本部 情報システム部 部長 岡田寛史氏は話す。

グリー株式会社 開発本部 情報システム部 部長 岡田 寛史氏
グリー株式会社
開発本部
情報システム部
部長
岡田 寛史

 情報システム部は社内ITにおいて1.ユーザーの利便性、2.業務の効率化、3.安定稼働/セキュリティの3つのポイントを重視し取り組んでいる。この3つのポイントを実現するために、コスト削減だけでなく戦略的投資の側面を大切にしていると岡田氏は強調する。
 「当社は、技術力が競争力となる会社です。社員が業務で使うITも、インターネットビジネスを勝ち抜くための武器となります。武器には矛(攻め)と盾(守り)の両方が必要です。戦いに必要なもの、競争力が高まるものは戦略的に投資し現場に提供したい。レガシーなOSやデバイス、業務アプリケーションといった古いものを使い続けることはリスクと捉えています。社内 PC の OS を Windows 7 から Windows 10 へといち早く切り替えたのも、そうした危機感からでした」

生産性向上とセキュリティ強化を主眼に OS を移行

 同社が Windows 7 から Windows 10 への移行を加速させた背景には、情報システム部が抱いていた危機感が具体化した2つの出来事があったからだ。1つめの出来事が、2016年1月にマイクロソフトが Intel CPU のスカイレイク( Skylake )を搭載した PC について、Windows 7 のサポート期間を2017年7月までと発表したことだ(その後サポートポリシーは更新された )。当時を振り返り、開発本部 情報システム部 IT基盤&オペレーションチーム マネージャー 鈴木敏之氏はこう話す。
 「 OS のメーカーがサポートを終了するというものについて、いつまでも使い続けることはできません。遅かれ早かれ、対応が必要です。また最新の CPU は最新の OS で性能を発揮できることから、効率化や生産性を考慮し、2016年2月から社内に新規で提供する PC はすべて Windows 10 搭載にするという方針を決めました。この早期決断が、あるインシデントの際に役立ちました」

グリー株式会社 開発本部 情報システム部 IT基盤&オペレーションチーム マネージャー 鈴木 敏之氏
グリー株式会社
開発本部
情報システム部 IT基盤&オペレーションチーム
マネージャー
鈴木 敏之

 2016年12月に同社のシステムに対し不正アクセスが発生したことが2つめの出来事だ。被害を受けた PC を特定した結果、ほとんどが Windows 7 搭載の PC だったという。「その時点で社内の PC の約半数が Windows 10 搭載のものとなっていたため、被害拡大を抑制できました。この不正アクセスによる個人情報の流出は確認されなかったものの、不正アクセス防止対策として Windows 10 への完全移行が急務となりました」(鈴木氏)

Windows as a Service による継続的な機能拡張のメリットとは

 同社の社内システムはブラウザで動く Web アプリケーションがほとんどだったことから、Windows 10 への移行はスムーズに行えたと、開発本部 情報システム部 IT基盤&オペレーションチーム シニアエンジニア 上堂薗徹氏は話し、こう続ける。「 Windows PC 約2,000台の Windows 10 への移行は単なるバージョンアップではなく、新たに採用されたOSの提供形態『 Windows as a Service(以下、WaaS:ワース )』により運用業務の変革をもたらすものです」
 これまで Windows OS は名称が変わるメジャーアップデートによるライフサイクルだった。「OS のサービス化」という新たな概念の WaaS は、年に2回のペースで継続的にアップグレードを行い、逐次新機能を提供することで時代の変化や利用者のニーズに迅速に応えていくものだ。

グリー株式会社 開発本部 情報システム部 IT基盤&オペレーションチーム シニアエンジニア 鈴木 敏之氏
グリー株式会社
開発本部
情報システム部 IT基盤&オペレーションチーム
シニアエンジニア
上堂薗 徹

 上堂薗氏は同社にとって非常に有効なアップグレードがあったと明かす。
「 Windows 10 で Linux を実行できる Windows Subsystem for Linux
( WSL )は当社のエンジニアにも好評でした。生産性や効率性、創造性の向上を図るために幅広い利用シーンに対して機能の拡張が行われています。多くのユーザーに有効であることはもとより、一部の利用者の課題を解決するものが含まれている点も WaaS を活用する大きなメリットです。ユーザーの声を取り入れ、Windows 10 はどんどん成長しているという実感があります」
 さらに、Windows OS だけで他のアンチウイルスソフトなどをインストールしなくてもマルウェア対策は行えるのではないかと鈴木氏は指摘する。
「 Windows 10 に標準搭載されているセキュリティ機能『 Windows Defender 』の利用により、専用のアンチウイルスソフトと同等レベルのセキュリティ対策を実現できると考えています。WaaS により Windows Defender ウイルス対策のアップグレードも随時行われ、OS 自体の機能と合わせて日々強化が続いています。アンチウイルスソフトを不要にすることでコスト削減や運用負荷軽減が図れることから、セキュリティ部門と今後の対応を検討中です」
 同社はマイクロソフトの運用管理ツール System Center Configuration Manager (SCCM)を利用し、Windows 10 の最新バージョンの逐次展開を行っている。「 最新の Windows 10 でアップデートされた様々な機能について我々のチームで動作を確認した上で、社内への展開を図っています。ユーザーは決められた期間の任意のタイミングで、手順に従ってセルフサービスでアップデートを行います。アップデートを上手くできなかった時はヘルプデスクに問い合わせてサポートを受けたり、アップデートに関する課題解決を行うために設置したコンシェルジュに持ち込み直接サポートを受けることも可能です」(上堂薗氏)
 ヘルプデスクやコンシェルジュは、Windows 運用管理のエキスパートである日本ビジネスシステムズに業務委託している。「情報システム部の限られた人的リソースを最大限に活用するためには運用業務の効率化が必要です。ユーザーがセルフサービスで行うことで運用負荷を軽減できても、セルフサービスをサポートするためのヘルプデスクの業務が増えてしまったり、そこに情報システム部の社員が時間を割かれるようでは、変革スピードにブレーキがかかってしまいます。WaaS の運用ではパートナーと業務を上手く切り分けることも大切です」(岡田氏)
 同社は WaaS の運用ノウハウをリスト化して管理していると上堂薗氏は話す。「 PC の機種ごとにどういうトラブルが発生しどう解決したか。またアンチウイルスソフトのバージョンが古いと不具合が発生するといった互換性チェックのポイントなどを管理し、同様のケースでは速やかに対応できるように運用上の工夫をしています」

社員が使うクライアント PC 提供も
サービス化

 最新の Windows OS の実力を存分に引き出すためには、優れた性能を持つ PC が必要となる。だが、部門の要望にすべて応えていてはコストがふくらむばかりだ。その解決策となったのが、数年前から実施している社内の PC 提供のサービス化だった。
 「従来は機種を選定し見積りをとって購入していたのですが、社員の増加やスペック不足のクレームへの対応など運用が煩雑化していました。また一度購入してしまうと PC を在庫として持つことになります。そうした課題を解決するべく、社内の各部門に対し月額課金で PC をサービスとして提供する仕組みを当時いたメンバーが構築しました」と鈴木氏は話す。
 「月額課金制にしたことで各部門において PC に対するコスト意識も芽生えてきました。自分の部門のPL(損益計算書)に響くため PC 台数の最適化が図れ、退職や部署異動などにより使わなくなった PC の返却も迅速に行われるようになりました」
 あらゆる IT は単純に導入することより、“最新のものを継続的に提供できること”が重要になると岡田氏は指摘する。「 WaaS や月額課金によるクライアント PC 環境のサービス化は、競争の激しいインターネットビジネスを勝ち抜くための“最良の武器”を常に現場に提供することを可能にします」
 デジタル時代にさらなる成長を目指す企業において、OSや PC といったクライアント環境のサービス化は攻守両面で非常に効果的かつ効率的だ。グリーの戦略的 ICT 投資の考え方は、業種業界を問わず先進的なモデルケースになると言えるだろう。

デジタルテクノロジーを駆使して成長するグリー。戦略的ICT投資がその成長を支える。

http://corp.gree.net/jp/ja/corporate/
https://www.microsoft.com/ja-jp/windowsforbusiness
https://docs.microsoft.com/ja-jp/windows/deployment/update/waas-overview
https://www.microsoft.com/ja-jp/business/windows/endofsupport.aspx